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リプレイ~君を探して~  作者: テイジトッキ
8/27

二の生~歩~__今やるべき事。

 ピピピピ……。ピピピピ……。

 カチッ__。


「う……ん」


 朝……か。


 昨夜の記憶がない……。

 どうやって帰って来たんだろう。

 思い出そうとすれば、きっと思い出すんだろうけど、そんなに重要な事だとも思えない。

 だって、俺はちゃんと部屋に辿り着いて、ベッドに横たわっているじゃないか。


 服は着たまんまだけど……。


 ”帰巣本能”恐るべしと言ったところか?

 はっ! んなこと、どうだっていい。


 チィちゃんが、いなかった……。


 何故だ? どうなってるんだ?

 そもそも、この世界に彼女が存在するんだろうか?

 転生とか、並行世界とか、俺わかんないよ。


 チッ、スマホがない……。

 思えば、便利だったよなぁ。

 知らない事をちょこっと打ち込むだけで、パパッと解決するんだから。


 転生かぁ……。


 最近( 前の世界 )で、転生して勇者になるマンガとか小説が沢山あった。

 俺自体、それは嫌いではなかったが、『現実逃避もいいとこだな』って思いながら読んでた。

 ファンタジーなんだな。


 幻想なんだ……。


 まぁ、幻想やら妄想でもしなきゃやってられない世の中だってことさ。

  どっちにしろ、自分に都合のいい妄想には違いない。


 現実、社会に出たらそんな事言ってられない。

 学校ってのは与えてくれるが、社会は与えてはくれない。

 自分で探して身につけるのが基本だ。

 実際、大学生のバイト達でも使えないヤツらが多かった。

 ”わかりません””聞いてません””僕じゃないです”

 仲間内じゃ”めんどくさい”って、口々に言いながら雑に仕事を流しているのが見え見えで。

 そんな手抜き、俺達が分からないとでも思ってるんかね?

 故に、個人のデキ具合の差が半端ない。

 自分から掴みにくるヤツと、いつまでも与えて貰おうとするヤツと……。

 従って後者は、本人が気づかない内に抹殺される。

 気がついた頃には、シフトから消えてるみたいな。


 『あの~、最近、俺シフト入れてないんですけど……』


 てな感じ、そして社員達は『仕事できないからな』とは口が裂けても言わないし、改善点や改善策さえ教えない。

 なぜなら、そういうヤツらに限って、反発はしても言う事を聞かないからだ。

 前に進むヤツは、自ら聞きにくる。


 あ、どうも年寄り臭くていけないや。

 だって、俺42歳だもんな……。

 ん?

 うわ! 俺、42なんだ!

 そんな俺が20歳のチィちゃんを……。

  ヘタしたら変態扱いされるぞ!

 で、でも今は22歳なんだから……。

 いいのかぁ? いいんだろうか?  

 ……いい……よな。バレやしないさ……。


 と、とにかくチィちゃんだ。

 なぜ、彼女がいないのか……。

 こういった場合(転生)、周りの人間関係は変わらないと思ってたんだけど、単なる思い込みだったんだろうか。

 調べる必要があるな……。


 くそ、スマホ……が、ない。

 ってことは、図書館かぁ?

 はぁ……。


 と、あと金だ。

 昨日、新幹線往復とその他諸々……。

 今の俺にしたら使いすぎなんじゃないか?。

 財布の中身が殆どない。

 キャッシュカードはあるが、残金まではわからない。

 暗証番号はずっと同じだから大丈夫だ。

 ってか、俺バイトしてるよな?

 今は何のバイトやってんだ?

 昨日はどうだった? 無断欠勤とかしてないだろうな?

 ヤバイ~。


 あ、そうだ。留守電。


 テレビの横に目をやると、留守電のランプが点滅していた。

 慌てて駆け寄り、再生ボタンを押すと、


「メッセージは2件です」


 と、答えた。

 続いて聞こえてきたのは、


「1件目」

「あゆむ? どうしたの? 学校来ないの? 何かあった?」


 優香……。


「2件目」

「あゆむ? 今、マンションの前だけど……。いないんだね? どこに行ったの? じゃ、また明日ね」


 来てたのか……。だよな。


 優香は、とにかく俺についてまわる子だった。

 そんなところが可愛くも思えていた。


 ある日キャンパスを歩いていたら、突然__。


『一条さんですよね! 私と付き合ってくれませんか?』 

『はっ?』

『あなたの身長と、私の身長のバランスが最高なんです!』

『身長?』

『私、憧れてたんですよね。ちょうど耳の辺りに肩が当たる人と歩くのを』

『そんな奴、そこらへんにたくさんいるだろう』 

『そこら辺じゃダメですよぉ! 他にも、目が切れ長で、唇が薄くて、鼻筋が通ってて、耳が大きくて、鼻の穴が小さくて……』

『アンタ……。どんなけ俺の事観察してんの?』

『えへ。ずっと』


 首を傾げて微笑む彼女に俺は参ってしまった。

 本当は一目惚れだと、彼女は言った。俺もそれに近い。


 そして、彼女は俺と付き合っている最中、他の誰かに一目惚れして結婚した__。


 ** *** *** ****


 ○並行世界 >ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空ともいう。


 ○転生 >生あるものが死後に生まれ変わること、再び肉体を得ること。


 う~ん、俺が思っていた事と差程違いはないなぁ。

 じゃ、チィちゃんはどこかにいるんだろうか。

 これは、実家を訪ねるしかないな。

 あと…やっぱ金だな。残金を調べたら2万ちょっとだった。

  とりあえず全部下ろして札を見ると、千円札が夏目漱石で、五千円札が新渡戸稲造だった。

 

