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2章

島です。とうとう島にたどり着きました。イカダを島のギリギリまで寄せて、あーくんとちーちゃんは上陸します。小さな島でした。雰囲気はずっと暮らしてきた山とあんまりかわりなさそうです。

「私たちの第一歩だよ」

2人は地面を踏みしめました。さて、新しい世界が見たいという願いが叶った2人でしたがこれからどうするのでしょう。今まではクマさんの洞窟で一緒に寝ていました。でももうクマさんはいません。2人はとりあえず島の探索をはじめました。岩の出っ張っているところに手をかけ、体を持ち上げて登ります。ゴツゴツした岩場を乗り越えるとたくさん木がありました。果物がなっています。奥のほうからはかすかに水が流れる音が聞こえました。その音を辿って行くと川がありました。魚も泳いでいます。あーくんは寝床になりそうな場所を探していました。なにもないところに寝るのは寒くて耐えららません。

うわっ。ヘビがいました。ニョロニョロっとした体を草むらの中からだし、クネクネとあーくんの前を通り過ぎていきました。何回も見たことがあったのでヘビは知っていましたが、何回見ても驚かされます。あーくんとちーちゃんはぴったりくっくいて行動しました。

「あそこいいんじゃない? 」

ちーちゃんはおおきな木の根元にちょうどいい大きさの穴を見つけました。

「ぴったりだね。寝床はあこにしよう」

そうと決まれば2人は落ち葉拾いを始めます。落ち葉をひくと地面の硬さが直接伝わることなく、しかもちょっと暖かいのです。入れ物がないので落ち葉を腕いっぱいに抱えて穴に持ち帰り、また取りにいくそれの繰り返しでした。しばらくすると寝床ができあがりました。ここなら雨が降ろうと風が吹こうと大丈夫です。

「あーくん。私お腹すいたよー」

あーくんもそろそろお腹が減ってきた頃でした。しかし食べ物に困ることはなさそうです。木には有り余るほど果物がなっていました。川の魚もたくさんいました。ただ、動物は1匹も見かけませんでした。あーくんはちーちゃんを肩車し、ちーちゃんは手を伸ばして果物を取ります。2人は取った果物をお腹いっぱい食べました。寝床は用意したし、食べ物はたくさんあるのでこれで暮らしていけそうです。あーくんもちーちゃんもわくわくしていました。こんな経験初めてです。今まではクマさんに助けてもらっていたけど、これからは2人だけで協力して生きるのです。ドキドキが止まりません。2人は時間を忘れて遊びました。気がつくと夕日は目の前の大きな海を赤色に染めていました。2人は寝床に戻り早めの睡眠をとりました。これから2人にはどんなことがまっているのでしょうか。2人の無人島生活はまだ始まったばかりです。

朝がきました。2人は目を覚まします。

「あれ、今日は明るいね」

ちーちゃんは言いました。いつもはクマさんと一緒に起きていたので早起きしていたのに今日はぐっすりと寝てしまったようです。もうお昼も近い時間になっていました。

「そうだね。小鳥の鳴き声も聞こえないし静かだったからいっぱい寝ちゃったね」

あーくんとちーちゃんは穴から出ました。今日は日差しがきつくいい天気でした。

「それじゃあ、あーくん。今、着てる服かして」

あーくんは着ていた服を脱ぎ新しい服を着ます。ちーちゃんも同じように着替えをして、脱いだ2人の服を持って山の中へと歩いていきました。2人はどうして服を持っているのでしょう。それはあーくんが作ったからです。オオカミさんと一緒にとった動物から皮を剥ぎ取り服を作りました。尖った石を使って一生懸命作りました。見た目はあまり綺麗ではありませんでしたが、着ることができたらそれはもう立派な服です。こうしてあーくんとちーちゃんは2着ずつ服を持っていました。そしてちーちゃんは今、川に洗濯をしに行っています。これは2人にとって日常の一部でした。その間にあーくんはご飯の準備をします。しばらくするとちーちゃんが戻ってきます。あーくんはちーちゃんから服を受け取り、ちょうどいい高さの枝に服をかけました。これで洗濯完了です。2人は仲良くご飯を食べました。

「あっ! あそこで今何か動いた気がする」

ちーちゃんは唐突にそう言いました。もしかしたらこの島にも動物がいるのでしょうか。昨日は発見できませんでしたが、そんなに隅々まで探したわけではありません。2人はちーちゃんが何かを見たと言った場所へと言ってみました。しかし周りには何もいません。2人とも興味津々で見にきてみたのに何もいなくてがっかりです。

「何もいないね。戻ろうか」

あーくんは引き返そうと後ろを向きました。

「そうだ……ね? いや、やっぱり何かいるよ。ほらみてここ。草が踏まれて型がついてるよ」

そこには明らかに何かによって踏まれたと思われる草が倒れていました。これは何者かがいたことを示す動かぬ証拠です。

「それに、ほら。耳をすましてごらん。カーンカーンって音が聞こえるよ」

ちーちゃんにそう言われあーくんは黙って音を聞こうとしました。しかし

「僕には聞こえないや。ちーちゃん、その音はどっちから聞こえてるの? 」

「あっちだよ」

ちーちゃんの耳をたよりに進んでいくとたくさんの丸太がありました。さすがにここまでくればあーくんにもわかります。カーンと何かを打つような音が聞こえていました。その音は積み上げられた丸太の向こうから聞こえています。あーくんとちーちゃんはあまり足音を立てないように丸太の向こうへと回り込みました。するとそこには2人と同じくらいの子供がいました。

