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3章

あーくんは早起きしました。あーくんには気になることがたくさんありました。まずはこの家です。どうやって組み立てているのでしょう。なぜ丸太を積み上げただけでこんなに頑丈に作れるのでしょう。あーくんはよく観察します。押したり叩いたりしてみます。しかしわかったのは丈夫だということだけ。あーくんは外にでてみました。そして外からもよく観察します。見た目は普通に丸太を横に向けて積んでいるだけです。あーくんはぐるぐると家の周りをまわります。

「あっ」

あーくんは短く声をあげました。ようやく何かに気づいたようです。あーくんが気づいたのは横に転がっている丸太と縦に転がっている丸太の接触している部分のことでした。家の角で交わっている丸太には両方に切り込みが入れられていていました。そしてそれがぴったりと2つの丸太をくっつけています。なるほど。それが丈夫になる仕組みだったようです。丸太が綺麗に並べられてこの家が作られたようです。あーくんはこの家を一目見たときから感じていたことがあったのですが、今確信に変わりました。たっくんにはものづくりの才能があります。それも、とてつもない可能性が秘められているような気がしました。あーくんが家を見て感心している間に、ちーちゃんとたっくんも起きてきました。

「あーくんおはよ。早起きだね」

「ちーちゃんもたっくんもおはよう」

あーくんは2人のほうへ駆け寄ります。

「おは……よ」

たっくんも見よう見まねで挨拶しました。それに驚きあーくんとちーちゃんはたっくんのほうを見ました。たっくんは一生懸命に口を開いていました。そして少し恥ずかしそうでした。たっくんがしゃべったことがよほど嬉しかったのか、2人はもう一度声をそろえて「おはよう」と言いました。

それからというもの、たっくんはぐんぐんと言葉を覚えていきました。その成長っぷりにはあーくんもちーちゃんも驚かされました。たっくんがものすごく頑張るものだから、あーくんもちーちゃんも一生懸命サポートしました。そして一週間もしないうちにすっかり日常会話には困らないようになりました。身振り手振りでコミュニケーションはとっていたものの、やはり言葉を交わせるとそれだけでコミュニケーションがとても弾みます。特にあーくんはたっくんにいろいろ質問しました。たっくんはあーくんが見たこともないようなものをたくさん作っていました。例えば釣り竿なるものを作っていました。ボートとオールも作って海へとでました。ボートの出来栄えは見事としか言いようがありません。見た目の綺麗もさることながら、あーくんが調べたところによるといろいろなことが考慮され設計されていました。3人はボートに揺られながら釣りをします。釣りの仕方はたっくんが教えてくれました。まず小さくて尖った石の先に、川で取れた小さな魚をつけます。それだけです。あとはそれを海へと投げ入れ、海へと垂れさがった糸が反応するのを待てば良いのです。エサを食べた魚に尖った石が引っかかりそれを引き上げるという作戦らしいです。たっくんが教えてくれました。釣り竿を握り3人はあたりが来るのをじっと待ちました。しかししばらくしてもなかなか釣り竿は反応しません。たっくんは「そんなにすぐ釣れるもんじゃないよ」と言っていたのであーくんは辛抱強く待ち続けます。でもちーちゃんはだんだん集中力がきれてきたようでした。あっちを向いたりこっちを向いたり海の中を眺めたりしていました。

「お魚まだー? 」

ちーちゃんはとうとう飽きてしまい、釣り竿をボートの淵に寝かせて、飛んできた小鳥と遊びはじめました。あーくんも少しうとうとしてきました。暖かい日差しにゆらゆら揺れるボート。なぜこんなに眠くなるのでしょうか。きっと単調でゆったりとした揺れというのは脳に眠くさせる信号でも送ってるんだろうな、なんてよくわからないことを考えると余計に眠くなります。うとうとしていたあーくんはカタンという音で意識が戻りました。音のほうを見て一瞬固まってから気づきました。ちーちゃんの竿が動いています。きっと魚が掛かったのです。

