第四章「神戸」
同日、兵庫県神戸市須磨区、須磨海水浴場。JR神戸線須磨駅の目の前にあるこの阪神地区最大規模の海水浴場に、京都府警の中村、三条両刑事が姿を見せたのは、午後二時頃の事だった。すでにシーズンが終わっていて砂浜は閑散としており、どこか寂しい雰囲気が漂っている。
「ここですね」
「あぁ」
問題になったのは、自宅から発見された例の謎の男と一緒に写った写真だった。あれから彼女の旧友たちに確認を取った結果、大学入学以降、彼女が海水浴に行ったのは三年前……すなわち大学二年の頃に友人数名とこの須磨海水浴場へ旅行した一回きりだという事が判明したのだ。となれば、必然的にあの写真が撮影されたのもこの須磨海水浴場だという事になり、あの写真に写っていた男性の手掛かりが何かあるかもしれないという事で急遽二人が出張する事になったのである。
「とはいっても、探し当てるのは難しいですよ。大学の捜査で被害者に男がいたという情報は確認できませんでしたから、問題の男とは大学と関係ない場所で出会っていた事になります。この海水浴場で出会った可能性も否定できません。でも、地元の人間ならまだしも、たまたま立ち寄った観光客だったとしたら探すのは正直お手上げです」
だが、これに対して中村は落ち着いていた。
「いや、観光客の線は薄いな」
「なぜですか?」
三条の問いに、中村は黙って問題の写真を取り出した。
「男の腕を見ろ。何か腕章をしているのがわかるだろう」
見ると、確かに写真の隅の方……右腕の辺りに何か黒い腕章が巻き付いているのがわかる。
「確かに巻いてますね」
「海水浴場でこの手のものをしている人間なんて限られている。可能性として考えられるのは、海水浴客を監視する側の人間……」
「ライフセイバーか、もしくは海水浴場の監視員、ですか」
中村は頷く。
「もしそうなら、雇った側に記録が残っているかもしれない。ライフセイバーは神戸にライフセービングの組織があるはずだし、それ以外の監視員の採用はこの水泳場を管理する神戸市役所の管轄だろう。もっとも、服を着ているこの格好からして、おそらくは監視員の方だろうな」
「なら、まずは神戸市役所ですね。三年前に雇っていたボランティアの名簿を調べましょう」
そのまま二人は、タクシーでいったん神戸市役所に移動した。窓口で警察手帳を示し、事情を説明して担当者を呼んでもらうように頼む。しばらくして出てきたのは、五十代後半の眼鏡をかけた男だった。
「どうも、みなと総局観光課課長の高市です。須磨海水浴場の事で聞きたい事がおありとか?」
中村は頷くと、問題の写真を見せながら質問に移った。
「三年前の事についてお尋ねしたいのです。三年前に須磨海水浴場の監視員として雇っていた人間の中に、この写真に写っている男性はいませんでしたか?」
高市はしばらくその写真をじっと見ていたが、やがて難しい顔でこう答えた。
「申し訳ありませんが、監視員のアルバイトやボランティアは毎年頻繁に入れ替わります。名簿は残してありますが、顔を見て誰とまでは……」
「そうですか……」
ある意味、予想された答えではあった。とはいえ、このまま引き下がるわけにはいかない。
「では、三年前、須磨海水浴場で何か変わった事は起こっていませんか? 何でもいいんですが」
「変わった事……そうですねぇ……」
高市は再び考え込んだが、そこへ近くで作業していた職員が口出ししてきた。
「あの、高市課長、確かあの事故が三年前だったんじゃ」
「ん? あぁ、そう言えばそうだったね」
「事故、というのは?」
すかさず尋ねた中村に、高市は頭をかきながら答えた。
「いや、三年前の夏、夜の須磨海水浴場で溺れて死んだ女性がいましてね。あそこは午後四時以降遊泳禁止のはずなのに……」
「その女性の名前は?」
「青鳥真美子さんという二十五歳の娘さんです。後処理を担当したからよく覚えています。観光客じゃなくて、神戸在住のカラオケ店の店員さんでしたけど」
中村たちは顔を見合わせる。一見するとあまり今回の事件に関係ありそうには見えない。が、同じ三年前に起こったという点が少し気になった。
「県警は事故だと判断したんですか?」
「えぇ、まぁ。ちょうど見回りをしていた監視員が海面に浮いているのを見つけましてね。近くにいたライフセイバーが助けに行ったはいいんですけど、結局助からなくて」
「その発見した監視員の名前、わかりますか?」
その問いに、高市は手元の名簿を見ながら答えた。
「ええっと……斑鳩健さん。神戸在住で、普段はスポーツジムで水泳のインストラクターをされているそうです。毎年ボランティアとして監視員をしてくださっていましてね。住所はこの近くですよ。現場の方ですから、私以上に監視員の事には詳しいとは思いますが」
