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灼熱無双のフレイムハート~創世の獣と聖樹の物語~  作者: 秋津呉羽
三章 基礎実力試験~臆病な天才少女~
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筆記試験終了、そして、実技試験に向けて

 そして、瞬く間に日が過ぎ、筆記試験当日。

 つい先ほど、終了を知らせる鐘の音が鳴り、開放感に満ち溢れる生徒達の歓声が聞こえる中……『燐』クラスだけが未だに綱渡りのような緊張感に包まれていた。


「~~♪」


 椅子に座って鋼のように硬くなっているラルフの目の前……教卓でエミリーが鼻歌交じりに答案を採点しているのである。

 筆記試験が終了した際、『燐クラスは二人しかいませんし、この場で採点してしましましょうか』とエミリーが言い出したのである。

 公開処刑はやめて!? と叫びたかったラルフだが、それよりも前に隣のティアが、良いですよ、とサラッと言ってしまったのである。

 眼前、エミリーが羽ペンを動かす音で○か×か分かってしまうのが物凄く嫌だった。

 正直な所、そこそこ手ごたえはあった。

 問題文はしっかりと読めたし、チェリルが張ったヤマはきっちりと当っていたからだ。

 だが……それでも、やはり心臓には良くない。

 裁きを待つ罪人のような心境のラルフは、何気なく隣を見たが……そこには、リラックスしきったティアの姿がある。

 ラルフは、とりあえずその脇腹を人差し指で突くことにした。


「ひゃいんっ!? ちょ、何すんのよ!」

「いや、なんかリラックスしててイラッとしたから、つい」

「つい、じゃないわよ! 変な声が出たでしょうが、このセクハラ魔人!」

「あだ!? 足踏むなよ!」

「うっさい!」


 ギャーギャー言い合いを始めたラルフとティアだったが、その諍いを止めるよう壇上でエミリーが軽く手を叩く。


「はいはい、仲がいいのは分かりましたから、とりあえず先生の話を聞いて下さいね」

「「仲良くないですッ!」」

「そういう所が仲のいい証拠だと思うんだけどな、先生」


 苦笑を浮かべるエミリーはティアの前に行くと、答案用紙をティアの机の上に置いた。


「さすがティアさん。しっかりと勉強をしてきたようですね」

「はい、先生。ありがとうございます」


 ちらりと見えただけなのだが……答案用紙のほぼ九割以上に○が付いていた。

 補講か否かのラルフからすれば恐ろしい正答率である。

 そして……エミリーが笑顔を浮かべたままラルフの方へと歩いてくる。


「はい、ラルフ君」


 そう言ってエミリーは裏返した答案用紙を、そっとラルフの机に置く。

 たかが紙一枚、だが、ラルフの目にはそれが地獄の蓋に見えてしょうがない。

 ゴクリと、ラルフは生唾を飲み込むと神妙な顔で、ゆっくりと答案用紙に手を伸ばし――


「早く見なさいよ、よっと」

「ぎゃぁ!? 何てことしてくれるんだ! 目が潰れるっ!!」

「どれだけ怖がってるのよ……でも、へぇ」


 恐る恐る目を見開いたラルフが目にしたのは――七割に丸が付いた答案用紙だった。

 言葉を失うラルフに、エミリーが優しく微笑みかける。


「十分合格範囲内ですよ。よく頑張りましたね、ラルフ君」


 神から下された福音のような言葉にラルフは両手を握ると……そのまま大きく天へと掲げた。

 まさに、勝利というにふさわしい結果であった。


「や……やった……やったぁぁぁ!! 俺、やったよ、ティア!」

「わ、分かった! 分かったから!」


 ティアの手を両手で握りしめてぶんぶん振り回すラルフだったが、顔を真っ赤にしたティアに振りほどかれてしまった。

 はしゃぐラルフ達を微笑ましく眺めていたエミリーは、再度自分の手を叩く。


「はいはい、筆記試験は終わりましたが、これから実技試験も控えています。ちょっと先生の話を聞いて下さいね」


 エミリーはそう言ってチョークを手に取ると黒板に板書を始める。


「実技試験は事前告知の通り、天然洞窟を利用した人工ダンジョンで行います。この洞窟はメンタルフィールドが展開されていますので、肉体が致命傷を受けることはありませんが……行動不能になった場合、途中退場となってしまいます。気を付けて行動し、無茶はしないでくださいね」


