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灼熱無双のフレイムハート~創世の獣と聖樹の物語~  作者: 秋津呉羽
四章 リンク対抗団体戦~蒼穹への翼、覚醒のフレイムハート~
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灼熱無双のフレイムハート

 最初に言うことを聞かなくなったのは足だった。


「……ッ!?」


 ドミニクの斬撃をバックステップで回避し、地面に着地すると同時に全力で前に出ようとした矢先、何の前触れもなく膝が崩れ落ちたのである。

 慌てて建て直し、何とか事なきを得たラルフだったが……さすがにヒヤッとした。


『疲労が限界に来たか、ラルフ?』

「ぐ……まだだ……まだだッ!!」


 今のラルフは戦闘の高揚により、肉体よりも精神の方が先行している状態にある。

 肉体が発する疲労や痛みなどの感覚を、無意識のうちに切り離して動き続けているような状態、といえばわかりやすいか。

 だが……それは疲れないということとイコールではない。

 着実に疲労は蓄積し、そして、先ほどのように物理的な限界として現れる。

 絶え間なく振り続ける矢を回避するために、間断なく動き続けているが……恐らく、今、立ち止まれば膝が笑えるぐらい震えていることが分かることだろう。


「くそ……ッ!」


 直撃しそうになる矢をスカーレットスティールで防御するが……その先端が真紅の燐光を破って微かに皮膚を傷つける。

 体力・気力もまたかなり消耗しているのが分かる。

 まるで、砂時計の砂が落ちるのを見るように――自身の限界が着実に近づいてくるのが分かる。


「相手はもう限界だ! 一気に攻め潰せ!!」


 対するドミニク達は、クレアの<祈光>の力によってスタミナも精神力も常時回復し続けている――全力で動き回ろうとも、全く疲れないという反則のような状態だ。

 ドミニクはラルフが限界に近づいているということに気が付いたのだろう……酷薄な笑みを浮かべて更に攻める手を強める。


「いい加減に倒れろ、劣等種がッ!!」


 <ヴァニティー>の斬撃を回避するために足に力を入れるが、まるで、砂浜の上を歩いているように力が入らない。


「がぁッ!?」


 拳を合わせて何とか防いだが、完全に体ごと持っていかれた。背中から地面に叩き付けられ、肺の中の空気が丸ごと口から出てゆく。

 地面を転がった勢いを利用して立ち上がろうとした瞬間……そのタイミングを見計らったかのように、ドミニクが<ヴァニティー>を真上から叩きつけてくる。


「つッ!!」


 脳天から股間まで一刀両断にする軌跡で振り抜かれた<ヴァニティー>を、頭上に拳を交差させるようにして受け止める……が、膝立ち状態のラルフは圧倒的に不利な体勢であることに変わりない。

 渾身の力が込められた<ヴァニティー>に少しずつ押し込まれてゆく。


「くくくく……誉めてやろう、劣等種の分際でよくここまで我らの攻撃に耐えた。だが、所詮は劣等種の寄せ集めよ! あの出来損ないの薄汚れた黒翼と、我ら選ばれし優良民族がぶつかれば、こうなることは確定しているんだよッ!!」


