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第41話:大地の胎動と暗黒魔導士の沼(金沢カレー)

「……なんと重々しい揺れ(魔力干渉)だ。これが、加賀百万石と呼ばれる古の巨大ギルドの領地へと通じる『胎動』か」

 私が新たな腹ペコクエスト(魔獣討伐)の舞台として降り立ったのは、北陸最大の要塞機能を持つ石川県・金沢の地であった。

 商人ギルド『JR西日本』が誇る超高速移動兵器(北陸新幹線)によって軽々とこの地を踏んだ私は、すぐさまその足で、本命の『辺境の魔導軌道』……すなわち『七尾線ななおせん』へと向かう鉄獣(415系、あるいは521系電車)に乗り込んでいた。

「ガタン……ッ、ゴスンッ……!」

 七尾線は、海沿いの平野から能登半島へと向かって一直線に北上していく路線であるが、特有の車両の揺れと、車輪がレールの継ぎ目を叩く激しい重低音は、私の尻から背骨へとダイレクトに物理ダメージ(大地の鼓動)を伝えてくる。

「フスッ……。ただの移動魔法陣ではない。この不規則な振動は、地下深くで眠る強大な岩石ゴーレムたちのイビキ……つまり大地の胎動が直接、装甲(車体)に響いている証拠だ」

 私は、車内の硬いシートにふんぞり返りながら一人で勝手に納得の笑みを漏らした。

 この『揺れ』を越えた先にこそ、ただの海産物(普通の寿司やカニ)などという上品な魔物ではない、真の『最凶B級魔神(カロリーの暴力)』が封印されているのだから。

「金沢といえば、金箔や海鮮(華やかな光属性魔法)がもてはやされるが……真に恐るべきは、その影に潜むドス黒き『暗黒魔導ジャンクフード』だ」

 私は七尾線から再び市街地側の拠点へと舞い戻り(あるいは沿線の要衝である津幡や野々市周辺の結界に赴き)、赤と黄色の目に痛いほどの原色カラー(警告色)で彩られた一軒の装甲店……いや、『カレー屋』の看板を見上げていた。

「……フスッ、フハハハッ! 見ろ、あのおぞましい看板(チャンピオンの紋章)を! そして、建物の隙間から絶え間なく吐き出される、フライヤー(油の鍋)とスパイス(呪術)の強烈な波動をッ!」

 ギュルルルルウゥゥゥウッ!!

 朝からの長距離移動ワープと大地の胎動(電車の揺れ)によって、私の胃袋ブラックホールは完全にエンプティとなり、暴力的なまでの重油(揚げ物)を求めて狂ったように喉を鳴らした。

「ここが、加賀百万石の裏の顔……暗黒魔導士たちの集う『カロリー爆発の集会所(カレーチェーン店)』か」

 私は、ガラス張りの引き戸(貧弱な結界)をバンッと力強く押し開け、立ち込めるカレールーと油の重たい空気スモークスクリーンの中へと、一人、勇ましく歩を進めたのであった。


「……ほう。ここは、並のギルド酒場ではないな」

 私が店内に足を踏み入れると、そこは油と強烈なスパイスの重い瘴気(凄まじく食欲をそそるルゥの匂い)に完全に支配されていた。

 無機質で機能的なコの字型のカウンター(防衛陣形)には、部活帰りの若い戦士たち(高校生)や、戦場で疲弊しきった一般兵(スーツ姿のサラリーマン)がズラリと居並び、皆一様に、何かに取り憑かれたかのように無言で『茶色い山』を掘り崩している。

「フッ……見ろ、彼らの目(狂気)を。完全に『暗黒魔導ジャンクフード』に魅了されているではないか」

 これまでの旅で、私は数々の名物料理(魔神)を討伐してきた。

 だが、この金沢の地で根付いている『カレー』という名の魔術は、一線を画している。

 それは、野菜の繊細な甘味や優雅な香りを楽しむような高等魔法(フレンチや割烹)ではない。ただ純粋に、圧倒的なカロリー(物理的質量)と、ドス黒いまでの濃い味付け(呪の重圧)によって、疲れた兵士たちの胃袋の隙間を暴力的に埋め尽くすための、『戦闘用完全呪術食バトル・レーション』なのだ。

「フスッ、フハハハッ! これぞ求めていたものだ! 私のすっぽりと空いた暗黒空間(空腹の胃)には、これくらいの粗暴な魔力ボリュームが相応しい!」

 私は発券機(古の魔導契約端末)の前に立ち、無数の呪文メニューボタンの中から、最も凶悪な威力を誇る最強の召喚ボタンを叩き込んだ。

 ピピッ!

