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自称プロゲーマーと自称天才

お悩み相談のサイトを作って渡すと言われた次の日、まだサイトのURLは送られてこなかった。

今日は月曜、一応学生である僕は学校に行かなくてはならない。学校は割と近い位置にあり、徒歩で通っている。

家を出てしばらくすると、後ろから背中を叩かれた。


「よっ!椿っ。」


背中を叩いたのは僕と同じクラスの男子、山中(やまなか) (かおる)だった。


「なんだよ、朝から鬱陶しいな。」


「鬱陶しいとはなんだよっ、チームを除名されて落ち込んでんじゃねーかと思って声をかけたのによ!」


そう、こいつも昨日まで僕がいたチームに所属している。

腕前はそこそこだが、潜伏、待ち伏せはなかなかのものだ。まあ、結構嫌われているのだが…


「落ち込んでると思ってるならそっとしておいてくれよ。それよりお前、お悩み相談って出来るか?」


「急になんだよ、俺は相談事とか聞くの苦手だな。どっちかというと愚痴るの専門だし!」


こいつに頼ろうとした僕が馬鹿だった。確かに言われてみればこいつの愚痴を聞いてばっかりで、相談してもまともな回答が返って来たことがない。


薫に昨日のことを話していると、4〜5歳くらいの女の子が泣いているのを見つけた。


「大丈夫?とうしたの?」


近寄って声をかけると、少女はこう答えた。


「転んじゃって、ぐすん、足を擦りむいた」


「怪我したのか、俺に任せな!」


薫が陽気にそう言うと、カバンから消毒液と絆創膏を取り出し治療しだした。


「ほいっ、これでよし。痛むのは治ろうとしてる証だ」


「お前、顔に似合わず救急セットなんか持ってるんだな。」


「へへぇん、部活でよく怪我するからって救急セット持参するように言われてんだよ!」


よくもまあここまで自信を持って言えるもんだ。

そう思いながら、僕が少女の手を握って立たせようとしたその時。


「待てえぇい!」


突然後ろから怒鳴り声が聞こえて来た。同じトコの制服を着ているが見覚えがない。同学年のようだが…


「お前ら何やってる、ボクの妹に何をした!」


「いや、俺らはこの子が怪我して泣いてたから治療しただけだ。」


薫がそう笑いながら答えると


「本当に治療だけだったんだろうな、本当に!」


「なんだよ急に、僕らは治療しただけだ。」


「この天才のボクに隠し事は出来ないぞ!お前なんて、休日は家でゲームばっかりやっていて、全く他人には無関心のような顔をしているが!?」


「な、なにぉ!誰が他人に無関心だと!」


僕が怒っている側で薫が笑っていた。


「確かにそうだよなぁ、ゲームは休日どころか平日も家に帰ったらずっとしてるし、大会では戦犯になって周りの目を気にしてるし、全く他人に無関心じゃないよなっ!グボヘェ」


僕は思わず、言い終わると同時に肘打ちをしていた。


「ほらな!ずっとゲームをしていて人に手を出す危ないやつじゃないか!」


「危なくないわ!」


「大丈夫だよ、私は絆創膏はってもらっただけだよ。」


少女が立ち上がりながらそう言うと、笑顔で続けてこう言った。


「それより学校大丈夫なの?転校初日に遅刻しちゃうよ?」


「ん、それもそうだな。そろそろ保育園のバスもくるしな。今度はあまり先に行くんじゃないぞ?」


そう言いながら二人は去って行った。一体なんだったんだ?そう思いながら、再び学校までの道を歩きだした。



教室に着くとあたりはまだ騒がしかった。遅刻はせずに済んだみたいだか、僕はさっきの事が気になっていた。

そういえば、さっきの人物の妹らしき人が転校初日にとか言ってたな。今日どこかのクラスに転校してくるのか?

いろいろ考えていると教室に担任の藤原(ふじわら)が入ってきた。


「早く席に着け、転校生を紹介するぞ。」


僕はもしや、と思ったら案の定、先ほど登校中に出会った人物だった。

向こうもこちらに気付いたらしく、こちらを睨みつけてきた。


(ましら) 朝陽(あさひ)です。重くない方の家庭の事情でこっちに引っ越しました。よろしくお願いします。」


黒板に名前を書きながらそう自己紹介した。重くない方の家庭の事情ってなんだよ。

ちなみに席は僕の後ろになった。背中から刺されそうで正直怖い。

そんな事を思っているて後ろから背中を刺された!のではなく叩かれた。


「なに背中小突かれたくらいでビックリしてるんだ。それより、このクラスで一番成績がいいのは誰だ?」


「なんでそんな事に興味があるんだよ。」


「ボクは天才だからな、誰よりも頭がいいのは当然だが、まず手始めにこのクラス一番の実力を知っておきたいんだ。」


「無理だな、うん。」


そう、いくら朝陽が天才だろうと、うちのクラス一番の秀才、杉野(すぎの) (さくら)には敵わないであろう。

何を隠そう、彼女は県内で常にトップ3には入っているほど頭がいいのだ。


「な、無理だと!君もボクが女だから無理だというのか!」


そう、朝からずっと突っかかってくるこの人物、何を隠そう正真正銘の女の子なのである。

見た目は腰まで伸びた長すぎる一本の三つ編み、ずっと左肩にかけている状態だ。身長は170㎝程で細身、DかFカップといったところか?


「別に女子だからとかじゃなくて、委員長は県内でも上位レベルだぞ?」


「なに、問題ない。ボクも前居た所では県で常に上位だったさ。」


前居た所ですら常に一位では無かったのに、誰よりも上に立つと言っていたのか。まあ、目標が高い事はいい事だが…


そんな事を思っていると、一件のメールが来た。楓姉さんからだ。

要件は案の定だった。


《ついにサイトが完成したぞ!これがサイトのURLと、運営用のIDとパスワードだ。》


面倒な事が次々に増え、思わずため息が出た。

プロットでは今回が一番難しい所と予測してましたが、本当に難しかったです。

人の気を引くには、一話でどれだけ面白そう感を出せるか、どんな話になって行くかを重視しました。

二話はどんな登場人物がいるのか、どんな性格なのかを書いていこうかと考えていました。なのでストーリー展開も少ないですし、面白そう感が会話の中でしか作れないので悩ましかったです。なのでラストで一気に気を引けるような賭けに出たのですが…

当たってくれると幸いです。

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