「ちーちゃん! 」

あーくんは慌ててちーちゃんを呼びました。ちーちゃんもそれに気づいて急いで戻ってきます。小鳥は驚いて飛び去りました。ちーちゃんは自分の竿を握ります。竿の木の部分が結構しなっていました。ちーちゃんは懸命に引き上げようとしました。しかしなかなか魚はあがっていません。見かねたたっくんは後ろからちーちゃんを手伝ってあげました。だんだんと魚の姿が見えてきました。真っ赤な魚です。とうとうその姿を水面に現しました。たっくんは魚を引き上げる竿から外し、ちーちゃんに渡してあげました。魚はばたばたと動きちーちゃんの手から飛び出そうな勢いでしたが、ちーちゃんは両手でしっかり掴み、嬉しそうに満面の笑みで魚を見つめました。あーくんもとても喜びました。でもちーちゃんに先に釣り上げられてすこし悔しそうでした。ちーちゃんはすっかり釣りにはまってしまいました。もう日が暮れるというのにまだ水面とにらめっこしています。もしかしたら夕日が沈みかけていることにもちーちゃんは気づいていません。

「ちーちゃんそろそろ終わるよ」

あーくんはちーちゃんに声をかけました。

「あとちょっと」

このやりとりはもうすでに3回目でした。終わりはくるのでしょうか。さすがに陸から吹いてくる風も肌寒くなってきました。少し待ってからあーくんはちーちゃんを説得することに決めました。

「ちー」

そのときです。ちーちゃんの竿がガクンと揺れました。ちーちゃんはすぐに戦闘モードに入りました。

「いくよー!! 」

ちーちゃんは力いっぱい引っ張ります。竿はもうギリギリまで曲がっています。ちーちゃんのどこにそんなちからがあったのでしょうか。みるみる糸は引き上げられます。

「うぉりゃぁぁー」

魚が引き上げられると同時に勢い余ってちーちゃんは後ろに倒れました。勢いよく空に舞った魚が落ちてきます。バンとすごい音をたてて着地しました。その魚はボートの半分以上を埋めつくしました。すごいです。超大物です。ちーちゃんは満足してたっくんに島へ戻るように指示しました。疲れていたあーくんとたっくんでしたが最後の大物には興奮しました。元気を取り戻して夜ご飯の相談です。こんなにたくさん食べきれないのでできれば保存しておきたいところです。しかし果物を食べていてわかったことなのですが、明日も食べようと次の日の分も果物をとっておくと、ふにゃふにゃになってすこし黒くなってしまいます。だからきっとこの魚もだめになってしまいます。どうすればいいかをあーくんとたっくんは真剣に話し合いました。

「果物は木についていたら腐らないのだから、魚は海につけておけば大丈夫なんじゃない?」

これはたっくんです。

「果物が木にひっついているときは生きているけど、この魚は食べたら死んじゃうよ。だから海につけてもだめなんじゃないかな」

あーくんも顎を拳にのせて考えます。2人はあれこれ考えましたが結局いい案は浮かびませんでした。

陸に着くとたっくんがコロコロと板を持ってきます。板の下に何か丸いものをつけているよつです。なるほど、よく考えられています。それに大きな魚をのせて運びました。家の前まで板を転がすと魚をさばきます。薄くするどく研がれた石で魚を切り開くと新鮮な真っ赤な身がでてしました。3人は薄く切られたその身を食べてみました。

「わーお。おいしー」

ちーちゃんは自分で釣った魚が食べられて感激です。切っては食べ、切っては食べ、とうとうなくなりました。みんなお腹がはちきれそうです。せっかく釣った他の魚は食べられそうにありませんでした。もったいないと思ったたっくんは魚を綺麗に切り開いて、小鳥のエサにでもなるように木の枝にぶらさげておきました。3人は今日の食事に大満足です。海で釣った魚は川で釣った魚とはまた変わった美味しさがありました。明日は何をして遊ぶのでしょう。ちーちゃんはわくわくしていました。たっくんが作るものはとてもおもしろいです。今までにはなかったような新しい遊びを教えてくれます。ちーちゃんはそれが楽しみで仕方ありませんでした。