 ラルフとの戦いはもう決着がついたと判断したのだろう……遠距離神装の弾幕が止む。

 だが、それは何の解決にもなっていない。

 肩から斜めに切り抜くつもりなのだろう。押し込まれてゆく<ヴァニティー>の刃がとうとうラルフの肩に食い込み、鮮血がラルフを紅に濡らし始める。

 だが。


「……けんな」


 それでも、この男の闘志は微塵も揺るがない。


「ふざ……けんなッ!」


 呼吸は乱れに乱れ、酸素を欲するように肺が悲鳴を上げる。

 発汗するほどの水分は既に体内になく、全身に熱がこもっているせいか意識が朦朧とする。

 致命打をもらってはいないものの、それでも猛攻に晒された全身は傷だらけで、制服は血の色で赤く染まっている。

 まさに満身創痍。もはや、戦闘継続は絶望的ですらある。

 なのに――ゆっくりとラルフの両腕が<ヴァニティー>が押し返し始める。


「ティアが、どんな気持ちでアンタ達の言葉に晒されたのか、考えたことあるのかよ!」

「な、なに……!?」


 震える足が地面を踏みしめ、振り下ろされる暴力に抗い始める。


「頼れる人は誰もいないこの地で、たった一人で取り残される気持ちが! 石を投げられる気持ちが! 一方的な悪意を投げつけられる気持ちがッ!」


 いつだって強気な態度を崩さないのは、虚勢の裏返しで。

 一人で何でも抱え込もうとするのは、どうしようもない孤独に抗うためで。

 涙をこらえるのは、崩れ落ちてしまいそうな自分を必死に鼓舞するためで。


「どれだけティアが傷ついているのか、アンタに分かるのかよッ!!」


 無責任な悪意に晒されて、悲鳴を上げることもできず、助けを求めることもできず、闇の中でただ一人泣くことしかできない女の子がいる。

 ならば、今、この場でラルフが全身全霊の力で叫ぼう。

 世界中の悪意が一斉に牙を剥くならば、歯を食いしばって、その場で踏みとどまって、両腕を広げて護ってみせよう。


「謝れ! ティアに謝れぇぇぇぇぇぇえッ!!」


 そして……ラルフは<ヴァニティー>を弾き返すと同時に、油断しきっていたドミニクの懐に一瞬でもぐりこんだ。


「ば、馬鹿な――」

「だぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁッ!!」


 全身の活力を振り絞って放たれた拳打が、見事にドミニクの顔面に突き刺さる。

 ドミニクの巨体が宙を舞い、盛大に吹っ飛ぶ――が、それと入れ違いに飛翔した神装の矢が、次々とラルフの体に突き刺さった。


「が……はっ……」

『ラルフ!』

「ぐ、殺せ……あの劣等種を殺せッ!!」


 <祈光>の前では、先ほどのクリーンヒットですら意味を成さない……事実、ドミニクにダメージが入った様子は見られない。

 だが、それでも顔面に拳を受けたという事実が、耐え難い屈辱なのだろう。

 ドミニクが顔面を赤くして咆哮する。


 ――く……そぉ……ま、だ。


 一直線に飛んでくる矢を視界が捉えるものの、もはや体には動くだけの活力は残っていない。

 鋭い矢じりが体に突き刺さるのを、歯を食いしばってラルフが睨み据えた……その時だった。

 