 そう言いながら、エミリーは黒板に『目的』と書く。


「達成目的は指定されたゴールに可能な限り短時間で到着することです。ただ、このダンジョンには様々な罠や仮想終世獣が設置されています。まぁ、そこまで複雑なものではありません。今までの実技の授業で習ったレンジャー技術を駆使して、罠を解除しながら進んでくださいね」

「仮想終世獣って、その……以前実技の授業でやったやつですよね?」


 不安そうなティアの質問に、エミリーは微笑み返す。


「そうです。実物ではありませんが、動きはそのままトレースしてあります。遭遇した場合は、授業でやったように、本物とほぼ同じと思って戦ってください。撃破すれば小さなコインを落としますからそれを忘れずに拾ってくださいね。試験の総合点に加点されますから。ただ……用心深く進めばほぼ全ての終世獣とは戦闘が回避できるようになっています。先ほど言ったように目的はあくまでもゴールへの到着。戦力の自信がないなら少し遠回りしていくのも良いかもしれませんね」

「殲滅あるのみだな!」

「アンタはなんでそんなに単純明快な考えしかできないかなぁ!?」


 再びいがみ合う二人をエミリーは苦笑交じりに見ながら、次の板書を始める。


「明後日から試験を開始しますが、一斉にダンジョンになだれ込むのは容量的に無理なので三日に分けて実施することになります。そして、今日中に貴方達にはやってもらうことがあります。それがパーティーの編成と申請です」


 ラルフが無意識にティアの方を向くと、ティアもラルフの方を見ていた。

 まぁ、目があった瞬間にプイッとそっぽを向かれてしまったが。

 頭の上でアルティアが苦笑している。


「一つのパーティーの最大人数は五名ですが、下限はありません。最悪一人で参加することも可能ですが……メリットはありません。試験内容には、いかに優秀な人材を自分のパーティーに引き入れるか、ということも含まれているわけですね。試験に臨むパーティーを組んだら、学生課に行ってくださいね」


 そこまで言ってエミリーはラルフ達の方へ振り返る。

 その表情は……少しだけ厳しい。


「そして最後に……ダンジョンは広いのでそうそうありませんが、もしも、他のパーティーと遭遇した場合のことを話します」


 トントンとエミリーは黒板を叩く。


「この場合、貴方達が取るべき選択は二つ。穏便に済ませるか、もしくは……戦闘を行うか」


 ゴクリと、隣のティアが生唾を飲み込む音が聞こえた。


「この場合、戦闘不能に陥ったパーティーは全員が途中退場になります。なので、もしも自分のパーティーの戦力に自信がない、または、体力を使いたくない場合は、交渉をするなり、出会わないようにするなり工夫をしてください。まぁ、重ねて言いますが、ダンジョンは広いので頻繁に出会うことはありませんから」


