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灼熱無双のフレイムハート~創世の獣と聖樹の物語~  作者: 秋津呉羽
三章 基礎実力試験~臆病な天才少女~
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エピローグ

『ぬあー! 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい! 絞りカスみたいなアルティアに、ろくに<フレイムハート>を扱えない馬鹿な使い手のペアなんかに負けるなんてー!!』

『しょうがないねー。なんか、アルティア達以外にも色々いたしねー。再生の力を持つヒューマニスでしょー。継ぎ接ぎの魂を持つマナマリオスでしょー。封印された黒のシルフェリスでしょー。変わり者の周囲には変わり者が集まるんだねー。でも、今回の目的はアルティアと<フレイムハート>の覚醒具合を試すためだったんだから、上出来上出来ー』

『試す価値もなかったし! アルティアは力を失って無様な姿になってるうえに、発現してるのは不滅の真紅だけ。勝利の黄金がないアルティアなんて無視しても大丈夫そうだし!』

『そうだねー。というよりも<フレイムハート>自体、ほとんど稼働してないじゃない。何あれー』

『もともと<フレイムハート>はアルティアが手ずから作製したクラウド・アティアス専用の神装だし。他人が使っても適合しないんでしょ、知らないけど。<フレイムハート>が完全稼働してたら、あんなゴミみたいなクレイゴーレム片手で消し飛ばせるし!』

『コッチも覚醒したばかりなんだから、あのクレイゴーレムを造るので一杯一杯だよー。でも、<フレイムハート>の使い手、なんかおかしいんだよねー。違和感あるねー。そもそも、人間なのかなーあれ。もうちょっと調べてみたい気もするんだよねー』

『そう? もう興味ない。それよりやることたくさんあるし! 絶無結界壊して、リュミエールちゃんの転生体を探して、大型終世獣を目覚めさせる! そして、人間を滅亡させるの!』

『んーでも、今の力じゃ絶無結界破壊は無理そうー。とりあえず、ジャバウォックを目覚めさせるところから始めようかー』

『えー。リュミエールちゃんの転生体を探そうよ!』

『転生体は覚醒の「か」の字もしてないから、今は無理ー。出来ることからコツコツとー』

『はーい。じゃ、行こ!』

『うんー』


――――――――――――――――――――――――――――


 結局、試験を最後まで乗り切ることができたチームはラルフ達だけだった。

 アルティアの推測通り、道中に出現したのは本物の終世獣であり、他のチームのほとんどは、この終世獣にやられてしまったのだ。

 その証拠に、人工ダンジョンのメンタルフィールドを消去すると、内部から様々な小型終世獣が沸いて出てきたそうだ。

 その場にいた教員によって掃討されたが、大騒動になったのは言うまでもない、

 その他にも、ダンジョン最深部で泥巨人――正式名称クレイゴーレムと言うそうだが――が設置されていたり、メンタルフィールドがその部分だけ限定で解除されていたりしたことも、本来は予定にないことだったらしい。

 学院側も全力で調査に乗り出しているのだが、確固とした証拠は未だに得られていない。

 ただ……人工ダンジョンの内部に、終世獣を送り込んだと思われる転送陣が見つかっており、今回の件が人為的な犯行であるということはまず間違いないと言われている。

 しかし、一体誰が何の目的でそのようなことをしたのかは分かっておらず、謎が謎を呼んでいるというのが現状だ。

 もちろん、その後の実技試験は中止、再度やり直しということになった。

 ただ、例外として最後まで突破したラルフのチームだけは、『十分な実力を有している』として再試は実施されなかった。

 そして、実技試験の数日後――

 ラルフとティア、ミリア、アレットというリンクの面子が全員、チェリルのアトリエへ集合していた。

 ここの持ち主であるチェリルは大所帯が自分のアトリエの前に集合しているという事態に、目を点にしている。


「え、えっと……ボクに何か用?」


 その中で、ニコニコと笑みを浮かべたラルフが前に出ると、チェリルの肩をポンッと叩いた。


「それでは、こちらが今回リンクに加入することになったチェリル・ミオ・レインフィールドです!」


 わー、ぱちぱちと全員の拍手に迎えられる中、チェリルは慌てたようにラルフに向き直る。


「どういうことさ、これは!?」

「いや、チェリルはリンクに入ってないし、教室で寂しそうにしてるって聞いたからさ。じゃあ、アレット姉さんのリンクに入ってもらおうかと思って」

「事後承諾か!?」

「嫌だった?」


 ラルフが窺うように聞くと、チェリルは顔を赤くして、ここに集まった面々の顔を眺め……顔をそらすとポツリとつぶやいた。


「別に……嫌じゃ、ないけど……」

「レインフィールドさん、それ言質とられたようなものですからね」

「あ」


 少し呆れたように言うミリアに、チェリルは今気が付いたように口に手を当てる。

 だが、もう遅い。

 ニコニコと笑みを浮かべたアレットが近寄ると、チェリルの小さな手を優しく握った。


「……私はアレット・クロフォード。『陽だまりの冒険者』のリーダーをしてるの。あと少ししたらリンク対抗団体戦もあるし、頼もしいよ。これからよろしくね、チェリルちゃん」

「え、いや、あの」

「私はティア・フローレス。この前の試験、助けてくれてありがとう。私も霊術を使うから、今度、色々と教えてもらえると嬉しいわ」

「あ、うん、それはいいけれど……」

「私の自己紹介は必要ありませんね。同じリンクになったわけですし、教室でも遠慮なく話しかけてきてください」

「うん、ミリアさんありがとう……」


 次々に自己紹介をしてゆく中、ラルフはニヤニヤとチェリルを眺める。

 そして、二人の自己紹介が終わったのを見計らって、ラルフはチェリルに手を差し出す。


「それじゃ、これからよろしくな!」


 チェリルはその手をじっと見つめていたが、小さく嘆息すると、ゆっくりと握った。


「もう……何なのさ」


 ぼやくように言ったチェリルの表情は……照れたような笑顔。

 それは、ずっと一人でいた少女が、初めて友人を得た瞬間であった。


読んでくださりありがとうございました!

これにて三章終了。次はリンクでの対抗戦のお話になります。

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