 歌が聞こえた。



「え……?」


 この場には不釣り合いなほどに清廉な歌声が第八フィールドに響き渡る。

 数多の怒号と咆哮の中にあっても、その歌声は不思議と全ての者の耳に届き、フィールド全てに浸透してゆく。

 そして、それと同時に目の前に展開した障壁がラルフに殺到した矢を全て弾き返した。


『ティアの声……』

「ああ、間違いない。ティアの声だ。それに、障壁も……」


 一体なぜ――ラルフが抱いた疑問に対する答えは、形となって目の前に現れる。

 フィールドを覆っていた<祈光>の光が、消えていくのだ。

 煌々と灯っていた光は、少しずつその勢いを弱め……そして、陽炎のような輝きを残すのみになった。


「なんだ! 何事だ!?」


 戸惑っているのはラルフだけではなく、ドミニク達も混乱のさなかにあるようだった。


「ラルフ―――――ッ!!」


 背後、双方の間にあった困惑の間を縫うようにして、普段の声からは想像がつかないほどの大声でチェリルが叫ぶ。


「ティアとボクがクレア先輩の『再生』を抑えてる! ティアの歌う『蒼穹への翼』は君の神装に対して強い効果を及ぼすはずだ――!!」


 チェリルの言葉を聞いて、一瞬だけ背後へと視線を向けたラルフは言葉を失った。

 障壁の向こう側――ティアが目を閉じ、両手を広げて高々と歌を紡いでいる。

 そんなティアの目の前、そこに大きく形を変えた杖状の神装<ラズライト>が虚空に浮かんでいた。


 ――あれは……。


 霊力の流れを視ることができるラルフだからこそ分かる。

 ティアが言葉を紡ぐたびに<ラズライト>の先端に付いた宝珠が輝き、ティアの歌声と……そして、絶え間なく霊力の波動を周囲に拡散してゆく。

 その波動が恐らく、クレアの<祈光>と相殺し合っているのだろう。

 これぞ、ティアとチェリルが特訓の末に生み出したモノ――継続詠唱霊術。

 『歌唱』という行為そのものを『詠唱』へ転化している霊術であり、<ラズライト>を中継することによってその効果を周囲に拡散させている。

 ティアが歌を奏でる限り、広範囲に渡って効果を及ぼし続けるという今までになかった……否、成り立たなかった霊術形態。

 これを可能にしたのが、ティアの神装である<ラズライト>の特殊能力だ。

 ティアの歌の効力を何倍にも増幅し、それを幾重にも重ねて拡散させるという<ラズライト> の能力は、この霊術を特訓し初めて気が付いた能力だ。

 神装は魂より発現する――ティア本人も気が付いていなかった才能に、彼女の持つ<ラズライト>だけは誰よりも早く気が付いていたと、そう言うことなのだろう。


「だから、あんな奴らやっつけちゃえ、ラルフ―――ッ!!」

「どういう……こと……」

『む? これは……』


 そのとき、頭上にいたアルティアが小さく呟いた。


『内的霊力が励起されている? そうか、これが……歌の効力か』

「なんだよ……それ……」

『それらしく言うなら、魂に活力が注ぎ込まれた、という感じだ。ともかくだ、ラルフ……この歌は神和性の低い神装者にとって特効薬ともいえる力を持っているようだ』


 神装は魂に密接な関係を持つ武装であり力だ。

 だからこそ――魂が活力を得るということは、神装もまたその力を増すことに他ならない。


『言ってしまえば、この歌は……神装そのものの強化、そして、魂と神装との繋がりである神和性を底上げする効力を持っている』

「つまり、ぐ……どうなるんだ……?」


 <祈光>が無くなり混乱するセイクリッドリッターだが、それでも散発的な攻撃は降ってくる。

 それを障壁が防いでくれてる間に、呼気を整えながらラルフが尋ね返す。


『この歌が、ラルフと神装<フレイムハート>との間に入って、その繋がりを強めてくれるということだ。これはチャンスだ、ラルフ。この歌が響く限り、<フレイムハート>は本来に限りなく近い力を使える』


 神和性が致命的に低いラルフは、<フレイムハート>本来の力を引き出せていない。

 だが、ティアの歌があれば力を取り戻すことができると、アルティアはそう言っているのだ。

 ラルフからは見えないが……頭の上に乗っているアルティアが、初めて会った時と同じように、勢いよく炎を纏う。


『これから<フレイムハート>を覚醒させる。体力も少ない――短期決戦で一気に決着をつけろ』

「わか……った。任せろ……!」


 ラルフは返答すると、眼前を睨み据える。

 そして――<フレイムハート>本来の力が、覚醒する。



『勇敢なる心に猛き炎の祝福を――行くぞ! エンハンスバーニングッ!!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」



