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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ドッペルゲンガー少女 シイリ
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アルの思いつき

翌日の朝、アルとロウアがシアムの家に行くと、アルが驚きの声を上げた。


「ちょぉ~~~と、まったぁ~~~~っ!

シアムが双子になったぁ~~~っ!

なんだそれ~~~っ!

やだやだやだ~~~っ!!!」


「ふふっ!私の妹のシイリよっ!ね、イケガミ兄さんっ!」


シアムはすました顔で妹を紹介した。

ロウアもにこりとしていた。

何も知らないのはアルだけだった。


「アルお姉ちゃん、初めましてっ!私はシイリって言いますっ!」


シイリもアルに挨拶をした。

アルはう~んと悩んで彼女なりに頭を整理していた。


「え~っと…。

この前は妹に脅かされて

↓↓↓

妹はイケガミに天国に連れてってもらって

↓↓↓

とっへるシアムが生まれて

↓↓↓

今日は妹になった

↓↓↓

イマココだと?!

はぁぁ?もうわけ分からん…。」


(ちゃんと説明になってるじゃねーか。)


魂のロウアが思わず、突っ込みを入れた。


(いや、2つ目が間違っているって…。

僕は天国に連れて行ってないよ…。

突っ込みどころ満載なんだけど…。)


「す、すいません…、それ全部、私です…。」


シイリは自分のせいで迷惑をかけてしまったことを謝った。


「な~っ!そうだったのかぁ~~っ!」


「アルちゃん、色々あったけど可愛い妹なのっ!よろしくねっ!」


「お、おうっ!よろしくねっ!

いきなり妹が出来るって、何か不思議だなぁ~。」


「はいっ!こちらこそよろしくお願いいたします。アルお姉ちゃんっ!」


シイリの声は昨晩、ロウアがマフメノの協力を得ながら直したから、元の綺麗な声に戻っていた。

だが、直っただけではなかった。

シアムの家族として受け入れてもらった事で彼女に幸福感と安心感がもたらされたのだ。

その幸せに満ちた気持ちが元気な声につながっていた。


「う~む、また妹分が出来たってことか。ちょっと嬉しいかも。」


「アルちゃん、ありがとうっ!」


(受け入れるのはやっ!)


ロウアはアルの受け入れの早さに驚いた。


「んじゃ、取りあえずさ~っ!」


アルが良いことを思いついたといった顔で上を向きつつ、組んだ腕の右手は空を指していた。


「どうしたの?アルちゃん。」


「…一緒に学校に行っちゃう?」


ロウアはアルのまさかの提案でずっこけた。


「ア、アル、いきなり、何を言ってる…?」


「アルちゃんっ?!」


シアムも予想していなかった提案だった。


「えぇっと…。学校は…。お姉ちゃんに迷惑をかけてしまうと思います…。」


当のシイリもそれは出来ないと思った。

前日、学校で色々な生徒達から逃げ回ったことも思い出していた。


「大丈夫だってっ!ロウアとマフメノさんの発明ってことにすれば、良いじゃんっ!」


「発明ってのは良いけど、それを学校に連れて行く理由はどうするのさ…。」


「部活の研究材料って事で良いのでは?」


「むむ?」


ロウアは、それっぽい言い訳を考えたアルに少しだけ感心してしまった。


(たまに理屈が通ったことを言うから困るんだ、こいつは。)


魂のロウアもアルを幼い頃から知っているのでまたかと思っていた。


「シイリも学校に行けば絶対に楽しいってっ!」


「そうね、学校に連れていってみようっ!」


「…なななっ!シアムまでっ?!」


シアムはすぐに提案を受け入れてしまった。


「私も行ってみたいっ!!」


「シイリ、君もかい…?」


シイリもいつの間にか乗り気になっていた。


「ま、待ってよ、授業中はどうするんだよっ…。」


「良いじゃん、授業を一緒に受ければ。」


「はぁ?授業を受けるっ?!で、出来るわけ…。

あぁ、もう知らないよ、どうなっても…。」


ロウアは何が起こるのか分からない、この奇抜な行動にあきれ果てた。


「さぁ、さぁ、そうと決まれば制服に着替えてっ!!髪型は少し変えた方が良いかなぁ~。」


「そうね。私と一緒だとまた間違われてしまうかも。」


シイリとアルとシアムが家に戻って、しばらくすると、シイリの髪型がツインテールになって毛先が軽くパーマが掛かっていた。髪の色も少し茶色がかっていた。


「はぁ!この短時間で髪の色を落としてパーマをかけたの?!」


「イケガミ兄さんは、女性のお化粧を知らないのね。」


「えぇ?」


シアム達はさも当たり前のように話すので、ロウアは戸惑った。


「ほらっ。」


シアムがそう言うと、彼女の髪の色も紫色になったり、茶色になったり、緑色になったりした。


「なっ!どうやっているのっ?!」


何かのスイッチか何かであっという間に髪の色が変わる姿を見てロウアは驚愕した。


「イケガミ、なに驚いているのさ…。そうか、君の時代はこんな事出来ないのか。

わっはっはっはっ、遅れているなぁっ!」


アルは勝ち誇ったように笑った。


「うわ、何か悔しい…。けどすごいね…。正直、驚いたよ…。」


「ふふっ、私たちは黒髪が好きだから色を変えていないだけよ。」


「そうなのか…。」


ロウアはこの時代の老人は白髪がない理由が分かったような気がした。


という事で、ロウアは不安でいっぱいだったが、他の女子三人はウキウキしながら学校に向かった。


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