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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
転生 -いにしえの大陸 ムー-
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とある海岸で

 ここはとある海岸、どこにでもあるような海岸だった。

 この物語は海で溺れた青年が二人の少女に助けられたところから始まる。


「ゲホッ、ゲホッ……。ハァ……、ハァ……。い、痛い……」


 青年は自分が全身がびしょ濡れになっていることに気づいた。身体も酷く重い。


「ゲホッ、ゲホッ……」


 再度、酷く咳き込み、うつろな目で周りを見渡すと、二人の可愛らしい女の子が自分を驚いた顔で見ているのが分かった。


「□□□□□!!!」

「□□□□□!」


 その青年ー池上良信は彼女たちが何を話しているのか全く分からなかった。


「えっ?な、何を言っているのか分からない……。あぁっ、い、痛い……」


 池上は、自分の右の二の腕の先が無くなっていることに気づいた。


「み、右手が……ない……」


 痛みはそれが原因だった。

 青年、池上は右腕から流れる血と、そのむき出しになった自分の腕の骨を見て意識を失った。


-----


 次に気づいたのは、病院らしき場所だった。

 うつろな目で青年が周りを見回すと、看護婦が誰かを呼びに行ったのが分かった。


 一人の女の子が、池上の左手を握っていて、もう一人の女の子はじっとこちらを見つめていた。


「き、君たちは……?」


「□□□□□……」


「□□□□□???」


 目を真っ赤にした二人の女の子が、池上が目覚めたのを見て喜ぶのが分かった。

 池上は、この二人をどこかで見たことがあったので無意識に彼女たちの名前を呼んだ。


「と、とっきょに、りょ、良子さん?

あれ、い、生きている……?身体もある……?」


 21世紀、池上が出会った二人は霊体だった。

 その二人が肉体を持って目の前にいる。

 だが、池上は意識が朦朧としていて、はっきりと顔を確かめることが出来ない。


「□□□□□……」


「□□□□□……」


 二人は池上の言葉を理解できないのか、戸惑った様子だった。


「つ、通じない……。日本語が通じない……。どうして……?」


 それは、この場所が"日本"では無いことを意味していた。


「こ、ここは日本じゃない?」


 周りを見渡すと、病院ではあるようだが、見たことも無い機械が周りにある。

 心拍を図る機械だろうか、自分の心臓音が、そのまま聞こえている。


(これは自分の心拍音……?自分には何も装置がつながっていないのに何故音がなっているのだ……)


「……!」


 池上のベットは窓際に位置していて、その窓から見えた景色に唖然とした。

 山は全く見えない平坦な地形ではあるが、そこには、空を飛ぶ車のようなもの、空中に浮く建物、

 何かの宣伝のような立体映像が見えていた。


「なっ、なんだ、ここは……。ど、どこなんだ……」


 池上は、ブラックホールに飲まれたまでは覚えていた。

 ブラックホールのような極大重力に飲み込まれたら死ぬのは分かっていた。


 死んだらあの世と呼ばれる世界に帰ることは理解していたが、超重力に入り込んだ魂はどうなるのか分からなかった。


(自分の意識は、消え去ると思っていたけど僕はここにいる……。

ここはどこなんだ……。

窓から見える世界は何なんだ……。

言葉が通じないのは何故だ……。

どこかとんでもない場所にでも飛んできたとでも……)


 戸惑いを隠せないまま、池上はベットの上で寝ていることしか出来なかった。


「い、痛い……」


 池上は右腕の痛みから、腕を失った事を思い出した。


(そうか……、右腕が……)


 そこへ、看護婦らしき人が、医者らしき人を連れてきた。

"医者らしき"というのは、それが池上の知っている"医者"では無かったからだ。

 白い服を来ているが、目に瞳が輝きが無い。

 水晶体がそこにあるだけのような、死んだ目をしていた。


 彼は、池上に両手を近づけてくる。


「な、何を!!」


 看護婦(?)は、驚く池上に落ち着くようにといった内容を手振りで伝えた。

 医者は、池上のこみかめを両指で押さえると、瞳を閉じた。


(だ、大丈夫なんだろうか、この人……)


 数十秒時間、静止した後、池上の分からない言葉を発していた。


「□□□□□」


(何を話したのだろう……)


 二人の女性は、話を聞いて安心したような顔をしている。

 恐らくもう大丈夫というような話なのだろうか。


 その安心した空気の中で、もう一人女性が慌てて入ってくる。

 池上は、一瞬、自分の目を疑った。


「か、母さんっ!」


21世紀に、自分を虐めていた母親が、涙を流してこちらに向かってきたのだった。


 彼女は、池上の言葉が分からないのか、一瞬止まったが、そのまま抱きしめて、ワンワンと泣いている。

 何か色々と話しかけているのだが、同じように理解できない。


「□□□□□……」


 看護婦は、休ませた方が良いと言った感じで、みんなを部屋の外に連れ出して、この部屋は池上一人となった。


「あぁ……。よく分からない。ここはどこなんだ……。どこなんだ……。どこなんだ……」


 同じ事を繰り返すしか無かった。

 池上は、疲れが急に出てきて意識を失うように眠った。


2022/10/08 文体の訂正

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