LOST
遅れましたっ!
セオは本を机の上に戻し、国王である父のもとへ向かうことにした
扉を開けて赤いカーペットの上を歩きながらふと考える
来たばかりのころに情報源として読んだこの国のことが書かれた本には確かフェレブロウというのは五大王国の名前だったはずだ。
「まさか、王都だったなんてな…」
確かに国が五つありながら頂点となるものがなくてはダメだろう。
この世界にも戦争はあるのだろうか
「はぁ…」
「ため息をついては幸せが逃げてしまいますよ?」
もう驚かないと思いながらも…少々ジトっとした目になってしまうのはしょうがない…振り返ると口元に手を添えてふふふ、と笑っていた
何なんだ、どこまで一緒にいるつもりなんだ…
そんな俺の思考を読み取ったのか
「どこまでも一緒ですよ?セオ様」
とキラキラ笑顔付きで言われた
「はぁ、まあもういいや、リド、王様のところに連れて行ってくれるか?」
あきれ半分慣れ半分といった感じで手をひらひらしていった
「任されました」
こちらですと案内してくれるリオの背中を追いかけていると、そういえば、と思い出した
学校なら年齢制限あるんじゃね!
中学校?高校?小学校!?
俺は入れないんじゃね!
そういえば俺何歳!?
白目になりそうになりながらどうしようどうしようと息が荒くなる
「うわっ!」
下を向いていたからか目の前でリドが立ち止まっているのに気づかずに盛大に突っ込んでしまった
「ご、ごめんリド」
「大丈夫ですけど、どうしたんです?さっきから何を聞いても反応がありませんでしたけど」
リドの目を見ると本当に心配してくれている目をしていた
「あーいや、俺…何歳だったかなって、思って」
「そうですか、そんな、まさかご自分の記憶にまでLOSTの影響が及んでいたなんて…」
リドに自分の年齢を聞いたら最初ははぁっ!?と素っ頓狂な叫びをあげられたが
その後数秒間口をあんぐりと大きく開けたまま静止したかと思うと急に思案顔になって
「セオ様の、年齢は15歳ですよ」と言って黙ってしまったのだ
つまり九歳の時に消息不明になったのか
15歳ってことはあっちの世界での中三とかそこらか
どうにかリドに実はここにいなかった六年間の記憶があまりないんだというとリドはそうですか…といったのだ。
「そのLOSTっていうのはなんなんだ?」
「LOST、というのは、ある日突然今までの記憶が抜け落ちることを言います」
セオ様は部分的に、のようですけど
とリドは付け足した。
「LOSTはなる人自体が少なくて、原因があまりわかってないんです。ただなった人全員が記憶をなくしているってことだけは漠然とわかっていて、…大体は原因がはっきりわかっているんですけど、セオ様は…」
リドはそこで顔を少し背けて下唇をかんだ
「どう、したんだ?リド?」
「やはりっ、あのときの…」
「リド?なんて言った…」
「…っ、実は、セオ様がいなくなられて、六年もたって、もういなかったことにしようと国王様がお言いになられて、でも、あきらめきれなくて…っ、ずっと探していたんです、そしたらあの日、丘の上の木に突然光が降り注いで、何事かと見に行ったら、そこにセオ様が眠っていらっしゃって…」
「そうだったのか…」
俺としても信じられないな、光が降り注いだ先に俺が…って、あぁ、そうか、そうだよな
俺が助けた黒猫…もといシーナは天界の者なんだもんな、
まぁ俺が来た時のこともよく分かった、年齢もな?
LOSTって呼ばれてるやつも簡単に言っちゃえば記憶喪失だろ?
実際に細かいところはセオ様の記憶の中からもわからないことだらけだし、逆に利用させてもらおう
目の前の意気消沈してしまっているリドの肩をポン、と軽くたたいて俺は国王のいる重い木の扉を開けた