「話を聞いてみるか」
現状、手掛かりがそれしかない以上はそれをたどる他ない。中村たちは礼を言って市役所を出て行こうとした。
「あ、あの」
と、そこで先程の市役所職員がおずおずと声をかけてきた。
「何か?」
「えっと、あの事故に何かあったんですか? さっきも同じようなこと聞かれたんですけど……」
「さっき?」
思わぬ言葉に中村は眉をひそめる。職員は頷きながらこう言った。
「はい。一時間くらい前だったと思いますけど、三年前の事故について詳しく教えてほしいって。課長がいなかったんで、僕が答えたんですけど」
「どんな人ですか?」
「それが妙な二人組でして。サラリーマン風の四十代の男と、大学生くらいの若い女の子のペアでした。何か、この辺を嗅ぎまわっているみたいですよ」
「サラリーマン風の男と女子大生のコンビ……」
中村はそう呟きながら、何か嫌な予感がしていた。何というか、心当たりがあったからだ。
「警部、それってもしかして……」
「わからん。とにかく、その斑鳩という人の家に行ってみよう」
そのまま二人は市役所を出ると、斑鳩が住んでいるという神戸市中心部へと向かったのだった。
三ノ宮駅近くにある斑鳩のアパートに二人が行ってみると、部屋には誰もいなかった。近所の人間に聞き込みをしてみると、この時間なら仕事に出ているのではないかという事だった。
「どこですか? 確かスポーツセンターという事ですが」
「神戸港近くのスポーツセンターだよ。っていうか、いい加減にしてくれよ。同じ質問を二回もしやがって」
隣の部屋にいた大学生と思しき男は苛立ったようにそう言った。
「二回、というと?」
「一時間前くらいにあんたらみたいなスーツ姿のおっさんが同じ事を聞いてきやがったんだ。まぁ、一緒にいた女の子はかわいかったけどさ」
「同じ事を教えたんですか?」
「そうだよ。もういいか?」
そのままドアを閉められる。ひとまず、二人は斑鳩が勤務しているという神戸港近くのスポーツセンターに向かった。
だが、そのセンターにも斑鳩の姿はなかった。センターの職員に聞くと、今日は半休で一時間ほど前に帰宅したのだという。
「彼の写真、ありますか?」
「ありますけど……何かあったんですか?」
「話を聞きたいだけです。彼の行き先に心当たりは?」
「さぁ。自宅に戻ってると思いますけど」
センターの職員はそう気楽に言った。だが、自宅に戻っていないのはさっき確認したばかりだ。
「自宅以外で行きそうな場所はありますか?」
「うーん、それじゃあ、メリケンパークの方かな」
「メリケンパーク?」
「ほら、ポートタワーとか海洋博物館のある辺り。あいつ、よくあの辺で観光客の女の子をナンパしてたから。ま、ほとんど失敗してたけど」
職員は苦笑気味にそう言った。何とも曖昧な情報だが、他に情報がない以上は行ってみる他ない。
「仕方がないな……行ってみるか」
それから十分後、二人は三ノ宮駅南方の海沿いにある神戸メリケンパークに足を踏み入れていた。言うまでもなく神戸有数の観光地でもある場所だが、平日である事もあってか思った以上に閑散としている。
「何だかよくわからないうちに来るところまで来ちゃいましたね。刑事が観光地に来るなんて、トラベルミステリーじゃあるまいし……」
「今の所、時刻表アリバイは出てきていないから安心しろ」
「関係ありませんけど、私にとっての神戸港って某光の国のヒーローの話で某ロボットがタンカーを振り回していたところなんですよね。子供の頃にビデオをレンタルして見て興奮したのを覚えています」
「あぁ、京都の国際会議場が襲われるあれか。府警の人間としてはあまり愉快な話じゃないな」
「警部も見た事があるんですね」
「世代だからな」
そんな事を話しながらも、彼らの視線は油断なくパーク内を見回している。ちょうど二人がいるのは、阪神大震災の際に破壊された港の遺構をそのまま保存している震災メモリアルパークの辺りだった。
と、そこで不意に中村が鋭く小声で三条に呼びかけた。
「おい、あれ!」
次の瞬間、二人は震災メモリアルパークの展示スペースの陰に姿を隠していた。その視線の先には、一人の若い男が落ち着かない様子で周囲を見回している。二人はセンターでもらった写真を確認した。茶髪で今時の若者と言った風貌。間違いなく自分たちが探していた監視員の斑鳩である。
「こんなところで何をしているんだ?」
「まさか、本当にナンパだったりして……」