 アルティアの言葉に、覚醒した<フレイムハート>が全力駆動を開始する。

 ラルフの手の甲に浮かび上がるハートの紋様が一際強く輝き、拳を覆っていた炎が腕を覆いつくし、肩にまで届くほど驚異的な勢いで燃え盛る。

 まるで、ラルフが炎そのものになったかのように火の粉が盛大に舞い散り、周囲を紅一色に染め上げてゆく。

 ラルフは大きく息を吸い、全身の調子を確かめるように拳を握る。

 気が付けば、先ほどまで体に突き刺さっていた矢が綺麗さっぱり燃え尽きていた。

 まるで、乾燥した砂が水を吸収するように、ガタが来ていた体の隅々まで活力が行き渡る。

 全能感にも似た力が拳に宿るのを感じながら、ラルフは眼前を睨み付けた。


「なんだ……何が起こっているっ!」


 フィールド内の空気が<フレイムハート>から発せられる気迫に染め上げられる。

 尋常ではない気迫と存在感――それを受けて、今のラルフがどれだけ危険なのか、理屈ではなく直感で理解したのだろう。


「一斉に仕掛けろ! これ以上調子づかせるな!」


 ドミニクの指示を受け、前衛の二人が下がり、後衛が一斉にラルフに矢を射かけてくる。

 雨のように降り注ぐ矢に対し、ラルフは――腕を一振り。

 それだけ……たったそれだけであるにもかかわらず、盾のように展開した灼熱の業火が、目の前の全てを焼き払った。

 チリすら残さず霊力に還元された矢に一瞥もくれることなく、ラルフは体勢をグッと落とすと――全力で地を蹴った。

 足元に収束した力が爆発を起こし、ラルフの体を大きく前方に弾き飛ばす。

 もはやそれは疾走というよりも、飛翔というに相応しい速度。


「う、うわぁぁあ!!」


 裏返った声を上げ、突き出されるトライデントに対し、ラルフは真っ直ぐに突っ込んだ。

 ラルフは燃え盛る手を前に付きだし、そのままトライデントを握りしめると――そのまま捻じ切った。


「神装を破壊した……だと!?」


 ドミニクが悲鳴を上げる。

 魂より発現した神装はそれこそ、最硬度を誇る金属オリハルコンすら超える硬度を有する。

 それを破壊したのだ――その双腕に、宿る力は計り知れない。


「寝てろ!!」


 ラルフの鉄拳が顔面に突き刺さると、その体が、ガラスが割れるような音と共に砕け散る。

 キラキラと虚空を飾るように舞う輝きの中……ラルフがドミニクの方へ振り返った。


「ふざけるなッ! ふざけるなぁぁぁぁッ!!」


 叫びながら振り下ろされる<ヴァニティー>の袈裟切り。

 ラルフはこれを無造作に振り上げた右腕一本で受け止めた。

 ドミニクが押しても引いても、ピクリとも動かない<ヴァニティー>だったが……ラルフの業火を直に受けて、次第にその輪郭を溶かしてゆく。


「馬鹿な……劣等種風情が……我らシルフェリスを……そんな……」


 一体どれ程の熱量が秘められているというのか、<ヴァニティー>の刃が赤熱化し、液状となって地面に落ちてゆく。

 フィールド内にいる誰もがそれを唖然として見つめる中、ラルフは<ヴァニティー>を放り投げると、右手を大きく引き絞る。


『我らが魂に宿りし紅蓮の炎よ!! 極限を超え、今!』

「灼熱の意志の元、全てを焼き尽くす必殺の拳となれッ!」


 右腕に収束する炎がさらにその熱量を上げる。

 紅蓮を通り越して黄金にその色を変えた炎は、ラルフの周囲の空間を歪め、揺らめかせる。

 抵抗するのも馬鹿らしくなるほどに、圧倒的ともいえる力の発現――それを前にして、ドミニクは首を横に振りながら、後ずさりする。

 炎の化身となったラルフを目の前にして、本能が理解したのだろう。

 もはや、抗うことはできないと。



『バァァァァストブレイズッ! インパクトォォォォォォォォォォォォッ!!』

「バァァァァストブレイズッ! インパクトォォォォォォォォォォォォッ!!」



 渾身の力を持って踏み出した左足が、轟音とともに大地に放射状の亀裂を入れる。

