『その縄、魔法につき。〜十九歳の縛術師は、殺さずの技術で乱世を縛り上げる〜』1話 その縄、魔法につき
剣が強さの証であり、
魔法が力の象徴である世界で、
一人の青年は「殺さない技術」を選びました。
この物語は、
敵を倒す話ではなく、
争いを“縛る”話です。
どうぞ、少し変わった異世界の戦いをお楽しみください。
剣先を向けられた状態というのは、何度経験しても慣れないものだ。
囲まれている青年――名をリオネルという――は、そう内心で思いながら、両手をゆっくりと上げた。
まだ十九。
少年の面影をわずかに残したその顔立ちは、この緊迫した状況にはあまりにも不釣り合いだった。
「……抵抗はしません。できれば、刃物は使わない方向でお願いします」
その声音は落ち着いており、どこか他人事のようですらある。
それが、騎士たちの神経を逆なでした。
「ふざけるな!」
「包囲されている立場が分かっているのか、若造!」
嘲るような笑い声が上がる。
剣を構える腕に、わずかな油断が生まれた。
リオネルは一つ、小さく息を吐いた。
「……やっぱり、そうなりますよね」
次の瞬間だった。
彼の腰元から放たれた三本の縄が、先を争うように宙を走った。
空を裂く音。
絡みつく衝撃。
「なっ――!?」
剣を振るう間もなく、騎士たちの腕と脚が縛め取られる。
縄は硬く、正確に、そして容赦なく――しかし、致命的な締め付けは一切なかった。
倒れ伏す騎士たちを見下ろし、リオネルは静かに告げる。
「殺す理由が見当たりません」
それだけ言って、彼は踵を返した。
――この縄が“魔法”だと、彼らが理解するのは、もう少し後の話だ。
第1話をお読みいただき、ありがとうございます。
リオネルが使うのは、派手な攻撃魔法でも、剣技でもありません。
しかし彼の「縛術」は、確実に相手の行動を止めます。
なぜ彼は殺さないのか。
なぜ縄なのか。
そして、この力はどこから来たのか。
次話から、リオネルの過去と、この世界の仕組みが少しずつ明らかになります。
よろしければ、引き続きお付き合いください。