身を隠し続けながら中村がした問いに、三条が律儀に答える。見ると、斑鳩は時々チラリと腕時計をチェックしたりしながら何かを待っている様子だった。
「これはナンパというよりも待ち合わせだな」
「どうします? 声掛けますか?」
三条がそう言った時だった。不意に海洋博物館の方から誰かが駆け寄ってきた。
「ごめーん、遅れちゃった!」
それは大学生くらいの女性だった。まだ高校を卒業したばかりだろうか。斑鳩はそれに対し、軽く手を上げながら答える。
「よっ、香奈。大丈夫、俺も今来たところだから」
「ほんとぉ~?」
そう言いながら香奈と呼ばれた女性は斑鳩に腕を絡ませる。どうやら、デートの待ち合わせだったようだ。
「これは、ちょっと声をかけにくいですね」
「あぁ。とはいえ、ここまで来て黙って帰るわけにもいかない。彼には悪いが、話を聞かせてもらおう」
「怒られませんか?」
「質問は五分くらいですむ。後で謝ればいいさ」
そう言って中村が身を乗り出して二人の元へ歩き出そうとした……その時だった。
「ちょっと、お待ちいただけますかね」
突然、そんな声が港に響き渡り、どこから現れたのかヨレヨレのスーツにアタッシュケース姿の男が斑鳩の後ろに姿を見せた。斑鳩はギョッとしたように後ろを振り返る。
「な、何だよ、いきなり! 誰だ、あんた!」
だが、その姿を見て一番驚いたのはその声に慌てて再度姿を隠した中村たちの方だった。なぜなら、彼らはその人物が誰なのかをよく知っていたからだ。
「ど、どうしてあの人がこんなところに……」
三条が展示スペースの陰でそう呻くのを知ってか知らずか、男は小さく一礼すると、斑鳩に対してこう自己紹介をした。
「どうも、東京で探偵事務所を開業しています、榊原恵一と申します。斑鳩さん、あなたに話したい事があるんですがね」
その瞬間、男……榊原は穏やかな表情のまま、斑鳩に対して鋭い視線を向けたのだった。
榊原恵一、四十四歳。品川の裏町にある小さなビルの二階に探偵事務所を構える私立探偵である。ヨレヨレのスーツにネクタイというどこかくたびれた中年サラリーマンのような風貌をしているが、その実態はかつて警視庁刑事部捜査一課内に創設されていた最強の捜査班に所属していた元刑事で、しかもその最強の捜査班でブレーンの役割を担っていたという推理の天才……というより推理の怪物である。刑事を辞めて以降も探偵として犯罪史にその名を残す数々の大事件を解決に導いており、関係者からは冗談でもなんでもなく「名探偵」と呼ばれている人物だった。
そんな人物だけあって警察関係者の中にも彼の推理力を知る人間は未だに多く、警察だけでは解決の難しい事件に関してはアドバイザーという形で協力を要請する事も少なくない。実際、中村自身もかつて何度か共に捜査をした経験があり、それだけにこの場面でのこの男の登場はあまりにも想定外すぎる話だった。
「探偵、だって? おい、おっさん、何ふざけた事言ってんだよ」
一瞬虚を突かれた形の斑鳩だが、すぐにそう言って反発する。が、榊原は苦笑気味に笑っただけだった。
「ふざけているつもりはないんですがね。私は実際に探偵ですし、あなたに話があるのも事実です。何一つ嘘は言っていませんよ」
「その言い方がふざけてるんだよ! 大体、俺は探偵に用なんかない! これから彼女とデートなんだ。邪魔するんじゃねぇよ!」
「デート、ですか。残念ですが、それは中止してもらわなければなりませんね」
その言い方に、斑鳩は眉をひそめた。
「どういう意味だよ」
「言葉通りの意味ですよ。それが今回、私に依頼をした依頼人の頼みですからね」
そう言った瞬間だった。
「香奈!」
突然、榊原の方を向く斑鳩たちの後ろ側から声がかかった。そちらを見ると、こちらもいつの間にいたのか香奈と呼ばれた女性と同年代の別の女性が立っていた。ショートヘアのかわいらしい顔つきであるが、しかし、中村たちはそっちの女性には見覚えがあった。
「あれって……瑞穂ちゃんですか!」
三条が呆然としながら名前を言う。中村も渋い表情で彼女を見ていた。
深町瑞穂。前に会った時は東京にある立山高校という高校の学生で、確かミステリー研究会の会長をしていた。同時に、榊原の推理に心酔して彼の事務所に出入りしており、「榊原の弟子」を自称していたはずだ。
そう言うだけあって元々の素質があったのか、あるいは面倒臭がりながらも榊原が一応弟子としてそれなりの教育をしたせいなのか、本人の自覚はともかく彼女の推理力もそれなりの域に達している。実際、昨年八月に京都と滋賀を舞台に発生した誘拐殺人事件の際には、たまたま居合わせた彼女が単独で事件の謎を解決した事があるくらいである。それを目の当たりにしているだけに、中村たちにとっては彼女の顔を忘れたくても忘れられなかった。確か、その事件の時に高校三年生だったので、今はもう高校を卒業してうまくいけば大学生になっているはずである。
