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えるえいちあーる

桜は幼く淡い桃色を散らせ、人を惑わせる。

そのような幻想的な時間は限りあるのに、花を愛でることなく、人は通りすぎる。

私立陽月学園高等学校、入学式の日だった。


「…以上で、私立陽月学園高等学校入学式を終わります。一同、礼。」

厳かな式の終わり。はしゃぐ学生らに紛れ、俺は憂鬱な気持ちで佇んでいた。第一志望は不合格。不本意に来た訳だが、同じ中学の奴らとはクラスが離れてしまう始末。

事実上ひとりぼっち。いいけど。楽しくないに決まっているが。

俺は友達付き合いが苦手でたまらない。他人は他人なんだし、誰もが俺に無関心。だから俺も俺に無関心だ。変に関わられると困る。どうせ俺なんてどうでもよくなるんだから。


これから、多分一年間お世話になる1-Bの教室。普通科クラスだ。黒板に書かれた座席表をみて、自分の席に着く。本条 瑞季は25番。窓際の一番前か。何でもいいけど。隣は畑さんらしい。話しかけてこない人だといいな。

ざわつく教室内。隣で畑さんが座ってきた。視界にいれないよう窓のそとをぼんやり見る。畑さんは男子のようだ。

暫くして、がらっと教室の扉が開いた。担任とおぼしき厳つい男が入ってきた。皆が静かに席に着く。壇上の男は黒板に名前を書いた。

「君たちの担任の大谷弘太郎と言います。担当科目は数学。よろしく。」わりとフランクな先生だった。頼もしい兄貴というところか。

「それじゃ、出席番号1番の朝宮から自己紹介してくれ。名前と出身中学。あと一言。」

お約束の自己紹介。自分の番まで時間がある。寝よう。興味ない。



少し経って肩を叩かれる感覚に目をさます。手の主は隣の席の畑さん。

「…もうすぐお前の番だよ。」

…はじめまして、おはようございます。

「……親切にありがとうございます…。」

正直起こさなくてもよかったが。丁度24番の福山さんの自己紹介が終わったらしい。渋々席を立つ。

「本条瑞季、南雲中出身。桜の花が綺麗ですね。」

終わり、もういいよね。帰りたい。

俺の自己紹介のあと、少しだけ教室がざわつく。なんでですか。間違ってませんでしょう?


あの桜になりたいくらいだ。



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