  時間を遡るって、ある意味新鮮だな。

  な~んて、言ってもいられないなぁ。


 バイトを増やすか……。

 

 昨日、洗濯しようとしたらバイト先の制服が出てきたんで、バイト先が分かった。

 〝あぁ、あそこか……”

 定食屋だ。俺は厨房で定食を作っていたんだ。

 この界隈では一番時給が良かった。

 たまに、深夜枠にヘルプで入っていた。


 〝明日、シフト見に行くか”


 そしてもう一つ、俺にはやるべき事がある。


「別れよう……」

「え? 何で? そんな急に……」

「俺、やらなきゃならない事ができたんだ」

「わ、私も手伝えないの? 就活の事とか?」

「優香には……関係ない事なんだ」

「そんな……。何で? ね、一緒に……」

「ダメだ!」

「あ……ゆむ」

「ごめん……」 


 大丈夫……。

 君は、エリートと結婚するんだから。

 こんな傷はすぐに癒えるさ。


 そして、俺は就活先を変えた。

 以前、勤めていた会社だ。

 あの時は中途採用だったが、今度は新卒でキャリア組を目指す。

 インターネット接続の知識は、既に頭の中にある。

 これは、かなりの強みになるだろう。

 要はそれ以前の知識を身に付けるだけだ。


 イケる!


 チィちゃんと結婚する為にも、ちゃんと就職してそれなりの地位についていたい。


「お疲れ様ッス!」

「おはよう! あれ? 一条、お前どうしたの?」

「あ、や、シフト確認を……」

「あっそ」


 ふぅ……。どうだ? 上手くいったか?

 誰も怪しんでないみたいだけど……。


 俺は、できるだけ平静を装い、バイト先に潜入した。

 誰も俺を42歳だと疑う奴はいないか?


 ぅわぁ、汗が吹き出してきたぞ!

 ドキドキしてきたぁ。


 ま、仮に『俺、生まれ変わったんだ』なんて言っても、『お前、大丈夫か?』と、額に手を当てられるのがオチだろう。

 言う気も更々ないが……。


「よぉ! 一条、いいとこに来たな」

「え?」

「今度の日曜日、代わってくんねぇか?」


 コイツ誰だっけ……。

 あ、名札……。『小川』


「あ、あぁ、いいよ」

「やった! サンキュ。店長には俺から言っとくわ」

「お、おぉ……」


 ハァ……。

 なんか、調子狂うなぁ。

 これから先、こんなんばっかなんだろなぁ。


「うふふ。一条くん大丈夫なの? 日曜日は、絶対彼女とデートだから、バイトには入らないって言ってたクセに」

「あっ! 綾子さん!」


 俺はいきなり彼女の両腕を、ガシッと掴んでいた。


「キャッ! え? 何? どうしたの?」


 綺麗だ……。

 っていうか、何だか可愛いさが増してる気がする。

 もしかして、俺が42歳だからか?


「ちょっと! 痛いわ」

「あ、すいません」

「もうヤダァ。オバチャン相手にふざけないでよ」

「あ、綾子さんはオバチャンじゃないですよ」

「からかうんじゃないわよ! ベェ~だ」


 綾子さんは、チロッと舌を出すとホールに戻って行った。


 あぁ、こんないい事もあるんだなぁ。

 当時、33~5歳くらいの彼女は俺達の憧れだった。

 クッキリとした大きな瞳、艶っぽい唇。

 オリエンタルな容姿に似合った輝くような黒髪。

 以前はお姉さまだった彼女が、今の俺からすると若々しい女性に見える。


 素晴らしい!

 となると、チィちゃんはどんな風に見えるんだろうか?

 まるで、少女? なぁんてなぁ~♡

 ダハハハ……。

  って、変質度上げてどうすんだよ!

 まぁ、あれだ。バイト先は問題ないとするか。


 あとは、大学関係か……。まぁ、何とかなるだろ。


「お前、優香と別れたんだって?」

「あぁ……」

「何でまた急に」

「まぁな……」

「あんな可愛い子。お前だって、ベタ惚れだったんだろ?」

「もう、いいんだよ」

「何がいいんだ? 彼女、ひどく泣いてたぞ」

「……。」


 分かってる……。

 でも、もういいんだ。


 半年後__。

 コチラの生活にも大分慣れてきた。

 生活費や学費、金銭面の整理もできた。

 色々やってるうちに思い出した事もあり、ここまで順調にきた。


 よし! チィちゃんの実家に行こう__。



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