だが、彼女を見て一番反応したのは、他ならぬ香奈だった。
「み、瑞穂? どうしてこんなところに?」
「おい、知り合いなのかよ」
斑鳩の問いに、香奈は頷いた。
「うん、高校の時の同級生。でも、どうして……」
「歌美に頼まれたの。あなたが変な男と付き合ってるみたいだから、そいつの事を調べてくれって。だから、先生と話して事務所としてこの依頼を受ける事にしたの」
「事務所って……確か瑞穂は勝手にその事務所に出入りしていただけだったんじゃ……」
「今は正式に先生の事務所の事務員のアルバイトよ。もう大学生だしね」
どうやら大学生になって「自称弟子」から正式な弟子に格上げされたらしい。と、ここで榊原が静かに話し始めた。
「瑞穂ちゃんの言う通りです。島井香奈さん、あなたの高校時代からのお友達で、さらにあなたと同じ神戸南海大学に進学された花内歌美さんが、先日元同級生の瑞穂ちゃんに接触してきましてね。あなたが付き合い始めた男に不信感を覚えるので、あなたに内緒で調べてくれないか、という依頼でした。歌美さんはあなたの事をひどく心配されていましてね。で、その内容を今からここでお知らせしようと思うわけですが」
そう言うと、榊原は鋭く斑鳩を見据えた。その物言わぬ迫力に、斑鳩は思わず一歩後ろに下がるが、後ろには瑞穂がいた事に気付いて慌てて一歩前に出る。いつ間にか、榊原と瑞穂に前後を挟まれる格好になっていたのだ。
「な、何だよ。俺の事を調べたっていうのか? それで何で俺がこんな詰問されるみたいにならねぇといけないんだよ」
「まぁ、確かに普通なら依頼結果を依頼人に報告してお終いなんですが……今回はそうも言っていられませんでしたのでね。そうでもしないと、島井さんの命が危ないところでしたから」
「は、はぁ? 何を言って……」
「斑鳩さん、あなたが人殺しだからですよ。それも極めて悪質な」
淡々と告げられた衝撃的な言葉に、斑鳩と香奈は絶句した。
「ど、どういう意味だよ!」
「文字通りです」
「ふざけんな! 探偵だか何だか知らねぇが、言っていい事と悪い事が……」
「ちゃんと調べましたよ。今から五年前、あなたは和歌山県にある紀伊山大学に在籍していて、そこでも南紀白浜にある海水浴場で監視員のアルバイトをしていました。そしてこの年、この海水浴場である『事故』が発生しています。同じ紀伊山大学所属の女子大生・津倉妃菜さんが海水浴場沖合で溺死体となって発見されるという事故です。そして、その遺体の第一発見者になったのがあなたでした」
その発言に、陰で聞いていた中村たちの顔色が変わった。さっき聞いた須磨海水浴場での事故と状況が酷似しているからだ。
「和歌山県警はこの件を事故と判定しているようでした。しかし、あなたが第一発見者になった事故という事で少し気になりましてね。ちょっと調べてみるとどうも怪しい事が出てきたんです。例えば、被害者の津倉さんですが、実は事件前日に友人に対して『男友達に会ってくる』というメールを残していたんです。この友人、事件当時は北海道の自宅に帰省していたため、県警の捜査も及んでいなかったようでしてね。友人も帰ってきたときにはすでに事故判定されてしまっていたので言い出せなかったと言っていました。いやぁ、随分苦労しましたよ。手掛かりも何もない中で、今は和歌山市内の郵便局に勤務しているその友人を捜し出して話を聞き出すのはね」
「わざわざ……調べたっていうのかよ」
うす気味悪そうに言う斑鳩に、榊原は肩をすくめて何でもない風に答えた。
「これくらい、探偵なら当然の調査です。警察の記録ではこれと言った情報がなかったので、被害者の事を徹底的に調べて当時の友人関係を洗いました。被害者の実家が田辺市だったからまだよかったですよ。その中で、事件当時警察の聴取を受けていない友人を何人かピックアップして、追跡調査を仕掛けただけです」
簡単に言ってはいるが、なかなかできる話ではない。実際、斑鳩もようやくこの一見くたびれた中年サラリーマンにしか見えない男が尋常でない何かである事に気付きつつあるようだった。
「まぁ、私が疑いを持ったきっかけはそれでしてね。このメールが正しいなら、彼女には懇意にしている男友達がいた事になりますが、警察の記録ではそんな人物の存在などどこにも載っていません。つまり、その男は自分の女友達が死んだにもかかわらず、その後姿を消しているんです。これで怪しむなと言う方に無理があるでしょう。で、周辺に徹底的に聞き込みをしてこの男友達の情報を探ったんです。嫌な予感もしましたね」
