お悩み相談所解放
息詰まるような状況だった
ラスト1対1、敵がどこにいるかも分からない。だが、必ずすぐ近くにいる。
ほんの数秒前にすぐ近くの味方がHSでやられたのだ。
銃声からしてAR、突っ込んでくるか、距離を取り爆弾を設置するか…
どちらにしても不意をつかなければ勝てない。
こちらもAR、しかも体力が残り少ない。撃ち合いになれば負ける可能性が高い。
裏から周って爆弾の設置中、または出てくるのを待ち構えてる背後を狙うしかない。
そう、冴えている。僕の頭は今冴えまくっている。数秒もしないうちに僕は考えをまとめ、ここから立ち去ろうとしたその時!
シュンッ!
僕はサイレンサー付きのSRに撃ち抜かれていたのである。
「な、なんだってぇぇぇっ!」
僕、犬塚 椿は思わずパソコンの前で叫んでしまっていた。
完璧だったはずの作戦を実行する前に倒されてしまい、僕のモチベーションと仲間からの評価が下がってしまったのである。
「どういうことだ!銃声は確実にARだった!なのにSRで狙撃されるとは、もしやこいつチートか⁉︎」
あまりに信じられない出来事で、僕はリプレイを確認した。
リプレイには味方をARで撃ち抜いた後、味方のSRを奪い取っていく敵の姿が映っていたのだった。
同じチームのメンバーから大ブーイングを受けていた。そう、この試合は全国大会予選の決勝だったのだ。あそこで勝ては念願の全国大会出場だった。
それを見て僕は思わずもう一度「ぬぉーーー」っと叫んだ。
ドンドンドン!
「うるさいぞ!今何時だと思ってるんだ、寝れないだろう!」
薄い壁を叩きながら姉がそう言ってきたのだ。
「今何時だとって、今午前の11時だよ。そもそも寝すぎなんだよ楓姉さんは。」
楓姉さんはあまり部屋からでず、家というよりもはや部屋に住んでいる24歳。高校を2年で中退しており、本人によれば卒業してないから永遠の17歳なんだそうだ。
ニートではなくサイバー警察として、とあるゲーム企業から雇われているそうだ。
自社の悪い噂などをすぐさま発見し、削除するのが主な仕事なのだが、悪質なデマ、爆破予告、脅迫なども対処してる。
あらゆる必要な情報から不要な情報まで知り尽くしている。
「椿、またFPSの大会で戦犯になったみたいだな。チームのリーダーがカンカンだぞ。こりゃあんた退会させられるね。」
何でそんな1分も経ってない出来事を知っているのか、本当に恐ろしい姉だ。
「退会なんてさせられないよ!戦犯にはなったものの大会では僕が半数以上キルしたんだから!」
自称プロゲーマーの僕が、チームで一番貢献した僕が退会させられるなど、あるはずない!
ピロンッ
そう思っているとゲーム内から通知がきた
【チームから除名されました】
「なんだっってぇぇぇ!」
「除名されたのは残念だけが、少し静かにしてくれ。私も徹夜明けなんだ」
これから僕は何を生きがいにしていけば…
あんなに極めたFPS、だか悲しいかな、FPSはいくら1人が強くても、個人だけだとただの趣味にしかならないのだ。
基本FPSの大会は団体戦、個人戦もなくはないが、それはそれで団体戦と違う力が必要になってくるのだ。
「あ、そうだ椿、チーム除名されて暇になったことだし、少し手伝ってくれない?」
薄い壁越しに楓姉さんが言ってきたのだ。手伝い?一体僕に何を手伝って欲しいんだ?
「内容は簡単、お悩み相談をやって欲しいんだ。」
「お悩み相談?逆に今僕が相談したいくらいだよ。」
「それは来世で姉さんが聞いてやる、それで、お悩み相談って言ってもゲーマーお悩み相談だ。椿は一応自称だかゲーマーだろ?」
一応自称プロゲーマーとは言っていたが、改めて他人に言われると恥ずかしいもんだ。
「そのゲーマーお悩み相談は普通のお悩み相談と何が違うの?」
「そうだな、基本はゲームをあまり知らない人の相談に乗るんだ。最近は興味はあるが知らないから手を出しづらい、と言った人が増えてきている。そんな人達の相談に乗ってゲームに手を出しやすくしようと言う、私の雇い主からの依頼だ」
といい感じに言っているが、要は自社のゲームを買って貰うためにゲームに親しみを持って貰うってことだ
「僕に何かメリットがあるの?それ?」
「勿論仕事だからお金は出るぞ、新しいパソコンを買いたいんだろ?毎月入ってくるお金を使えば、ゲーミングパソコンなんてすぐだ。」
「うぅっ…」
確かにそれは魅力的な話だ、学生である僕にとっては美味しい話だ、だが、簡単に引き受けていいものか。ちゃんと相談に乗れるか…
「これは試験的なものでもあるから、失敗を気にしなくても大丈夫だぞ?ただし真面目にやらないと…」
「やらないと?」
「私がお前のトンデモナイ秘密を学校にばら撒いてやる!」
壁越しでもわかるようなにこやかな声で姉さんはそう言った。
姉さんの情報力は侮れない、恐らく僕のトンデモナイ秘密を掴んでいる。そして恐らくこの誘いを断っても…
「わかった、やるよ、やりますよ。」
「よし!じゃあ決まり!サイトは明日までに作って渡すから、よろしくね!」
本当に僕は引き受けてよかったのか、あまり考えない方がいいだろう。
初めての投稿です。
読みにくい部分もあると思いますが、少しでも楽しんでくれると幸いです。




