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山田太郎さんにはお会いしたことがない


書き方変わってます。

違和感感じるかも知れません。



そんなわけで、叔父の悠一さんとこにお世話になっている本条です。

すごい楽です。

1日だけとはいえ、自転車で1時間、更にバスで50分、降りたところからだいたい10分、よりも車で20分の方がすごい楽です。

今思えば、電車とか使えば良かったんですが、どうやら駅からだと違う方向のバスしか時間が合わないそうな。母情報です。



さて、いい加減クラスメイトの名前を覚えなければならないようです。

生徒数、31名。

顔と名前を覚えた人、3人。


俺の興味ある人は覚えてあげるけどなあ…。


朝のホームルーム。

学級名簿の文字の羅列を睨みながら、欠伸をひとつ。

大谷先生が来ないから代わりに出欠をとる。生徒は鉛筆とか消せるもので記入。

全体を見回すけど、席についてないのは俺と…




………9番、吉良…誉?

わかんないけど、取り敢えず遅刻扱いにしておこう。


アイシクルもついでに遅刻とか欠席とかにしてやりたかったけど、あとが怖いから止めておこう。

松村の席の前でそいつに呼び掛ける。


「ま・つ・む・ら・くん。じゃんけんしてください。」


あからさまに嫌そうな顔をあげる松村。

職員室に先生を呼びにいく係を決めるって言ったら松村が席をたった


「行く。本条、分かってるよな?」


ばらしたら…?

って言っちゃばらしてるようなもんだし、違うことかな。


「はいはい、お留守番ですね。任せていってらっしゃい。」


悟られぬよう笑顔で手を振る。

半ば強引に。


「ちょっとそこの新婚さん。吉良ちゃんもうすぐ来るってよ。」


ムードメイカーな女子生徒がおどけたように言う。まわりから、ちらほらと笑い声が聞こえてきた。新婚だなんてそんな殺生な。

嫌そうな顔するけど、必死に否定すると逆に怪しまれるからなにも言えない。

相手がアイシクルなのが癪に障りまくって仕方ないけど我慢。

松村が口を開いた。良いぞ言ってやれ。


「ご期待にお答えして。」









「なにを…。」


「行ってきます。」


不意討ち。

してやられました。

女子の黄色い悲鳴が聞こえます。

やりやがりました、きす。

よりにもよって唇。

アイシクル松村、そのまま帰ってくるな。


体が硬直して動かない。

泣きそう。大嫌いな男にされたとか最悪。


「本条くん、大丈夫かい…?」


声をかけてきてくれたのは、田熊君。

顔はふざけているのかと思うぐらい女みたいだけど優しい。

いや寧ろお母さんみたいな。


「う、ぇう…。ごめんなさい。だいじょぶです。」


ちょっと、いやかなり間抜けだろうな。

元凶の女子生徒が遠くからごめんとかいろいろ声をかけてきたけど、よく聞こえないから適当に流した。

田熊君、お礼にメールアドレス教えてあげてもいいよ。

本当は誰にも教えないことにしてるけど。


まあ今はいいか。その時ゆっくりと教室のドアが開いているのが目に留まった。

アイシクル?と思ったが、違う人だ。


「…きらです…。遅れました…。」


顔を半分くらい覗かせて、こっちを見ている吉良くん。

入ってこないのかな?ああ、先生を警戒しているのか。

と思っていたら、吉良くんが手招きをしている。後ろを振り返っても誰も居らず、俺自身を指差すと吉良くんが何度か頷いた。


あ、俺を呼んだのか。


ドアの方まで近寄る。


「どうされました、先生いませんよ?」


入ってくる様子がない。吉良くんは気まずそうに俯いている。


「…そ、…ってもらえま…せんか…?」


聞こえない、何て言ったの?

彼に目線を合わせて問う。


「も1回言って下さい。」


吉良くんは顔を少しあげた。うわあ、こいつも美形側の人間だ。性格はちょっとネガティブとその界隈の人にしちゃ珍しいけど。


心のなかでだけど言っとくぞ。


泣くなよ。


暫くして吉良くんの唇が微かに動いた。

合わせた目線は、若干左下に逸らされていた。


「…相談に…のって、貰えませんか…?」


やっと聞こえた。

相談にのって欲しい、と。こういう事だね?


「…構いませんけど、教室に入りましょう?副学級委員が先生を呼びに行ってますし、そのうち戻って来るでしょうから。」


本当は戻って来てほしくないけど、なるべく穏やかを装おう。

吉良くんは、副学級委員という言葉にわずかに反応した。


気のせいかもしれないが、アイシクルが苦手と見た。


吉良くんを教室に入るよう促して扉を閉めた、けどすぐ開いた。

アイシクル…!