そう言うと、榊原は斑鳩の方をじっと睨んだ。
「かなり苦労しましたが、何とか見つけましたよ。事故現場近くの居酒屋があるんですが、問題の友人のメールに彼女がその男友達と何度かその居酒屋に行ったという文章もあったんです。さすがに店主もいちいち客の事は覚えていませんでしたが、その居酒屋ではサービスで観光客向けの記念撮影を行っていて、撮った写真を店内に掲示してありました。その写真を私と瑞穂ちゃんで徹底的に調べましてね。……写っていましたよ。ある団体客が写っている写真の背景に、カウンター席で仲良く飲んでいる被害者とその連れの男性の姿を」
それを聞いて、初めて斑鳩の顔が蒼くなった。どうやら心当たりがあるようだ。
「てめぇ……そんなところまで……」
「その顔を見てすぐにピンときましたよ。何しろ、それは私が調べてくれと頼まれた男そのままの顔だったんですから。……斑鳩健さん、あなたです」
そう言われて、斑鳩は顔を真っ赤にし、傍らにいた香奈が少し距離を取る。
「ね、ねぇ……今の話、本当なの?」
「うるせぇ! ちょっと黙ってろ!」
斑鳩の言葉に、香奈は体を震わせる。が、榊原はそれに対して首を振りながら推理を続けた。
「まぁ、そんなわけでいよいよあなたに対する疑惑が大きくなりました。少なくとも、あなたが大学時代に女性と付き合っていて、その女性が事故で急死した事実。そして、第一発見者にもかかわらずあなたがそれを隠していた事ははっきりしたわけですからね。そこで疑惑を検証するために事故の状況をもう一度詳しく検分したんです。記録の上では、彼女の死因は溺死。解剖の結果、肺から大量の海水が検出され、この海水の成分は彼女の死んでいた海域のものと一致しています。死亡推定時刻は遺体発見前日の午後六時頃。血中から高濃度のアルコールが検出された事もあり、県警は彼女が酒で酔っ払って遊泳時間外に勝手に海に入って溺れたものと判断したようです」
榊原はそこで斑鳩を見やった。
「ところで、あなたにはこの時間アリバイがあったようですね。第一発見者のあなたもアリバイを確認されたそうですが、この時あなたを含めた監視員は詰め所で談笑していたという事になっていました。トイレなんかで抜けた人間はいたそうですが、それも五分程度の事だったと記録にはあります。そんな状況で、被害者を海の真ん中に連れて行って突き落とすのは無理だと判断されたみたいですね」
淡々と事実を告げる榊原に、斑鳩は顔を引きつらせながら反駁する。
「ほ、ほら見ろよ! 俺に人殺しなんかできるわけが……」
「いえ。こんなもの、ちょっとしたトリック……いや、小細工で何とでもできますよ」
榊原は斑鳩の言葉を遮りながらはっきり言った。
「こ、小細工って……」
「トリックと呼ぶほどのものじゃないからそう言っているだけです。要するに、彼女が事故死判定されているのは、肺から検出された海水から彼女が海で溺れたと思われているからです。でも、別に相手を溺れさせるのは海じゃなくてもできますよね。例えば……あらかじめ洗面器か何かにくんでおいた海水に顔を押し付けるとか」
そう言われて、斑鳩の顔が真っ赤になった。榊原は気にする事なく続ける。
「例えばこんなのはどうでしょう。犯人は被害者にあらかじめ酒を飲ませて泥酔させ、詰所の近くに隠しておいた。で、アリバイがある頃合いを見計らってトイレのふりをして彼女の元へ行き、洗面器の海水に顔を押し付けて殺害。これなら犯行時間は五分でいいし、死亡推定時刻は犯人のアリバイがある時間に限定されます。後は、監視員が解散して一人になった後で遺体を水着に着せ替えて海に捨てれば、アリバイ工作……いえ、アリバイ小細工の完成です。はっきり言って古典的で使い古された手段ですが、何か推理小説でも読んで考え付いたんですかね?」
「言い掛かりだろ! 証拠なんか何一つない!」
斑鳩が反射的にそう叫ぶが、榊原は即座に反撃する。
「言ったでしょう、被害者の実家を調べたと。そこに被害者の遺品が全部保管されていましたよ。発見当時来ていた水着、砂浜に脱ぎ散らかされていた衣服、それに……コンタクトレンズのケース」
「は?」
最後の言葉に斑鳩が反応した。
「えぇ、彼女はどうも目が悪かったようですね。実家では眼鏡をかけていたようですが、対外的にはコンタクトレンズをして目が悪いのを隠していたようです。両親いわく、ないとまともに文字も読む事ができなかったとか。そして実際、記録によれば遺体の片目からは彼女のコンタクトレンズが見つかっています」