「『Lカツカレー』……大盛り(魔力増幅版)だッ!」

「あいよっ! Lカツ大一丁っ!」

 店員(熟練の錬金術師)の声が響き渡ると同時に、奥の厨房魔導炉から、カツがジュワァァァッ! と甲高い悲鳴(油の爆ぜる音)を上げるのが聞こえた。

 待つこと数分。

 私の目の前に、ついにその『恐るべき魔の結界(金沢カレー)』が顕現したのである。

「……ッ!! な、なんという、禍々しい重量感オーラだ」

 ドンッ、と置かれたのは、普通の陶器の皿ではない。

 冷たく光る、分厚く無骨な『銀のステンレス皿(大地の物理防盾)』であった。

 その巨大な防盾(皿)の表面を完全に覆い尽くしているのは、光を吸い込むほどに深く黒ずんだ、超高粘度のカレールー……否、『暗黒魔導士が作り出した底なしの毒沼』だ。

 ルーの下にあるはずの白い大地ライスは、完全にその濁流に飲まれて一切見えない。

「そして……沼の頂点(中心)に鎮座するこの巨大な装甲兵器はッ……!」

 真っ黒な沼の海に浮かぶように乗せられていたのは、容赦ない量のパン粉を纏い、黄金色に輝くまでディープ・フライ(極大火属性魔法)された分厚い豚ロースカツ(物理属性の最強盾)だった。

 さらに、そのカツの上には、とんかつソース(さらなる闇のデバフ)が黒い網の目のようにかけられ、傍らには千切りのキャベツ(自然属性のペラペラな防壁)が一掴みだけ添えられている。

「……フスッ、ククククッ。完璧だ。これほどまでに暴力カロリーに全振りした陣形トッピングは見たことがないぞ」

 私は、添えられていた一本の奇妙な武器……先がフォークのように割れた『先割れスプーン(魔界の三叉槍・トライデント)』を右手で力強く握りしめ、深く暗い絶望の沼(極濃ルー)へと、無慈悲にその切っ先を突き立てたのであった。


「いざ、漆黒の深淵カレールーへ……!」

 私は、右手の中指と人差し指に強い魔力(力)を込め、銀の三叉槍(先割れスプーン)を、重たくどす黒いルーと白米の境界線へ深く突き立てた。

 ズプッ、ムチィッ……。

「……フスッ、なんという重粘度おもみだ。ただの液体魔法(普通のカレー)ではなく、小麦粉とラードとスパイスが限界まで凝縮された『泥の結界(暗黒物質)』そのものではないか」

 すくい上げたルーの断面は、スプーンの上で重力に逆らうように完全にその形状を保ち、ライス(炭水化物の土台)にへばりついて離れようとしない。

 私はそれを、大きく口を開けて一気に放り込んだ。

「……ンッ!!? こ、これは……ッ!!!」

 ドゴォォォンッ!!

 私の脳髄(前頭葉)と胃袋ブラックホールの奥底で、巨大な爆発カロリーが連鎖的に引き起こされた。

「……甘い!? いや、辛い……! ちっ、違うッ! 『濃い』のだッ!!」

 舌に触れた瞬間に襲いかかってきたのは、スパイスの鮮烈な香りでも、軽やかな酸味でもなかった。

 それは、野菜の果ての果てまでをキャラメルのごとく焦がし尽くし、牛肉のエキスを暴力的なまでに圧縮し、さらに強烈な塩分とソース系の酸味(デバフ呪術)が何層にもベッタリと塗り重ねられた、圧倒的な『B級の極み(ジャンク大魔術)』。

「ハッハッハッ! なんという暴力! 上品さなど微塵もない、ただひたすらに兵士の腹を満たし、闘争本能(血糖値)を強制的にブーストさせるためだけに特化したドス黒い味だ!」

 私は狂気じみた笑い声を上げながら、次なる一撃を放つべく、魔界の槍(先割れスプーン)の切っ先を、カレーの沼の上に浮かぶ『黄金の防壁ロースカツ』へと向けた。

 先割れスプーンの利点(チート性能)。それは「すくう」と「刺す」という二つの相反する物理攻撃力を、同時に発動できることにある。

 ザシュッ!!

