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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ドッペルゲンガー少女 シイリ
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もう一人の私

天国に戻れないまま、彷徨ってシアムの前に現れた少女。

その少女は、ロウアの力で天国に導かれたように見えた。


だが、数日後、シアムの周りで不思議な事が起こり始めた。

この節は、シアムの目線で話を進めよう。


-----


私の妹と名乗った女の子が現れた後、事件は一旦収束するかに見えましたが、数日してから不思議なことが私の周りで起こり始めました。

それは私が朝起きて、お父さんとお母さんに挨拶したときから始まりました。


「おはよう、お母さん、お父さん。」


「おはようって、あれ、さっきお前、ここに座っていただろ?

挨拶を二度するなんて変なやつだな。」


始めにお父さんが不思議なことを言いました。


「え?私は今起きたばかりよ?」


「不思議な事を言うのね…。朝ご飯だってさっき食べていたわよ?」


お母さんも不思議な事を言いました。


「えっ?食べていないよ…?」


でも、確かに朝ご飯を食べた後が残っていました。


「変なやつだなぁ。」


私は仕方なく、朝ご飯無しで学校に行きました。

この時、庭に私の朝ご飯が捨てられていることに気づきませんでした。


そして、学校でも変なことが起こりました。


「おはよう。

って、シアムちゃんがいる…!」


「おはよう。

どうしたの?」


教室に着いてアルちゃん達と話をしていると、同じ教室のお友達が私に声をかけてくれましたが、不思議な顔をしていました。


「さっき校庭にいたよね?」


「えっ?私はここにずっといたよ?」


「あれ、そうなの?

校庭にいたのに、教室に戻ったら座っているんだもん、ビックリしちゃった。」


「う、う~ん。」


「シアムちゃんと似た人かなぁ。

手を振っても私に気づかなかったみたいだし、別の人だったのかなぁ…。」


「わ、私だったら無視なんてしない、にゃ。」


「そうよね。でも似てたなぁ。」


「……。」


その日はキルクモ先生からも同じようなお話しがありました。


「あぁ、シアム君。

さっき、使っていない教室にいたよね?」


「えっ?」


「あんな教室で何をしていたんだい?」


「い、いえ、私はずっとここに…。」


「先生、シアムはさっきからここにいたよ~。

今日は不思議な事を言う人が多いねぇ。」


アルちゃんも証人になってくれました。


「そうか…、おかしいなぁ。」


放課後、部室に着くとイツキナ先輩からも同じようなお話しが…。


「シアムちゃん、さっき体育館にいたよね?

運動部に興味あるの?」


「えぇ、また…。」


「また?声をかけても逃げて行っちゃうし、どうしたの?」


「に、逃げた?」


「わたしもシアムお姉ちゃんを見たよ~。」


「ホスヰちゃんも?」


「うん、ちょっと怖い顔をしていたよぉ~…。」


「だ、誰なのかしら…。今日は何度も同じような事を言われるんです。」


「そうなの?不思議ね…。」


イツキナ先輩がそう言うと、アマミル先輩が叫ぶように話しました。


「これは事件だわっ!!」


「…ア、アマミル先輩…?」


「事件よ、事件っ!!

またしても不思議事件よっ!!!

私たちの出番じゃないっ?!」


「そうねっ!そうよねっ!!

ロウア君もそう思うでしょっ?!」


イツキナ先輩はアマミルに同調するとイケガミ兄さんにも同意を求めました。


「(く、来ると思った…。)

…話を聞く限り、ドッペルゲンガー現象みたいなんだけど…。」


「とっへる… 何だって?」


アマミル先輩が、イケガミ兄さんの未来語を復唱しようとしましたが、特殊な言葉で発音できませんでした。


「えっと、自分の分身が色々なところに現れる現象とかいわれています。」


「はぁ、なんだよ。それは…。」


マフメノ君も加わってくれましたが、この場所にいる全員がイケガミ兄さんの話してくれた現象について知りませんでした。


「そうなった人は死んでしまうと聞いたことが…。」


「!!!」


死んでしまうと聞いて、私は怖くなってしまいました。

私たち猫族は怖くなると耳が下に向いてしまうので、周りの人にすぐ分かってしまいます。

みんな私を心配してくれました。


「い、いや、そうなるとは限らないっていうか。」


「やだやだやだ~~~っ!!!

またシアムが怯えちゃったじゃんっ!!」


アルちゃんが私のために、イケガミ兄さんを怒ってくれました。

(イケガミ兄さんは悪くなくて、私が怖がりなだけっ!)


「ご、ごめん…。

と、ともかく、もう一人のシアムをみんなで探してみましょう…。」


「うん、そうだね。手分けして探そうよ。」


イケガミ兄さんの提案にアマミル先輩も同意してくれて、みんなでもう一人の私(?)を探すことになりました。

だけど、学校中を探しても見つからなくて、遅い時間になったので一旦部室に集まりました。


「見つからなかったね…。」


「どうしよっか。アマミル。」


「そうね、シアムちゃんが心配よね…。

シアムちゃんのお家にロウア君が泊まって守ってあげるというのはどうかしら?」


「アマミル先輩、それ大賛成っ!!!」


アルちゃんがふざけて大賛成と両手をあげました。


「ア、アルちゃんっ!!!」


もちろん私は否定しました。

本当はそうだったら良いなぁ、なんて思いました…。

にゃっ、にゃにを考えているんにゃか…。

この時、ちょっとだけイケガミ兄さんを見たら、考え事をしているようでした。


「メメルトさんにお願いして、しばらく見守ってもらいましょう。」


「メ、メメルト?

えっ?本当に?」


アマミル先輩はすごく驚いていました。

後から聞いたらメメルトさんはアマミル先輩と寮が同室だった方で、今はお亡くなりになってしまったと…。

どうやらイケガミ兄さんが助けてさしあげたみたいです。

格好いい!!


「ロウアく…じゃなくて…、男性より女性の方が安心かなと。

シアム、霊体が近くにいると怖い…?」


どうやらロウア君に守ってもらおうとしたみたいです。

確かに男の子はちょっと…。


「見えないから大丈夫だと思います。

でも、お願い聞いてもらえるのかしら…。」


「それは大丈夫。

さっきお願いしたら、了解してもらえたよ。」


「は、早いですね。」


「あはは。」


「メメルトもこの部の部員みたいね…。」


「アマミル先輩、メメルトさんが笑っています…。」


私には見えませんが、イケガミ兄さんのお話しした通り、きっと微笑んでいたと思います。


「分かったわ、メメルトよろしくねっ!」


「任せて!と話しています。

何かあれば僕のところに飛んできてくれるので、その後は僕が何とかします。」


「イケガミィ、格好いいこと言ったなぁっ!

シアムが真っ赤になってるじゃん…。」


「えっ!」


確かにすごく嬉しかった、にゃ…。


えっと…、こうして、もう一人の私は見つかりませんでしたが、メメルトさんが私を守って下さることになりました。


お話しは出来ないけど、お礼はしなくちゃっ!


「メメルトさん、よろしくお願いしますっ!」


すると少し胸が熱くなりました。

あれ、気のせいかな?


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