「だ、だから何なんだよ?」
「妙じゃありませんか? いくら酔っぱらっているとはいえ、コンタクトをしている人間が水中メガネもなしに海を泳ごうとしますかね?」
その矛盾に、ようやく斑鳩もハッとしたような表情を浮かべた。
「遺体からは水中メガネは発見されていません。しかし、彼女は水着を着て死んでいました。つまり、彼女は泳ぐ前に水着に着替えたにもかかわらずコンタクトをしている人間には必須の水中メガネをせずに海に飛び込んでいる事になります。酔っ払いだったとしても、ちょっと行動に矛盾がありすぎませんかね?」
「そんなの、水中メガネは遺体が流されているときに海に流されたって考えれば……」
斑鳩の反論に対し、榊原はおもむろにスーツのポケットから黙ってビニール袋に入った何かを取り出して斑鳩に突き付けた。
「その流された水中メガネと言うのは、これの事ですかね?」
ビニール袋に入っていたのは、紛う事なき水中メガネだった。
「ど、どこでそれを……」
「もちろん、彼女の実家ですよ。死亡時の遺品とは別に、当時の彼女のアパートから引き揚げられた数々の遺品が手つかずになっていましてね。その中にこれがありました。友人にも確認しましたが、彼女は水中メガネをこれ一つしか持っていなかったそうです。まぁ、常時使うものでもないのでそれが当然でしょうが……問題は、これが彼女の自宅に置いてあるままだったという事実です」
榊原は斑鳩を睨んだ。
「これが家に置いてあった以上、事件当日、彼女に泳ぐ気は全くなかったと考えざるを得ません。にもかかわらず、彼女は海で溺れて死んでいます。ここに大きな矛盾が出てしまうんです。この矛盾を解決する理論は一つだけ。彼女が死んだのは海ではなく陸で、死後に遺体が海に投棄されたというものです。つまり、この水中メガネの存在は、海で泳ぐ気がなかった彼女を陸で溺れさせた何者かが存在するという明確な証拠になるんですよ!」
その言葉に、斑鳩は唇を噛んだ。それは、榊原がさっき言ったトリックが実行された事を示す決定的な証拠だった。
「だ、だけどよ、陸で死んだからって、その辺の池とか川で死んだ可能性も……」
「さっき言いましたよね。彼女の肺からは『遺体のあった海域の海水の成分』が検出されている事を。これはつまり、何者かがわざわざ海の水を持ってきて彼女の顔に押し付けて溺視させたことになる。今まで彼女の死を事故死とする証拠となっていたあの成分分析は、皮肉にも今回は『彼女が陸で海水に顔を押し付けられて殺された』決定的な証拠として蘇る事になるんです」
そのまま、榊原は反論を許す事なくとどめを刺しにかかった。
「そして、そこに第一発見者にもかかわらず彼女との関係を隠そうとしたあなたの存在があったとなれば、少なくとも、怪しいと考えるのは当然でしょう。で、あなたが大学卒業後に神戸に戻ったというので我々もこっちに来て念のため市役所で情報を探ってみたんですが、そしたら、三年前に神戸でも同じような事故……いや、事件が起こっているじゃないですか。しかも、第一発見者はまたしてもあなたです。さすがにこっちについてはまだ調べていませんが、調べ直せばおもしろい結果になりそうですね」
それは明らかに須磨海水浴場で起こった青鳥という女性の事例だった。やはり、中村たちよりも先に市役所でその話を聞いていたのは榊原だったらしい。
「ちなみに、この一件はすでに和歌山県警にも伝えてあります。向こうもすでに再捜査の構えを見せていますので、私が何もしなくてもいずれあなたに捜査の手が及ぶでしょう。何にせよ、被害者が隠していたとはいえコンタクトの存在を見過ごしたのは致命的でしたね。まぁ、そんなわけで……これでもまだあなたはデートを続けるつもりですか?」
斑鳩は俯きながら必死に歯を食いしばっていた。一方、香奈は明らかに斑鳩から瑞穂の方へと距離を取っている。あれだけいい雰囲気だったカップルを一瞬にして引き裂いてしまった榊原の所業に、中村は驚くやら呆れるやら何とも言えない気持ちになった。
「……それで?」
と、不意に斑鳩はそんな言葉を発した。その顔が心なしか引きつっている。
「それで、俺をどうするつもりだよ?」
「できれば、このまま一緒に警察に出頭してもらいたいのですがね。この段階で自首すれば少しは刑が軽くなるとは思いますが」
「……あぁ、そうかよっ!」
次の瞬間だった。斑鳩は不意に香奈の方を向くと、鬼のような形相でその手を掴もうとした。どうやら彼女を人質に取るつもりらしい。香奈の顔色が変わった。
「いやっ!」