 そこまで言って、エミリーはラルフとティアを見回す。


「説明は以上です。何か質問はありますか?」


 その言葉に、二人が首を横に振るのを確認したエミリーは、満足げに頷く。


「それでは実技試験の方も頑張ってくださいね。では、解散」


 それだけを言い残すと、エミリーは教材を持って教室から出て行ってしまった。

 それを確認したラルフは、体の中にあった息をすべて吐き出すとグテッと椅子にもたれかかった。

 全身から力を抜いて、陸に打ち上げられたクラゲのようになっているラルフを、ティアが半眼で見下ろしている。


「だらけ過ぎ」

「しょうがないじゃないか。個人的に一番大きな壁を越えたんだ……少しぐらいいいだろ」

「ふぅん。ま、いいけれど。ところでラルフ」

「ん~?」


 脱力しきったまま顔だけ向けるラルフに、ティアは眩い笑顔を浮かべた。


「私の方が試験の点数高かったから、何でも言うこと聞くんだよね」

「…………」

「無言で顔を背けるな、コラ」

「ぐぇッ!? 首が!?」


 両頬を挟まれてグキッと顔を戻された。

 至近距離からにらまれ、ラルフは半笑いを浮かべたまま視線をそらした。


「そんな約束もあったような……なかったような……」

「あったわよ!! アンタが言い出したんでしょーが!」

『ラルフ、観念しろ。確かに私もお前が約束したのを聞いている』

「ほら、アルティアもこう言ってるじゃない!」


 実はラルフ……筆記試験のあまりの難易度にとにかく合格することを目標として頑張っていたので、ティアとの約束をすっかり忘れていた。

 ただ、確かに約束した覚えはある。

 約束は約束……ここで駄々をこねて、みっともなく言い訳をするのは嫌なので、ラルフは大人しくティアと向き合うことにした。


「んで、俺は何をすればいい? 逆立ちしたままトラムと並走しろとか無理だからな」

「誰が得すんのよそれ」


 ふぅ……っと大きくため息をついたティアは、目線をそらして口を開いた。


「実技試験、私と一緒にパーティー組んでよ」

「は……?」


 思わず気の抜けた声がこぼれた。

 目を丸くしているラルフをちらちら見ながら、ティアは少し気まずそうに言う。


「だって私、実技の方はダメダメだし……正直、足引っ張ると思う。仮想終世獣との戦いでも、結局最後まで動けなかったし……」


 ラルフとティアがペアを組んで、実技の授業で仮想終世獣と戦った時のことを言っているのだろう。

 ティアの中ではあの授業でラルフに何もかも任せきりになっていたことを、今でも悔いているのかもしれない。

 ラルフはポリポリと頬を掻く。


「ラルフ一人ならたぶん、どこにでも受け入れてもらえると思う。本当はこんなの卑怯だってわかってるんだけど、その、私――」

「ティア」


 ティアの言葉を一言で遮って、ラルフは屈託なく笑いかける。


「試験、一緒に頑張ろうな!」


 もともと、ラルフもティアと一緒に組むつもりだったのだ――何の問題もない。

 驚いたように目を見開いていたティアだが、ラルフの笑みを前にして……花が綻ぶように笑みを浮かべた。


「うん……ありがと」


 教室の空気が柔らかくなったその時、まるでタイミングを計ったかのように扉がノックされた。

 そして、ラルフ達の返事も待たずに入ってきたのはミリアだった。

 だが、ラルフはあまり驚かなかった。

 こうなるだろうなぁと、予想していた通りというべきか。

 ミリアは視線をラルフの机の上にある答案用紙へと落とすと、ほぅ、と小さく感嘆の吐息をついた。


「七割正解ですか。やるじゃないですか、兄さん」

「ふふーん、俺だってやればできるのさ」

「そうですか、ちなみにその口調。どこかの誰かに……というか、兄さんと一緒にいた時のレインフィールドさんの口調にそっくりですね」

「…………」


 何故だろう。ミリアの瞳に炎が燃え盛っている。


「あの、ミリアさん。とりあえず落ち着きましょう」

「兄さんって自分に不利なことがあると敬語になりますよね」


 鎮火を試みたはずなのに、なぜ油をぶっかけるような事態になっているのか。

 ミリアの怒りの導火線に着火した理由が全く分からない。ラルフは隣に座っているティアに助けを求め――


「私もレインフィールドさんとのこと、知りたいんだけど」


 顔は笑っているのに目が笑ってない。

 何も悪いことはしてないはずだと内心で確認しながら、ラルフは顔を上げる。