 私は槍の先端で、カツの分厚い一切れを強引に突き刺した。

 黄金色に輝く衣は、その下に漆黒のルーという沼を敷いているにも関わらず、油の防御力によって未だにカリッカリの硬度(物理防壁)を保っている。

 さらにその上空からは、極めて粘度の高い凶悪な『とんかつソース(さらなる闇の魔力バフ)』がドロリとかけられていた。

「フスッ、フハハハッ! カレーの上にとんかつソースだと!? どれだけ味を塗りつぶせば気が済むのだ、この金沢の暗黒魔導士たちはッ!!」

 私は、刺し貫いたカツと、その下に付着した漆黒のルー、そして白飯ごと、一つの完全なる『破壊の塊(コンボ魔法)』として口内に放り込んだのだった。


「……ゴハァッ、む、むぐぅぅぅッ!!」

 三叉槍(先割れスプーン)によって串刺しにされ、口内(陣地)へと強制突入してきた『Lカツ・ソース付き・暗黒カレールー添え』という名の巨大爆弾。

 私はそれを豪快に噛み砕き、その圧倒的なまでの物理攻撃力(ザクッという衣の食感と分厚い豚肉の弾力)に身を捩った。

「ば、馬鹿な……これほど重厚なルーを下に敷き詰められながら、衣のサクサク感(クリティカル率)が全く落ちていないだと!?」

 そう。沼に沈められていたはずのカツの底面すら、強靭なパン粉の防壁によって一切ふやけていない。

 ザクッ、ジュワァァッ……!

 噛み締めるたびに、豚ロースの暴力的な脂(回復薬)が弾け出し、そこに暗黒ルーの濃厚なカラメルの焦げ味、さらにはとんかつソース(闇バフ)の甘酸っぱさが絡み合い、私の舌上で三つどもえ、四つどもえの『カロリー総力戦』が勃発した。

「ハッハッハッ! なんだこれは、濃いッ! どこまでも果てしなく濃いッ!! 味覚の余白オアシスなどという概念は、この皿の上には存在しないのかッ!?」

 私は狂ったように笑い声を上げながら、三叉槍を次々と皿の上で往復させた。

「……むッ。そうだ、防壁オアシスならばあるではないか」

 私が目を付けたのは、銀の皿の端っこで、暗黒の沼に侵食されまいと必死に耐えている極僅かな『自然の防壁(千切りキャベツ)』だ。

 通常の戦術(食べ方)であれば、この濃すぎるカツとルーの猛攻による口内のダメージを、キャベツの水分でリセット(回復ターン)するために使うべきだろう。

「だが……それでは戦友(暗黒魔導士たち)に失礼というものだッ!」

 私は迷うことなく、三叉槍のフォーク部分を使ってキャベツをグサリと刺し、そのまま残りの匙部分で真っ黒なルーとライスを同時にすくい上げた!

「見ろ! この魔界の槍(先割れスプーン)だからこそ可能な、斬撃(刺突)と重力魔法(すくい上げ)の強制融合ハイブリッド・スペルをッ!!」

 私は、キャベツという一抹の良心(回復魔法)すらも、暗黒のルーでドロドロの黒に染め上げながら、一気に胃袋の奥底へと放り込んだ。

「ングッ、フハッ……おおおっ!! キャベツのシャキシャキとした水分が、ドス黒いルーと混ざり合うことで、奇跡のような『甘みのスパイラル』を生み出している!」

 キャベツの瑞々しさが、超高濃度のルーをマイルドに引き伸ばす触媒となり、かえってルーの持つ複雑なスパイスの香りを鮮明に浮かび上がらせたのだ。

「完璧な計算(魔術構築)だ。キャベツ、カツ、ソース、ルー、ライス、そして先割れスプーン……。この銀の盾(皿)の上にあるものは全て、兵士(労働者)を極限状態までトランス(カロリー摂取過多)させるための、完璧な包囲網だったというわけか!」

 私は吹き出す汗(デトックス効果)を拭うことすら忘れ、無敵の狂戦士バーサーカーのように皿との死闘に没入していったのであった。


「ハァッ……ハッハッハッ! まだまだだ、魔神(大盛りカツカレー)よ! これしきの重力魔法(ルーの重さ)で私を屈伏させられると思うなッ!」

 巨大な銀盾(ステンレス皿)の上で展開されていた、黄金の物理盾(Lカツ)と漆黒の毒沼カレールーの猛攻も、ついに終盤へと差し掛かっていた。

 私の右腕が握りしめる先割れスプーン(魔界の三叉槍)の猛スピードな反復詠唱(かき込み)により、残り三分の一まで削られた『B級ジャンクの最高峰』。

「……フスッ。だが、ここにきて、さすがの私の胃袋ブラックホールも、その底知れぬカロリー(暗黒物質)の質量に警戒警報(満腹信号)を発し始めたか」

 そう。金沢の暗黒魔導士たちが生み出したこのカレールーは、単なる辛さだけの攻撃ではない。

 小麦粉を限界まで焦がし、豚肉のエキスと強烈な塩分、そして山ほどのスパイスを極限まで『煮詰めきった』その重さこそが真の武器なのだ。

 カツの油(物理ダメージ)と、ルーの重み(継続デバフダメージ)。それが胃の奥底にズンッと蓄積し、並の冒険者(一般人)であればとっくに匙を投げ、回復魔法(水)をがぶ飲みしているところだろう。