香奈が叫ぶ。が、斑鳩が彼女を捕まえる寸前、瑞穂が香奈の手を掴んでそのまま海洋博物館の方へ逃げ出した。反射的にそれを追おうとする斑鳩だったが、同時に背後で榊原も斑鳩を取り押さえようと動き出す。香奈を人質にする事に失敗した斑鳩は恥も外聞も捨てて叫んだ。
「畜生! こんなところで捕まってたまるか!」
直後、斑鳩は踵を返すと榊原を振り切るようにその場から逃亡を図った。榊原が即座に斑鳩の後を追う。が、よりによって斑鳩が逃げた先は中村たちが隠れている方だった。
「こっち来ますよ!」
「ええい、くそっ」
こうなったら隠れているわけにはいかない。斑鳩が自分たちの隠れている近くまで来た瞬間、中村と三条は同時に飛び出して斑鳩に飛びかかった。
「なっ」
地面に押し倒された斑鳩が絶句する。咄嗟に抵抗しようとするが、三条がその前に斑鳩の手を押さえつける。
「警察だ! これ以上暴れるなら公務執行妨害で逮捕するぞ!」
「……くそったれ!」
斑鳩はそう叫ぶと、そのままガクリとうなだれた。ホッとして顔を見合わせる中村と三条だったが、ふと視線を感じてそちらを見る。
そこには、いきなりの二人の登場に、さすがに呆れた表情をしている榊原の姿があった。
「……いやはや、さすがにこれは私にとっても予想外ですね。中村警部に三条警部補、何で京都府警のお二人がこんな場所にいるんですか?」
その言葉に、二人は複雑そうな顔をして再度顔を見合わせるしかなかったのだった……。
「正直、我々としてもまさか榊原さんが神戸に来ているとは思いませんでしたよ」
あれから一時間後、兵庫県警本部の前で、中村たちは榊原と瑞穂を前にそんな風に言っていた。
「これも依頼でしてね。まぁ、今回は早期解決できてよかったです」
「本当に早かったです。依頼を受けたのって確か三日前でしたよね」
「運が良かっただけだ。今回は犯人側もあまり手の込んだトリックを仕込んでいなかったのが幸いした」
榊原の言葉に、瑞穂が呆れたような表情を浮かべる。瑞穂が大学生になってもこの二人の関係性に変化はないようだった。
「しかし、そうなるとこっちはどうやら空振りのようですね。さっき県警に許可をもらって斑鳩の話を聞いてきましたけど、写真の男の事は知らないって言っていましたし」
三条はそう言いながら深いため息をつく。
あの後、斑鳩は榊原の通報で駆けつけた兵庫県警によって逮捕され、五年前の和歌山での津倉妃菜殺害、三年前の須磨での青鳥真美子殺害について全面自供した。榊原に片っ端から悪事を暴かれてほとんどやけくそになっているらしく、県警の尋問にも案外素直に答えているらしい。
それによると、動機は二件ともよくありがちな男女関係のトラブルを発端とするもので、榊原の推理通り被害者に酒を飲ませて泥酔させたのち、アリバイのある時間を見計らって海の水を汲んだ洗面器に顔を押し付ける事で殺害。その後水着に着替えさせてから海に投棄するという手法だった。だが津倉がコンタクトである事を知らず、それゆえに遺体からコンタクトを外す事を失念していた事が、文字通りの致命傷になったのだった。今までの犯行の推移から見るに元々女性との間にトラブルを招きやすい性格をしているらしく、このまま何もしなかった場合香奈も被害者の一人になっていた可能性は否定できないというのが県警の見解だった。
一方、斑鳩の魔の手から辛くも逃れた形になる香奈も警察の事情聴取を受けているところだ。瑞穂に何度も礼を言っていた彼女だが、瑞穂は「すぐ来て香奈についていてほしい」とわざわざ歌美に連絡を取り、彼女に直接礼を言うようにと答えていた。まもなく歌美も県警本部にやってくるだろう。ひとまず、こちらの一件は片付いた形だった。
そんな中、取調室で中村は県警に許可を取って斑鳩に例の写真を見せたのだが、彼の答えは「見た事もない奴だ」という事だった。嘘をついている様子もなく、こちらの捜査は振出しに戻っていた。
「こうなると、この男が監視員かどうかという点から怪しくなってきますね」
「あぁ。だが、観光客となると探すのが厄介だ。私は監視員の可能性が高いと踏んでいたんだが、当てが外れたな……」
中村もため息をつく。それを見て、榊原と瑞穂は顔を見合わせていた。
「あの、ところでそっちは何の事件なんですか? 京都府警のお二人が兵庫にいるなんて、こっちもびっくりです。見たところ、随分苦戦しているみたいですけど」
瑞穂が興味津々という風に尋ねる。中村は一瞬話すべきかどうか迷ったが、この際日本有数の名探偵と呼ばれるこの男に協力を仰ぐのもやむを得ないと判断していた。
「榊原さんは数日前に東京の湯島で見つかった白骨死体の事件はご存知ですか?」
「湯島の白骨……あぁ、あの事件ですか。しかし、あれは警視庁の管轄では?」