「え、えっと……チェリルと知り合ったのは図書館で勉強してた時のことなんだけど……」


 ラルフはそう前置きして、二人にここ数日間のことを説明した。

 ラルフが話している間、一度たりとも視線を外さないミリアにビクビクしながら、何とか全て話し終える。

 その内容を精査するように考え込んでいたミリアだが……自分を納得させるように頷く。


「ぎりぎり無罪」

「今さっきの説明のどこに有罪になる部分があったんだよッ!?」


 ラルフの魂の叫びをスルーして、ミリアは口を開く。


「でも、兄さん。レインフィールドさんは、兄さんの前ではいつもあんなにテンションが高かったんですか?」

「え、そうだけど」

「教室のレインフィールドさんはもっと大人しいんですけどね……」

「ん? ミリアと同じクラスってことは……やっぱりチェリルは上位ランクなんだな」


 ラルフの言葉に、ミリアは頷く。


「『煌』ランクですよ。異様なほど神和性が高かったらしいですからね。ま、この話題はここまでにしておきましょう。たぶん……レインフィールドさんはこの話題、掘り下げられたくないんでしょうし」


 ミリアはそう言って懐から二枚の紙を出して、ラルフとティアに手渡した。


「それで、今回の実技試験に挑むパーティーは兄さんと、ティアさんと、私で良いんですよね。はい、これ、学生課で申請して承諾された試験表です。ちなみに兄さんの名前は私が筆跡を似せて書いておきました」

「早ぇよ!? ってか、もう決定事項か!」


 ラルフが突っ込みを入れるが……それに返ってきたのは剃刀よりも鋭いミリアの視線だった。


「文句あるんですか、兄さん。私とティアさんという可愛い女の子二人分の肉壁になれるんですよ。光栄に思って、最前線でボコボコに殴られてください」

「アルティアぁ……妹が怖い……」

『ラルフよ、男にとって女とは永遠の謎だ。乙女心は納得するものではなく、理解しようと努めるべきものなのだ』


 ヒヨコが女を語っている。

 ティアが憐憫を込めた目で生暖かくラルフを観察している横で、ミリアが教壇に立ってチョークを手にした。


「それではこれから作戦会議を行いますよ。そんなに時間は取りません。ただ、私達のこの試験に対するスタンスと、現有戦力の確認、そして、フォーメーションの確認を行います」


 そう言いながら、ミリアは黒板に『チーム:ディープフォレストのスタンス』と書く。


「へぇ、チーム名はあの喫茶店から取ったのか」

「えぇ、宣伝にもなりますからね。まぁ、それはともかく……私達のスタンスです。終世獣や他のパーティーと出会った場合戦うのか逃げるのか、ですね」

「エンカウントと同時に即殲滅ぐぁ!?」


 ミリアが投擲したチョークが額に直撃した。

 見てみれば、チョークが木端微塵に砕けている……どんな力で投げたのか。


「ちょっとは真面目に考えなさい、この愚兄」


 額を押さえて悶絶しているラルフを尻目に、ミリアはティアに視線を向ける。

 意見を求められたと分かったのだろう……ティアは少し考え込み、口を開く。


「その、私があんまり強くないからかもしれないけど……あんまり戦闘はしたくないかな。相手が五人組なら、たぶん勝てないと思う」

「そんな卑屈にならなくても良いですよ、ティアさん。でも、私もどちらかといえばティアさんの考えに賛成です。この試験の目的はあくまで最奥への到達ですからね。では私達のスタンスは――」

「ちょっと待て、ミリア」


 額を押さえながらラルフが挙手すると、ミリアが半眼を向けてくる。


「なんですか、兄さん。またくだらないこと言ったら、次はチョークで両目を潰しますよ」

「怖ぇよッ!? 真面目な話、相手パーティーと出会ってしまったら戦闘した方が良いと思うぞ。仮想終世獣は知らんけど」

「なんでですか」

「俺達には魔術で身体強化した奴から逃げる足も、霊術ぶっ放された時の防御手段もないからだ」


 ミリアの疑問の言葉に、ラルフは速攻で切り返す。

 ふむ、とミリアが傾聴の姿勢を取ったことを確認したラルフは、更に言葉を続ける。


「正直、相手方のドミニオスが魔術使って追っかけてきたら振り切れないぞ。それに、逃げてる途中で背後から霊術を雨霰と撃たれても終わりだ。最良なのは、見つからないか……もしくは、出会った瞬間に全力で全滅させるかだ。こっちにはミリアの『再生』があるんだ。多少怪我を負っても叩き潰した方が良い」