「だけどな……! この暴力的な強烈さ(塩分)と、胸焼けしそうなほどの分厚い油の旨味(油膜のバフ)こそが、労働者たち(狂戦士)を午後からの過酷な戦場(仕事)へと向かわせる、最強の軍事食レーションなのだ!」

 私は、カウンターの端に置かれた福神漬けの赤い小さな山(唯一の光属性回復アイテム)に目を向けた。

「いでよ、赤き癒やしの水晶(福神漬け)よッ!」

 私は先割れスプーンで、赤々とした福神漬けをすくい上げ、残ったカツとルーの荒野へと投下した。

 ポリ……ポッ、ポリポリィッ!

 口の中(最前線陣地)で、甘ずっぱく爽やかな音が弾けた。

「……これだ! ドスの効いた茶色と黒の世界に、一瞬だけ差し込む一条の光(酸味の癒やし)!! これで、私の全ステータス(食欲)が完全に全回復したぞ!」

 私は、福神漬けによる完璧な一時バフ(リフレッシュ効果)を得て、皿の上にこびりつく漆黒のルーとライスを一粒残らず刈り取るべく、三叉槍を横に寝かせて最後の突撃ラストアタックへと向かったのだった。


「……ふうっ、ごはぁぁぁっ……!!」

 巨大な銀の結界(ステンレス皿)の上には、もはや一滴の沼(暗黒ルー)の痕跡すらも残っていなかった。

 私は、最後の米一粒、そしてカツからこぼれ落ちた衣の欠片一つたりとも逃すことなく、先割れスプーン(魔界の三叉槍)に乗せて己の胃袋ブラックホールへと完全に叩き込んだ。

 カチャリカチャカチャカチャリッ。

 銀の皿を激しく引っ掻いた魔法戦の爪痕。

 それは、兵士サラリーマンや若い戦士(学生)たちが、カロリーの化け物(金沢カレー)と凄絶な乱戦を繰り広げた証であった。

完全制圧コンディション・オールグリーンだ。……ククリ、見事なまでの攻撃魔法(脂肪と糖と塩分の暴力)だったぞ」

 私は、テーブルに備え付けられていた紙ナプキン(使い捨ての防護符)を手に取り、焦げたような香りのするドス黒いソース(闇属性の呪毒)でベタベタに汚れた口の周りを無造作に拭った。

「ごちそうさまでした。素晴らしい陣形(味とお得感)だった」

「あいよっ! ありがとね、また来てや!」

 カウンターの奥で、未だに鍋(魔導炉)と格闘を続ける厨房の暗黒魔導士(店員NPC)が、ニカッと笑って威勢の良い声を返してくる。

 私は銀貨数枚(千円札と小銭)を食券の代わりに支払い、満足げな溜息とともに店を後にした。

「……ゲップッ! ッ!? おおお……なんという分厚い油の匂い(闘気)だ」

 外に出た私を待っていたのは、金沢特有の『弁当忘れても傘忘れるな』という言葉の通り、重たく垂れ込めた分厚い雪雲(自然の結界)と、肌を刺すような冷たい北陸の海風であった。

「だが、何ということもないな。今の私の体内(炉心)は、Lサイズの黄金のカツと暗黒魔導の激しいルー(カロリー)によって、完全に『無敵の炎』が燃え盛っているのだからなッ!」

 私の体からは、極厚の防寒具(厚手のダウン)の上からでも、周囲の空気を歪ませるほどの圧倒的な物理的熱量(ただの汗と代謝の良さ)が立ち昇っているに違いない。

「フハハハッ! これぞ金沢。華やかなる百万石の裏に潜む、兵士たちの真の魔獣拠点の力か!!」

 金沢の暗黒魔導士の沼(Lカツカレー)を見事討伐した私は、その重すぎる胃袋(腹の出っ張り)をさすりながら、次なるルート……そう、ついにこの第6部(ローカル線討伐)における『最終決戦の地』へと向かうための決意を固めた。

「待っていろ、九頭の竜が棲むという福井の魔境よ……ッ!!」

 私はまだ見ぬ巨大魔獣ラスボス――ソースかつ丼とおろしそばの最凶コンボ――に思いを馳せ、北陸の鈍色の空の下、力強く足を踏み出したのであった。

(第41話 了)



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