帰宅
おそくなりましたー!
思い切り叫んでセオは左手にある壁を背にそこにいる人物を凝視した
「…なんですか、人を突然出てきた怪物みたいに」
その通りでございます
「あ、えと、あのリド?」
「なんですか?」
にっこりとこちらに笑いかける…否、これは笑っていない、これは…
「ごめん、な?急に、いなk」
「少しでも自覚があるようでよかったです。これで何事もありませんでしたみたいな顔で戻ってこられても対応に困るところでしたよ今日はお風呂もお食事も寝るときも、ずっと、一緒ですよ??」
少し、いや滅茶苦茶怒ってるってことで間違いなさそうだな。うん。
「だ、大丈夫だ全部ひとりでできるぞ?」
「一人でできる??」
そう問い返したリドはゆっくりと歩いてきて壁に背を預けている俺の耳のすぐ横に手をついた
思わずヒッと声を出してしまった
下を向いているリドは表情を見なくても怒気のオーラが漂ってくるようだった。
そしてふふふ、と静かに笑ったかと思うとばッと顔を上げた
「ま、真顔っ…」
「勝手に三日間食事を絶たれ、帰ってきたかと思えばお風呂で消失、何日も帰ってこないかと思えば服装がガラッと変わっているし…どういうことです?これでひとりでできる?やめてください笑えません」
これを真顔で素早く言われ、ぐぅのねも出なかった
「あなたを一人にしたらどうなるかわかりませんからね、アリス様もセレナ様も大変心配されておいででしたよ?これ以上どうしろと。」
リドは何も言えずに右斜め下を見続けているセオを少しの間みつめ、はぁ、とため息をついた。
そして少し笑顔を作って言った。
「…ちょうど、御飯ですよ」
先だって歩き始め、数歩歩いてくるりと振り返る。
笑顔を張りつけたまま。
「もちろん話は、あとで、聞きますからね??」
セオは何と言おうかと頭を回転させながら歩き始めた
考えながら歩ていたために周りに気づくのが遅れた
リドが席を引いてくれたのでありがとう、と一言言って腰を下ろした。
さて、何と言おうか。お腹すいたな、思えば久しぶりの御飯だな。そんなことを考えていた時だった
「セオ!」
「セオ兄様!!」
急な大きい声にセオは思わず体をびくっとさせた。
「び、びっくりした、心臓止まるかと思った」
小さくだったが、口から出たのもそんな言葉だった
入り口には扉を開けているリドと少しやつれたかな、って感じのセレナ様,そして…
「兄様っ兄さま、にいさま…」
目に大粒の涙を浮かべてかけてくるアリスの姿があった
「どこに、どこにいってたんですかぁっ、また、あの時みたいにいなくなっちゃったのかもって、心配して…っ」
俺の服をつかんで離さないアリスの手を取って目線を同じにする
こんなかわいい妹ができたのは初めてだし、ホントのところ俺の妹じゃない。だが、この体は今や俺なのだ。
泣きぐずるアリスのおでこに自分のおでこをこつんとあてる
「…ごめんな、アリス。もう勝手にいなくなったりしないから」
アリスはぎゅっと閉じていたサファイアの瞳を開け、ほんと?と言ってくる。
「ああ、ホントだ。」
アリスをなだめていると目の前に人の気配がした。
見上げたらそこにはセレナ様がいた
セレナ様は少し涙を浮かべたようにして笑った、
「みんなお腹がすいたでしょう、御飯にしましょうか」