ちーちゃんが朝目を覚ますと外からはカーンという音が聞こえていました。ちーちゃんは丸太の隙間から外を見ます。そこにはたっくんがいました。何かを作っています。ちーちゃんはそれを見つけると外にとびだしました。

「ちーちゃん。ちょうどいいところに来た」

あーくんも何か作っていました。木の枝から2本のロープをぶら下げて、下のほうでちょうど座れるくらいの大きさの丸太に結んでありました。

「あーくん、これなあに? 」

「これはこうやって遊ぶんだよ」

あーくんは丸太に座って足をゆらゆら動かし始めました。すると丸太はだんだん振り幅を大きくして前後に揺れていきます。風をなびかせたあーくんの髪はふわっとたちあがりました。とっても気持ち良さそうです。

「私もやる」

ちーちゃんも乗りたくて仕方ありません。

「もうちょっと」

あーくんもまだまだ子供なので楽しいことはそう簡単に譲れません。しかしさすがはあーくん、もうちょっと乗ったところでちーちゃんに変わってあげました。ちーちゃんも大きく揺れています。もうすぐで地面と水平なんじゃないかというくらいまで高くこいでいました。ちーちゃんは怖いもの知らずです。丸太の上に立ち上がってこぎはじめました。するとさっきより高くまで上がります。あーくんは下から見ていてヒヤヒヤでした。さらに何を思ったか、ちーちゃんは最大まであがったところでジャンプしました。そのまま隣の木の枝にとびのります。ちーちゃんの運動神経の良さはわかってるつもりでもあーくんはやっぱり慌ててしまいます。あんなの人間がやることじゃないと思いました。一方ちーちゃんは木の上でに

っこり笑顔であーくんに手を振っています。あーくんは呆れ半分、感心半分といった微妙な表情でちーちゃんに手を振りかえしました。

「ちーちゃんできたよ」

何かをせっせと作っていたたっくんが作業を終えたようでした。あーくんとちーちゃんは楽しみに駆け寄ります。そこにあったのは昨日魚を運ぶのに使った板にT型のハンドルをつけたものでした。たっくんは板に片足をのせもう片方の足で地面を蹴ります。するのガタガタと音をたてながらその乗り物は進みました。両足を板にのせかえすーっと進みます。そしてハンドルを傾けてぐるっと周り元いたところへ戻ってきました。

「おぉー」

あーくんとちーちゃんは拍手しました。とてもおもしろいです。これがあれば移動が楽になりそうです。ちーちゃんはさっそくのせてもらいました。あっちに行ったりこっちに行ったり走り回りました。そしてあーくんとたっくんがおしゃべりをしていて目を離したすきに、ちーちゃんは広場の奥へと消えていきました。いけません。そっちはさかです。あーくんは知っていました。転がるものは坂道ではものすごいスピードで進みます。慌てて2人はちーちゃんを見にいきました。坂の上から見下ろすとちーちゃんは楽しそうに歓声をあげていました。体重を移動させ車体を横に向けて、きっちりブレーキをかけました。なんて扱いがうまいのでしょう。ちーちゃんは地面を蹴りながら2人のもとへ戻ってきました。

「はい。次、あーくんの番ね」

あーくんも広場でのせてもらいました。爽快感がありました。ちーちゃんのようにうまくはいきませんでしたがとても楽しめました。3人はとても仲良く、とても楽しく暮らしました。あーくんとたっくんはちーちゃんを楽しませるために、また自分たちが楽しむためにいろんなものを考えて作ったりしました。とても平和な日々が続いていました。しかしそんな日がずっと続くわけではありませんでした。

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