世界を二人占め 〜博士と助手くんシリーズ〜
その瞬間、世界中の人類すべてが眠りに落ちた。
ただ一人の例外も無く。
...いや、とある研究所に居る二人を残して。
世界に静寂が訪れた。
「博士。静かですね。
...その機械は一体何なんです?」
「これはの、助手くん。
ヒトにだけ作用し、人を眠りに誘う特殊な波を発生させる機械じゃ。
波は音、電磁波、ニュートリノ、重力波を使って世界中隅々まで行き渡らせることが出来る。どこにいても遮ることは出来ない。
つまり世界中の人は、誰一人欠けることなく、これから10分間、深い眠りに落ちる、というわけじゃ。」
「なんでこんな機械を作ったんです?」
「人は寝ている間は争うことができぬ。
...ワシはの。争いのない世界を作りたかったのじゃ。それが例え僅かな間だとしてもの。」
「...なんで10分間だけなんです?」
「世の中には、常時監視が必要な設備がたくさんあるからの。あまりに長ければ、それはそれで大惨事を引き起こそう。
だから、10分が限界だと考えたのじゃ。」
「ふーん...。
この10分間は博士が夢見た、本当に争いのない、静かで平和な世界ってわけですね。」
「本当ならこの世界を、平和の尊さを、皆で分かち合いたかったがの。
当の皆が眠ってしまっているのが残念なところじゃの。」
「二人、居るじゃないですか。あなたと私。」
「おお、。僕っ娘のお主が『私』というなど珍しいのぅ。」
「誰も聞いてないですからね。恥ずかしくても言えるんです。
...好きですよ。博士。」
「こんな時に告白が聞けるとは、ぜいたくな話じゃの。独り占めじゃ。」
「へへへ。
返事は今でも、10分後でも構いません。」
「じゃあ...」
おしまい




