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第72話:深紅の脂竜と海底の宝箱(北陸新幹線・金沢の海鮮丼と喉黒)

 富山での氷海の巨獣(寒ブリ)討伐を鮮やかに完遂した私を乗せ、青と銅色に輝く光の魔導特急(北陸新幹線『かがやき』あるいは『はくたか』)は、見渡す限りの雪原を切り裂きながらさらに西へとひた走る。

「フスッ……。日本海という、広大で無慈悲なダメージゾーン(大寒波)に面したこの北陸エリア。ここにはまだ、海神が隠し持っている『極上の魔獣』がゴロゴロと生息している」

 特急が減速し、私が次に降り立ったのは加賀百万石の栄華を色濃く残す雅な魔導王都……『金沢(石川県)』である。

「よし。駅に降り立った瞬間から、すでに街全体が高純度のゴールド(金箔)に由来する強力な結界魔法に守られているのがわかるぞ」


 金沢駅のシンボルである巨大な木の門(鼓門)をくぐり抜け、私が足早に向かったのは、この王都の台所であり最大の素材取引所……『近江町市場(巨大な屋内ダンジョン)』である。

「……す、凄い熱気だ!」

 網の目のように細く入り組んだ路地の両側には、何百もの商人ギルドメンバーたちが店を構え、氷の上に並べられた無数の海棲魔獣(カニ、魚、貝)を大声で競り合っている。

「活気にあふれた野戦市場! これこそが、命がけで日本海の荒波に挑んだ漁師(冒険者)たちのもたらした、輝かしき戦利品の数々か!」

 私は、その迷宮のような市場の奥深くへと進み、ひと際強烈な「美味のオーラ」を放っている海鮮専門のギルド酒場(海鮮丼屋)へと、躊躇なく足を踏み入れた。


「オーダー(召喚)だ! この海底神殿が誇る最高の『宝箱』……のどぐろ入りの特上海鮮丼を持ってこい!」

 しばらくして、私の目の前のテーブル(祭壇)にドンッ!という重低音とともに置かれたのは、目を痛めるほどに極彩色に輝く巨大な丼であった。

「フ、フハハハッ! 見よ、この圧倒的な暴力的なまでの輝きを! これぞ、日本海の底に眠っていた『海神の宝箱トレジャー・ボックス』!」

 酢飯(土属性のマナ)を覆い隠すように敷き詰められたマグロ、エビ、イクラ、ウニといった無数の海の宝石(魔石群)。

 そして、その宝箱の頂点に君臨するように鎮座していたのが、美しいピンク色と赤い皮目を持った伝説の高級魚……『のどぐろ(アカムツ)』の切り身であった。


「フスッ……。白身魚でありながら、全身にトロ(最上級の脂)を纏っているという深紅の脂竜のどぐろ。しかもこの個体、ただの切り身ではない!」

 私の鋭い魔力眼(単なる食い意地)は、のどぐろの赤い皮目に、ほんのりと焦げ跡(炎魔法の痕跡)がついているのを見逃さなかった。

「あぶり(炎属性の追加エンチャント)かッ!」

 脂の極めて多い魔獣の皮目を、バーナーという名の火竜の息で一瞬だけ焼き払う。それにより、強固な皮の裏に隠されていた極上の液状マナ(脂)が活性化し、香ばしい匂いと共に尋常ではない旨味を溢れ出させるのだ。

 さらに、その宝箱全体の上には、金沢名物の豪華な『金箔(高純度ゴールドの物理バフ)』までがパラパラと散らされている。

「完璧だ。視覚、嗅覚、そしてステータス補正。全てにおいて最強の布陣ではないか!」


 私は魔術スティック(箸)を深々と突き立て、まずは頂点に君臨するのどぐろの炙り(深紅の脂竜)を、金沢特有の甘めの醤油(漆黒の魔法薬)に軽く浸して、大きく口へと放り込んだ。

「……ンンッ!! 溶、溶けたぞッ!」

 白身魚特有の上品で繊細な歯ごたえ(防御力)を感じたのは一瞬のこと。次の瞬間には、炙られた皮目から火山が噴火するかのように、ドバァァァッと強烈な脂の甘み(純度100%の魔力液)が口内全域に決壊した。

「バカな……! マグロの大トロ(重装甲の獣)にも匹敵する異常なまでの脂の乗り……! それでいて、後味は驚くほどに白身の清らかさ(神聖魔法の浄化)を保っている!」

 私はのどぐろの強烈なインパクトに悶絶しながらも、すぐさま酢飯を一気にかき込み、脂の暴走を中和させた。


「……ガハァッ、止まらんッ!」

 のどぐろ(脂竜)によって完全に食欲のタガ(理性のストッパー)が外れた私は、そこから一気に海神の宝箱(海鮮丼)の強奪を開始した。

 イクラ(弾ける真紅の爆雷)、ウニ(黄金のドロドロの魔獣液)、甘エビ(透明な水精霊)を次々と胃袋コアへと強制転送していく。金箔が煌めくその一杯は、一口食べるごとに異なる強力な水属性バフを与えてくれた。

「……ふぅっ。見事な海底探伐(完食)であった」

 完全に空になった器には、私の激しい戦闘の痕跡と、満足げな溜息だけが残されていた。

「日本海……底知れぬ恐ろしい魔境だ。これほどの海の至宝が、商人ギルド『JR西日本』の管轄エリアに集結しているとはな」

 私は、胃袋から全身へと循環し始めた深紅の脂竜の強大なマナ(旨味)を感じながら、近江町市場の活気ある路地を意気揚々と歩き出し、次なる討伐対象を目指すのであった。


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