どうやら、榊原は事件の事をちゃんと知っていたようである。中村は覚悟を決めると、思い切って今までの事件の流れ……警視庁、京都府警、大阪府警による捜査状況を榊原に説明した。榊原は黙ってそれを聞いていたが、話が終わると小さく呟いた。
「なるほど……そういう事でしたか」
「依頼を解決したばかりのところで申し訳ありませんが、これも何かの縁です。少しでもいいので、アドバイスを頂けませんかね? 正直、手詰まりになりつつありますので」
中村の言葉に、榊原は少し考え込んでいたが、やがて小さく頷いた。
「いいでしょう。私としても、ここまで聞いて引き下がるような事はできません。いつも通り、アドバイザーとしてなら協力しましょう」
「ありがとうございます。榊原さんがいれば百人力です」
中村はそう言って頭を下げた。
「これも仕事ですから。早速ですが、問題の写真というのを見せてもらえますか?」
「これです」
中村が写真を差し出すと、榊原はジッとその写真を見やった。
「見ての通り、海水浴に来たとしか思えない写真なんです。彼女が大学に入ってから海水浴に来たのは三年前に須磨海水浴場を訪れた一回きり。ですから、ここにその男のヒントがあると思ったんですが……」
「しかし、この男は三年前に須磨海水浴場にはいなかった。そういう事ですね」
そう言いながら榊原はしばらく写真を見つめ続けていたが、やがてポツリと言葉を漏らした。
「妙だな……」
「何ですか?」
「いえ、ここなんですがね。何か写っているように見えるんですよ」
榊原が指差したのは、何でもないバックの海の辺りだった。靄がかかっているのか少し霞んで見えるが、その奥の方に確かにチラリと何か写っているように見えるのである。
「言われてみれば……何ですかね、これ。霞んでよく見えませんが」
「写真解析できませんか?」
「府警本部に戻ればできるとは思いますが……」
「じゃあ、戻りましょう。お付き合いしますよ」
榊原は事もなげにそう言った。
「いいんですか?」
「以前言ったでしょう。依頼を一度受けた以上、どこまでも徹底的に掘り下げますよ。構わないね、瑞穂ちゃん」
「もちろんです! 私は先生の助手ですから」
そこまで言われたら断る理由はない。
「わかりました。じゃあ、このまま京都へ戻りましょう」
こうして、新たに強力な助っ人を得た中村たちは、急いで京都へ戻る事になったのだった。
「榊原さん、ですって?」
それから一時間後、東京・本富士署の捜査本部で、新庄は電話の受話器片手に驚き呆れた声を上げていた。何事かと捜査本部の面々がそちらを向く。
「はぁ、神戸で……それで協力してもらう事になったと……いえ、こちらとしても大助かりではありますが、しかしあの人は本当に予想外の所に出てきますね。はい、わかりました。じゃあこっちもそのつもりで動きます。では」
そう言うと、新庄は受話器を下ろして大きく息を吐いた。竹村が心配そうに近づく。
「どうしたんだ?」
「京都府警からだ。何でも、捜査の過程で急遽榊原さんに協力してもらう事になったという事だ。神戸で偶然別件調査中の榊原さんとバッティングして、そのままなし崩し的に協力してもらう事になったらしい」
「な、何で神戸なんかにいるんだ……」
この捜査本部の人間の中でも、元捜査一課最強の捜査班のブレーンで、今でも名探偵の異名で呼ばれる榊原の名前を知らぬ者はいない。というより、警察でも歯が立たない難事件があった場合は今でもアドバイザーとして協力を求める事があるくらいだ。とはいえ、それは基本的に最終手段であり、まさかこの段階でよりによって京都府警のアドバイザーとして介入してくるなど、新庄にとっても完全に予想外であった。
「こりゃ、俺らもうかうかしてられないな」
「あぁ。それでだな……こうなってくるとこっちとしても府警に一人くらい捜査員を派遣した方がいいんじゃないかっていう話になってな。榊原さんが介入した以上、そっちの方が捜査もスムーズに進むだろうという事なんだが……竹村、すまないがちょっと京都に行ってくれないか?」
「は? 俺が?」
いきなりの話に竹村が珍しい事に絶句する。
「頼む。私はここを離れられないし、杉山君には榊原さんの相手はあまりにも荷が重すぎる。お前ぐらいしか思いつかないんだが……」
「いや、ちょっと待てよ」
竹村は慌てて周囲を見渡すが、周りの刑事たちは素知らぬ風に急に自分の仕事をやり始める。もう完全に「お前が行け」という空気になりつつあった。
「……新庄、恨むぞ」
「捜査が終わったら酒くらいはおごってやる。よろしく頼む」
そう言われて、竹村は盛大にため息をついたのだった。