「…なんだ、その構え。」


松村に言われた構えというのは、ただ単に驚いたポーズだけど。

まあ、格闘風に見えなくもないか。


この間合いなら、一発くらい殴れるかな。


いや、やっぱりやめておこう

関わるだけ無駄だろう。


「まあいい。本条、先生は暫くいらっしゃらない。ご家族に不幸があり、宮崎の実家に戻られたそうだ。」


淡々としゃべる松村を怯えた目で見ている吉良くん。宛ら小動物のよう。

気付いているのかいないのか知らないが、ちょっとご機嫌で、松村は話を続けた。


「SHRは俺とお前でやる。授業変更で副担が一時間目にくる。わかったか?」


仁王立ちで話を締めた。

偉そうに何を褒めて欲しいの?


「…ワカリマシタ」


棒読みで返答した。俺とお前ってなんだよ。凄い呪いの言葉に聞こえる。

早く鳴ってください、チャイムさん。



「…という訳です。そのまま静かに待機しておいてください。」


結局最後だけ言った。

殆ど松村が指揮を執り、俺は楽にすんだ。

ちょっとだけだからな、頼もしく思ったの。


席について少しして、漸くチャイムがなった。副担との初のご対面。たぶん滅多に出番のない人。名前もモブでいいや。


がら、と音をたてて教室の引き戸が開く。その方に目をやると、品の良い華奢な人物が現れた。

言葉にするのなら王子様と言ったところか。髪は黒いけど。身嗜みがそんな感じ。


「皆さんはじめまして。英語担当の藤川です。えーと、松村くんかな。彼の説明した通り、今日は訳あって大谷先生がご不在です。3日程で戻られるそうです。その間、私が朝と帰りのHRを行いますのでよろしくお願いします。」


にっこりと微笑んだ藤川先生。

なんかごめんなさい。


…男性だとばかり思ってました。


声でわかった。女性だ、この先生。

あまり言うと変態さんに思われるが…。

胸は辛うじてあることがわかる程度。


初見さんは男性だと思うだろう…。

ボーイッシュどころじゃないもん。

最早ジェントルマンだもん。


田熊くんの逆バージョンかな。

英語は苦手じゃないから敵ではないね。




そんなこんなでお昼休み。

教卓から教室を見渡す。


女子らは藤川先生の話ばかりだ。

例えば出席番号1番と2番。

朝宮小春さんと?入江優叶さ…え、なんて読むんだこれ。もう、覚えらんない。

出席簿でカンニングしてる。


「小春はどー思う?」


「うちはゆかながええけん…。」


「小春…。可愛いこと言ってくれるね。」


…彼女らは例外みたいだね。二人の世界にご到着しました。

というかこれゆかなって読むのか。

メモしとこ…。


制服のポケットから、手帳とボールペンを取り出す。

数的には都道府県とか県庁所在地とかより少ないんだから記憶できる筈なんだけど。

如何せんあまり興味が…ないんだよなあ。


「あ、の…委員長…。いいですか…?」


などと考えていると、その具体例がいらっしゃいました。名前なんだっけ。

さりげなく出席簿で“遅刻”の印がされている名前を確認。


ああ、吉良くんね。おっけおっけ。


「はいどうぞ。ご相談とは?」



目立つのは避けたくて、教卓から離れる。

そのまま俺の席に吉良くんを座らせた。

みんな騒がしいから、大丈夫だろう。


「……俺っ…、学校……やめたいです…。怖いんです…。嫌われちゃうのが…。」


切り出したかと思うと、目に涙を溜めて

袖からちょっと出した手で口を覆った。

泣くの?止めて、泣かないで。

アイシクルと違って泣かせる趣味なんてない。


「嫌われるの嫌でも、学校辞めるのは飛躍しすぎですよ。誰に嫌われたくないんですか?」


ここは田熊くんを見倣おう。

頭なでなで、しながらいった。


「……皆、だけど。特に松村くんに嫌われたくないです…。」

ほい?

え、何この子。大物だな。


「俺、松村くんのこと好きです…。すごく好きなんです…。」


震えながら、繰り返した吉良くん。純粋なんだ。松村も罪作りな男だな。


…ちょっと待て、後ろ松村いない?