「うわ、ラルフがまともなこと言ってる……」

「うっさい!?」


 逆立ちしたカバを見るような目をするティアに噛みつくラルフ。

 壇上ではミリアがラルフの言葉を加味し、板書を始める。


「では、とりあえず終世獣の戦闘を回避する方向で。相手パーティーと遭遇した場合は戦闘ということにしましょうか。ティアさんも良いですか?」

「う、うん。がんばる」


 硬くなるティアの隣で、ラルフが軽く苦笑する。


「大丈夫だってティア」

「そうやって軽く言うけど――」


 ラルフはティアの瞳をまっすぐに見つめて笑う。


「誰が来ても通さないって。俺が君を護る。だから大丈夫。安心してくれ痛ぇ!? 何すんだよミリア!?」

「いえ、その『ときめきゾーン』を破壊しておこうと思いまして」


 再度放たれたチョークがこめかみに直撃し、ラルフはミリアに噛みつく。

 その隣で「むぅ、不覚……」と言いながらティアが赤くなった自分の顔を、教科書で煽いでいる。

 おほん、と大きく咳ばらいをしたミリアは、どこか不満そうな表情で次に『現有戦力の確認』と書いた。


「これはフォーメーションにもつながることですが……とりあえず、最初に尋ねたいのはレンジャー技能の評価についてです。SからDまでの五段階評価ですが……ちなみに私はBです」

「私はCだけど……」

「俺はAだ!」

「なら、兄さんは最前衛で片っぱしから罠に引っかかってボコボコになる役を引き受けてください。Aなら大丈夫ですよね」

「ミリア、正直に言っていいぞ。兄ちゃんに何の恨みがあるんだ……」


 ガックリとうなだれるラルフの横で、ティアが感心したようにラルフに視線を向ける。


「でも、ラルフって筆記は苦手だけど、実技だけは本当に強いわよね」

「兄さんの場合、ゴルドおじさんと一緒に山に籠って山中で戦う訓練したり、野宿の経験も豊富ですからね。経験が物を言ってるんだと思います」

「ま~野外戦闘は腐るほどやったからなぁ。今思い出しても吐き気がするほどきつかったけどな……」


 足場の悪い山中で、一日中、ゴルドと殴りあった……というか、一方的に攻め続けられた時のことを思いだして、ラルフは若干顔色を無くす。

 何せあの父親は、威嚇のつもりで樹木を拳一つで吹っ飛ばし、巨岩を割り砕くのだ……相対してる身としてはシャレにならない。


「では……これを踏まえた上で、フォーメーションを考えると……」


 そう言ってミリアは黒板に三角形を描く。


「先頭に兄さん、そしてその後方に私とティアさんが続きます。近接戦闘をする兄さんを、私とティアさんが支援するような形ですね。真面目な話、近接戦闘は兄さんが一人で担当することになってしまいますが……」

「問題ないよ。任せておけ」

「…………」

「どうしたんだよ、ミリア」

「私には護ってやるって言ってくれないんですね……」

「は?」

「いえ、何でもありません」


 プイッとそっぽを向き、ミリアはチョークでトントンと黒板を叩く。


「では、実技試験はこれで行きます。実際の洞窟ダンジョンがどのようなものか確認はしていないので、何とも言えない部分もありますが……とにかく、全力を尽くしましょう」


 こうして、作戦会議は終了したのであった。

 残る実技試験は明後日開始。筆記試験の時とは異なり、ラルフは好戦的な笑顔を浮かべて、掌に拳を打ちつけたのであった……。


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