危機
みんなで楽しくご飯を食べて、おしゃべりして、今までどこに行っていたの、とかその服装は?
とか聞かれ、どんどん相手の目がすわってきた。
そう。今俺は問いただされている。
だがサタンの口ぶりからするに魔物こそ当たり前、魔界の魔王だなんて敵であること以外の何者でもない。
しかもそれが自分の城の一室から出てきて息子と契約しちゃいましたとか聞いた日にはぶっ倒れちゃうかもしれない。
だがそれはワンちゃん話さなくていけるにしろ魔界に連れていかれた理由、天界に連れていかれた理由、そしてこの服。
無理である。完全に詰んでいるのだ。
「セオ様?おっしゃってくれるんですよね?」
リドからは言葉と、目から発せられる無言の威圧がかけられる。
「…三日間、何も食べないわけにはいかなかったからモンスター倒したらドロップしたんだよ」
…くるしい!!!!!!
いくらなんでもこれは苦しいぜ俺!
しかし頭を抱えるわけにはいかないのでそのまま笑顔を張りつける
「そうですか、ここら辺にはモンスターが出ないはずですが最近は不安定ですからまた出始めたのかもしれませんね、ご無事でよかったです。」
また黒い笑顔を張りつけられているのかと思ってちらっとリドの顔を見上げるがその顔はいたって普通だった
えええええええ通じちゃったあああああ
「…」
安心したやら驚くやらで少し眉をひそめて変な顔をしてしまった
そしてそれがいけなかった。
「…どうしましたかセオ様、やはりモンスターのことが気になりますか?近年この辺り…いや、世界が不安定なのはわかっていますよね?町の中や農村のもとへモンスターが現れるようになったのは最近ということではないわけですし」
リドは眉をひそめた俺に何を思ったのかそういってきた
……いやいやいやいや、なんのことおおおおおお!!!
モンスターが人を襲うのは当たり前のことでそれが理由でみんな敵対してるんじゃなかったの!?
人を襲わないモンスターなんてモンスターじゃないよ!動物だよ!アニマル!
「そう、だな」
俺にはこういうことしかできなかった。
何秒かの間の後、俺が立ち上がるとそれぞれが解散して行った。
「はぁ、この世界のことそういえば何も知らないんだなぁ」
セオは自分のベッドに寝転がり、白い天井を見つめた。
大陸とか大まかな街の名前とかそういうのは少し前に本で読んだので知っている。
魔界や天界の存在も。だがそれだけだ。存在は知っていてもその立ち位置を知らないのであれば知らないのと同じである。
自分一人のためにこんなにスペースが必要かと問いたくなるような部屋の自分のベッドはやけに小さく感じる。部屋にはたくさん服が入っているクローゼット、机と椅子、ベッド、そして多くの本。
机の上には地図にインク、羽ペン、そして一冊の本が置いてあった。
その本は途中のページが半分くらい破れていたのか閉じた隙間から少しはみ出していた
「よいしょっ…」
セオは足で反動をつけて起き上がった
本の表紙は革…動物の皮か、少しくらい赤と茶色、白色、にベルトがついているアンティーク調のものだった。
「なんだ、これ」
そっと開いてみると俺じゃない『セオ』の筆跡のようなものがあった。
書かれていたのはあの父親、横暴な王様への皮肉…ではなく、
なんで?どうして?僕がこんなことされなきゃいけないの?
もっと強くならないとダメなんだ
という自分を責める言葉とその日にあった出来事が書かれていた。
「日記か」
ところが、途中から悪魔、天界、モンスターという言葉が出てくるようになった
この世界はモンスターと共存することはできない
平和に見えていたのは僕がかごの中で外を見ようとしていなかったからだ
魔界や天界の間にあるこの世界を助け―は―をするしか―
そこまで書いた後にぐちゃぐちゃと線を黒く塗りつぶしてしまっていた。
裏にすかして見ても肝心なところは解読できなかった
『フェレブロウ・王都・剣魔育成学校』
大きくそう書かれた下に二十線が力強く引かれて
破られていた
破り切れなかったのか、このとき何があったのか
まぁ、この世界を知るためのきっかけを『セオ』様がくれたってことで、ここに行ってみるか