いる。すっごい凝視してる。顔がちょっと間抜けで面白い。


「……気持ち悪いですよね…?男が男を好きなんて…。それに俺、……えっちぃこと好きで、いけないこと考えちゃうから誰にも打ち明けられなくて…。」


後半は小声で言ったため松村には聞こえてない、多分。

で、当の松村はというと、肘ついた右手に顎のせて眉間に皺寄せて睨んでる。俺を。


「…打ち明けるのに勇気が入りましたね…。大丈夫です、俺は吉良くんを応援しますよ!」


笑顔をわざと松村に見せつけるようにオーバーにしてやった。

松村がなんか言いたげだったけど無視しといた。


「ありがと…。瑞季って呼んでいい?」


ちょっとはにかんで笑う吉良くん。

彼は俺をアイシクル松村から引き離してくれるかもしれない。

親しくして損はないよね!

酷いかもしれないけど、下心があってごめんね!


「ええ、構いませんよ。」


笑って言った。


ふと松村の方に目をやると、赤いボールペンで


『後で連れ出してやる。』


と書いたルーズリーフを俺に見せていた。

俺は適当に笑顔で首を傾げておいた。





そんなことがあった放課後。

アイシクルに連れ出された俺は、気がつくと体育館の裏という不穏な場所にいた。


「…本条。」


「なんですか。」


アイシクルの言葉に、間髪なしに答えようと思う。

アイシクルは、俺を逃がさないように壁に押し付けてる。それと顔近いです。

アイシクルが口を開いた。


「お前の態度が気に入らない。」


はあ、そうですか。


「あなたのために泣いてあげます。だから吉良くんと俺のために、吉良くんの気持ちに応えてあげてください。」


身長、負けてるような気がする。

吉良くんとは同じ位だったと思うけど。


「いやだ。俺はお前以外の男に興味ない。お前を俺なしじゃダメってくらいにチョウキョウしたい。」


…アイシクル松村から、ヘンタイ松村に変えようかな…。

俺の腰を無断で引き寄せない、そこ。


「なんで俺なんですか?」


その矛先を、吉良くんに向ければ事は丸く収まるのに。

ちょっと、なんで俺のネクタイ緩めてるわけ?


「一目惚れ。」


米の話はしてねえよ。

そしてそんなに顔近づけるな。


「意味がわかりません。」


アイシクルの肩を思いっきり押し返す。

無理だ。もうやだ。

しかし泣きはしない。泣いたら負けだろう。


「松村くん、吉良くんじゃいやですか?吉良くんの方がいいですよ!俺では楽しくないです、こんなことしても。」


肩に置いた手をそのままにして、訴える。松村が笑みをこぼした。


「何いっても無駄。吉良に何言ったか知らないけど、俺はお前がいい。」


このひとも笑うんですね。

でも、優しさとか感じないのは不思議だ。


そんなに俺がいいなんてふざけてる。

騙されるもんか。


二度とあんなこと繰り返したくない。


そう思っていると、いつの間にか涙を流していたようだ。

松村の驚いた顔がちょっと落ち着いて、頬を拭われる感覚を覚える。


喉の奥と、


こころって言うのかな…


胸がじんわり痛んだ。



つぎ、溢れたら止まんないかも。

目の前の男を傷付ける。

そんな気がする。


「……吉良くんの気持ち、わかるから…。人ってね、いっかい裏切られただけで怒る人と…不安になっちゃう人がいるんだよ。多分、吉良くんは不安になっちゃう人。

裏切られて嫌われて…他人どころか自分まで信じられない、俺みたいになって欲しくない。…わかって…?」


ちゃんと笑って言えたかな。


お前に泣かされたことにしといてやる。

お前が望んだことだろう。


なんで困った顔してんだよ。


「…ごめん。本条、いくら拒絶されても…俺はお前が欲しいから。

でも、嫌われたくないって思ったし。無理強いはしない。吉良のことも、考えとく。……泣かせたいってのは、こういうことじゃないから。」


松村なのに松村じゃないみたい。

いつものさでぃはどこ?


「本条は俺だけの前で素を出してくれよ。今はそれで我慢するから。」


松村は耳許で囁いた後、ゆっくりと俺から離れていった。


「瑞季って呼ばれるのと、ハニーって呼ばれるの、どっちがいい?」


「本条で。」


「瑞季な。」


ネクタイを整え、松村を睨んだ。

眼鏡の縁に指を添え、緩く笑う松村。


ご機嫌な態度。


「じゃ、バイバイ。アイシクル松村。」


なんか苛ついたから、捨て台詞を笑顔で吐いて逃げ帰る。

アイシクル、をやや強調して。


ちら、と振り返ったけど、

松村はそのまま俺を見ているようだった。


「…アイシクルって、なんだよ…。」


ぽつりと呟いた松村の独り言は、風に紛れて聞こえなかった。



…主人公のキャラが当初と比べると大分違ってますね。


さぶたいとるてきとうです。

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