暗闇
「セオ様~」
パチッ
「う、おぉ……リド……おはよ……」
目を開けると超至近距離にリドがいた
「はぁ、ずっと読みふけって……こんなもの、今更読んでどうにかなるんですか??」
大陸のことや魔法のことが書いてある本を手に取ってこちらを見てきた
「あ、あぁ、基礎を固めていて無駄なことはないからな」
「勉強熱心なのは変わらないですね」
ふっと笑って本を元の場所に飛ばした
リドが二回パンパンッと手を鳴らすと山積みになっていた本が元あるべき場所に戻っていく
「すっご……」
「セオ様、片付けはちゃんとしてくださいね」
「う、うん」
やり方知らなかったし……便利だなぁ……
扉の方へ向かって行ったリドは振り返りざまに「ご飯が出来ております、食堂に来てください」
と言って出ていった
閉まった扉を見つめてため息をつく
「場所どこかわかんないだろ……」
まあここにいてもどう使用もない、廊下に出ればメイドのひとりやふたりいるだろう
そう言えば前は俺が呼ばれる側で呼んでも来る人なんて……
ドクッ
「あれ……俺の、名前ってなんだっけ……??」
昔の、名前ってなんだっけ、もう呼ぶことも呼ばれることもない、あの名前
激しい頭痛がする、霧がかかっていくような、心臓が掴まれるような
「ぁ……!!」
おもわず心臓の部分を強く抑えて座り込んでしまう
「おもい、出せない」
俺、なんでここに来たんだっけ、
ゲームをしてて、ひかれて……??え??なんか、おかしい……?
「……セオ」
俺の、名前はセオだった
「何悩んでたんだ……俺は……俺だよね」
えーっと、あ、いた
「ごめんなさい、食堂まで連れていってもらえるかな?」
「は、はい!!」
廊下を歩いていて、思い出したことがある
昔、この廊下の角をいくつか曲がると開かずの扉があった
「やっぱりここでいいや、ごめんね、ありがとう」
メイドが戸惑っていたが、思い立っては動かないではいられない、
まずは"冒険のために必要な物"を揃えなくては
「ここを、左に……」
「右、だっけ……」
だいぶ時間が経っただろう、目の前には重々しい、闇に溶けているような扉があった
「はいるかぁ……!」
ゲーマー魂がうずくってもんだ!
「ひらけーごま~……」
キイィィィィィィィ
「うっわ真っ暗……」
「ライト~とか言ったら光つくかなあはは…… うわっ!」
つ、ついた
「便利すぎか、もう驚かないぞ!!」
奥まではだいぶ通路になっているらしかった
「アクセル」
足に加速の魔法をかける
「おぉ~進む進む」
ローラースケート気分で最奥まで行く
洞窟みたいだけど蜘蛛の巣とか張ってないし生き物の気配もしない
砂とかもないし……どちらかと言うとちょー清潔な快適な空間って感じ
奥に行くにつれて寒くなっていくようだ
「寒い……」
ライトって言っても光だけだから暖かくはないし……
「お、あそこなんか光ってる!」
罠とかなんもなくてダンジョンって感じがしなかったけど(ダンジョンじゃない)ようやく見つけた!!
角から光が漏れていた
「何があるのかな……ぁっ!?!?ぶへぇッ!」
気付いたら床とキスをしていた
鼻もげるかと思った!!!
「氷……?床が凍ってる……」
「そりゃ寒いわ……」
鼻をさすりながら慎重に立ち上がる
あー、ここからが本番か
「ファイア」
手のひらを氷に向けて唱える
ボワッ
「あちっ」
氷に当たったはいいものの全然湯気も何も立たない
「あーこれはいわゆる解けない氷ってやつですね」
歩くか
ツルッ
「はぁっ!?なに!デバフ付きの氷とか……通れないし!!」
這って進むにも結局は転倒しちゃうし……
そう、いえば
「魔剣を使う時は武器に魔力を流し込むことで浮かばせることが出来る、けど、人間は……やっぱ無理かなぁ」
流すっつーかもう流れてるし
「んんんんん……っ」
靴底に魔力を集める
少し浮けば……いい、から……
「んんんんっ!!」
いまなら!