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【コミカライズ】女騎士の婚活物語  作者: シアノ
女騎士の婚活物語

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エピローグ

 レイラはそのまましばらく離宮に滞在することとなった。


 ヘンリエッテたちも一緒であるが、レイラの部屋は別のさらに広く豪華な部屋に移され、特別待遇であると内外に知らしめたのである。



 ヘンリエッテは頻繁にツェノンと会談を行っていて、またぞろ何事かを画策をしているようだった。どうもツェノンとヘンリエッテは気が合うようだ。男女としてではなく、策略家としてだ。おかげでシプリアが嫉妬をすることもなく、「ツェノン様が毎日機嫌がよくてわたくしもうれしいのです」と惚気られてしまうほどだ。


 レイラはそのシプリアから、ヒルデガルドの文化や決まりごと、言語などを色々と教えを受けている。

 王妃になるためには頑張らなければならないが、元より座学は得意ではない。右から左に抜けてしまいそうなところを必死で押さえて詰め込んでいる毎日だった。





 令嬢たちは一部を除き、段々と帰国をし人数が減っていった。離宮はまたも閑散としている。いずれは離宮を閉鎖し、レイラたちは王宮へと移動することになるらしい。


 この離宮はまた今後も婚活イベントに使うのだという。今回はレイラを除き8組ほどが成婚になりそうだという。そのほとんどが狩り大会に出ていた令嬢たちだそうだ。ブラウリオの4人も成婚組なので、これからも長い付き合いになるかもしれない。

 たった8人とはいえ、それぞれ各国からの粒ぞろいの美女であり、今回縁がなかった貴族男性も、次回の開催を心待ちにしているのだとか。ヒルデガルドの男女比の問題はかなり深刻で、今後もこういった催しを行うことで、不満のガス抜きにしたいのがツェノンの考えのようだった。




 イグナーツの令嬢は早々に帰国をした。彼女たちは元々婚約者が国に待っているらしい。最後までおっとりふわふわとしていて、ヒルデガルドが唯一イグナーツとだけ交流を持っていたのが分かる気がした。


 タチアナとヘラルダは驚くことに、ダーランに帰らず、ヒルデガルドに亡命を希望している。ダーランでは50年前のクーデター以来、王族の立場は悪く、それは辛い思いもしたようだ。

 ツェノンに一回りほど年齢の離れた弟がいるそうで、彼の婚約者にタチアナはどうか、という話も出ているのだとか。そうなればレイラとは将来的には少々遠いが姉妹のようなものになるので、レイラにはそれもまた望ましいと思うのだった。


 そうそうヤスミンはといえば、ヘンリエッテが忙しそうなのをいいことに、毎日温泉に入り浸っている。よほど気に入ったようだ。ここ最近は本当に肌がツヤツヤのピカピカだ。この生活を一番満喫しているのは案外ヤスミンなのかもしれない。




 アナスタシアは逆ハーレム状態になったヒルデガルドの貴族男性を全員テレイグへ連れて帰ることになったらしい。というか、男性陣がアナスタシアから離れるのを嫌がったのだ。そして、テレイグにもこの手の男性が山ほどいるのだそうで。そういうわけで、ひとりに選べないのが目下の悩みだそうだ。……本当に規格外である。

 しかし話してみると、非常に頭が良くて気性も悪くはない。中々に楽しい人だった。本当に色々と規格外ではあるが。……とにかく悪気というものが一切ないのだ。ある意味では超巨大国家の王女としてふさわしい人なのだろう。


 そして、クラリッサのことも引き受けてくれることになった。

 最初にクラリッサ側についたことや、そのクラリッサに結果的に見ると暴力を振るってしまったも同然で、それの謝罪の意味でもあるのだろう。


 ああ見えて面倒見もいいらしい。とはいえアナスタシアも甘やかすわけではないようで、クラリッサにはただ少しの猶予を与えられ、これからは自分の未来は自分で切り開く必要があるのだろう。

 そういえばテレイグでは美人の条件が『太っていること』だそうで、それに当てはまるアナスタシアが最高の美女としてモテるのは当然らしい。クラリッサもテレイグでモテたいなら最低でも体重を倍にすることね、と言われていたが……どうなることやら。






「少し休憩に致しましょうか」

「はい」


 シプリアはレイラにそう言った。今もシプリアからヒルデガルド語を教わっている真っ最中だったのだ。


 知識の詰め込まれた頭から覚えたことが溢れないように緩やかに伸びをした。

 シプリアは優しいが、甘くはないので大変ではある。しかしそれがレイラの望んだ道である。



「ちょっと歩いてきますね」

「はい、いってらっしゃいませ」


 レイラは休憩時には少し動くようにしている。体を動かした方が調子いいのは相変わらずだ。




 ヨアニスも最近は忙しそうだ。婚活の催しで少し政務が滞っていたのを一生懸命片付けているそうだ。王宮に戻ったらそちらでしかできない政務もあり、きっと帰る頃には山積みになっていると震えている。





 レイラは庭園に向かう。


 すっかり慣れたいつもの道を抜け、遠くから微かに聞こえる音に頰を緩ませる。


 木々の間を抜けると、今日もまたヨアニスが薪を割っている姿が見える。

 ヨアニスとレイラの関係は変わったけれど、こうして変わらないこともある。


 レイラたちは休憩時間を合わせて、毎日ここで会っていた。


 最近はレイラも薪割りを手伝ったりする。確かにいい運動になるし、黙々と薪を割るのはストレス解消にもなりそうだ。



「レイラ!」


 ヨアニスがレイラの姿に気付いて破顔する。

 その顔に少し土がついている。汚れた手で擦ってしまったのだろう。それに服もなんだか小汚い。傍から見ても全く王には見えない。


 でも、レイラの大好きな人だ。




 レイラは微笑んでヨアニスのところに駆け寄った。



 その赤い髪を風になびかせて。


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