 余波の熱量だけで周囲の芝生を焼き尽くす右腕の炎が、ドミニクに向かって放たれた瞬間、フィールド全てが暴力的な光一色に塗りつぶされた。

 鼓膜を激しく叩く爆発音が収まり、光が消え、何とか視界が戻ってきたところで――観衆も含めた全ての人間が凍りついた。

 ラルフを始点とし、まるで巨大な生物が這ったかのように大地が抉られていたのである。

 黄金の炎をまともに受けた大地は赤熱して液状化しており、その威力をこれ以上ないほどに表している。

 直撃を受けたドミニクは言うに及ばず、フィールドの端まで退避していたクレアを含む後衛六名の内、三名がバーストブレイズインパクトの余波に巻き込まれて消滅していた。

 余波だけで人体を消し飛ばす馬鹿げた破壊力……もはや、残った男達も完全に戦意を折られている。

 ラルフはゆっくりと焦げた芝を踏みしめながら、地面に膝を折って祈り続けるクレアの傍まで歩み寄ると、右の拳を突きつけた。

 無言で返答を待っていると、クレアは小さくため息をつくと目を開き、顔を上げた。


「やはり……最も警戒すべきは貴方だったんですね」

「俺は皆のおかげでここに立っています。ティアや、チェリル、ミリアのおかげです」


 ラルフの言葉にクレアは笑った。


「そうですね、私の『祈り』よりも……彼女の歌に込められた『願い』の方が強かったのでしょう」


 クレアは立ち上がると、審判役の教員に向けて右手を上げた。


「これ以上の戦闘継続は無理だと判断しました。私達、セイクリッドリッターは、今ここに、敗北を認めます」


 どこか清々しい表情で、敗北を認める宣言をした。

 その言葉を合図に、メンタルフィールドが解消される。

 周囲にゴロゴロと転がるセイクリッドリッターの面子に一瞬だけ視線をよこしたラルフだったが、最後にクレアに向かって大きく一礼。

 神装を消して、ゆっくりと皆の元へと歩いてゆく。

 ティア、ミリア、チェリルが待っている所に戻ってきたラルフは、小さく吐息をついてニッと笑うと――


「俺達の勝ちだぁぁぁぁぁぁッ!!」


 そう叫んで拳を天に突き上げた。

 ラルフ達の死闘を見ていた観客から大きな歓声が降り注ぎ、万雷の拍手がラルフ達を包み込む。

 そんなラルフに向けて、チェリルとティアが全速力で駆けよってくる。


「やった、やった、やったよ!! ボク達の勝利だー!」

「良かった、勝ったよ……勝ったよぉー! うわぁぁぁぁん!」

「あぁ! 俺達だけの力でやったんだッ!! やったんだ――!」


 感極まったように飛び込んでくるチェリルとティアを何とか受け止め――そのまま後ろに倒れるラルフ。

 地面に転がったまま勝利の歓声を上げる三人を少し遠くで眺めながら、苦笑を浮かべるミリアだったが……そんな彼女の肩に、ポンッとアルティアが留まった。


『行かなくていいのか?』

「私まで歯止めが利かなくなったら、誰がこの場を収めるんですか」

『素直ではないな。たまには羽目を外すことも大切だぞ』

「焼き鳥にしますよ。でもまぁ……」


 アルティアの言葉を聞いて、ミリアはクスッと笑う。


「たまには……良いのかもしれませんね」


 そう言って、ミリアもまたラルフの元へ走り出したのだった……。

 


 陽だまりの冒険者 VS セイクリッドリッター

 ワンサイドゲームと思われた圧倒的な戦力差の元に行われたこの試合。

 ラルフとティアの見事なコンビネーション……そして、チェリルとミリアの絶妙なフォローにより、絶望的と思われた戦力差をひっくり返して、陽だまりの冒険者が見事に勝利をもぎ取った。

 この試合を見ていた者達は、試合後半の圧倒的なラルフの力を見て、彼の神装をこう評した――灼熱無双のフレイムハート、と。


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