「えっ」

ちーちゃんは驚いて声をあげました。

すると子供も驚いて「わー!」と叫びました。当然です。近くでいきなり大声を挙げられて驚かないわけがありません。びっくりして腰を抜かしてへたり込んでいました。

「ご、ごめんなさい」

ちーちゃんは慌てて謝りました。しかし少年は目を見開いたまま固まっています。表情からは少し恐怖が読み取れます。

「ほんとにごめんね。人がいたからびっくりしちゃって」

ちーちゃんは話しかけ続けます。ちーちゃんの優しい表情を見て、少年の顔から恐怖の色は取れていきました。しかし口を開こうとはしませんでした。

「どうし……」

なおも、ちーちゃんが話しかけようとしたのをあーくんがさえぎりました。

「もしかしてこの子、僕たちの言葉がわからないんじゃないかな。だってこの言葉は僕たち2人だけのものだから」

なるほど。そういうことなら納得がいきます。言葉でコミュニケーションがとれないならやることはひとつです。ちーちゃんは少年に向かって手を伸ばしました。そうです。言葉が通じないなら体全体を使って気持ちを伝えればいいのです。少年は最初少しだけ不審な顔をしましたが、手を伸ばしてちーちゃんの手を握りました。あーくんも手を差し出します。そして少年も握り返します。そのまま2人は座り込んだ少年を起こしてあげました。

ジェスチャーを使いながら3人は自己紹介をしました。少年をイカダを止めてある場所まで案内し、元来た山のほうを指しました。すると少年は理解してくれたのか、うんうんと首を縦に振りました。少年も船を作ってこの島へ渡ってきたようです。この島で生活し始めて結構経つようでした。少年には名前がありませんでした。だからあーくんとちーちゃんは少年をたっくんと呼ぶことにしました。たっくんは2人を島のいろんなところへ案内しました。ここは洞窟です。とても奥が深そうです。もっと進むと何か新しいものが見つかるかもしれません。

「暗いね」

あーくんはすぐ横にいるのにほとんど見えていない2人に言いました。

「そうだね。戻ろっか」

ちーちゃんは入り口へと歩きました。たっくんには暗すぎてジェスチャーも伝わらなかったようです。しかし後ろからとことことついて来ました。

たっくんは次に水の湧いている場所へと2人を案内しました。水といっても暖かい水、つまりお湯です。そう、この島には温泉が湧いていました。あーくんとちーちゃんは温泉から伝わってくる暖かい空気にすごく不思議な気分になりました。水から白いふわふわしたものがゆらゆらと昇っていきます。ちーちゃんはどうしようか少し考えましたが、知らないものを見たときにすることはいつも同じです。その水の中に手を入れてみました。その刹那、ちーちゃんの体に電撃が走りました。今まで味わったことのない感覚です。なんと表現したらいいのでしょう。言葉では言い尽くせないなんとも言えない衝撃でした。

「あーくんも」

ちーちゃんはあーくんにも薦めます。あーくんもちーちゃんと同じように温泉に手を入れました。そして同じように手を引いて、同じような表情をします。あーくんにとっても新鮮な感覚でした。あーくんとちーちゃんはお互いに顔を見合わせて笑いました。すごくおもしろかったので2人はもう一度温泉を触りました。また電撃が走ります。それが楽しく何度か繰り返しました。たっくんがあーくんとちーちゃんの肩をたたきます。2人が振り向くと、たっくんは服を脱いでそのまま体ごと温泉に入りました。なんだか気持ち良さそうです。あーくんもちーちゃんもたっくんの真似をして温泉に入りました。勢いよく入りすぎたのか、あまりの衝撃の大きさに2人は揃って飛び上がりました。そんな2人の様子をたっくんは笑いながら見ていました。あーくんもちーちゃんも温泉に慣れてくると肩までお湯につかりました。暖かいお湯が全身を包みとてもいい気分になりました。気を抜くとそのまま寝てしましそうな気持ち良さでした。

温泉から上がり3人はたっくんと出会った場所まで帰りました。ちーちゃんはあまり気にならないようでしたが、あーくんはたっくんと出会ったときからずっと気になっていたことがありました。この木の塊はなんなのだろう。あーくんは不思議そうに木の塊を見上げました。眺めていてもそれがなんなのか全然わからなかったので、あーくんはたっくんに聞いてみました。するとたっくんはあーくんの手を引き、反対側まで回りました。そして何か木の塊からでっぱっている手のひらサイズのものを掴みました。あーくんはたっくんが何をしているのかわかりませんでした。しかし次の瞬間あーくんは驚愕に目を見開くことになります。たっくんは掴んだ出っ張りを引きました。するとその中には綺麗な空間が広がっていました。

「ちーちゃん! 」

あーくんは急いでちーちゃんを呼びました。中に入ってみるとそれはもう感動です。壁があるから風があたりませんし、屋根があるから雨がかかることもありません。しかも床も木でできているので寝転がっても汚れません。あーくんもちーちゃんもこの家をとても気に入りました。たっくんに手でGOODのサインを送ります。たっくんは照れくさそうで嬉しそうでした。家の真ん中には2段階の高さの木が置いてありました。ちーちゃんがそれを不思議そうに首をかしげて見ていると、たっくんは果物を持ってきてその高いほうに置きました。そして低いほうに座ります。食事を取る場所のようです。あーくんは、なんだか変わった食べ方だなと思いました。あーくんとちーちゃんは今まで地べたにすわり地べたに包みを広げてご飯を食べていました。そんなところにテーブルとイスを出されたら変わってるなと思うのも無理ありません。しかしいざ座ってみるとこれがなかなか心地よいのです。3人はそのまま楽しく食事をしました。そしてそのまま眠りこみました。動物の毛で作られた布団は落ち葉の布団より格段に暖かく、ふわふわでした。


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