第5話 図書室の彼女
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は三角関係がはっきり形になる回です。
新キャラは、空気を壊さず、でも確実に関係を揺らす役割になります。
俺は神谷恒一。
自重という名の理性は、そろそろ限界を迎えつつある。
昼休み。
次の授業で使う資料を探すため、俺は図書室に足を運んだ。
「……あ」
先客がいた。
窓際の席で本を読んでいたのは、昨日田中が話題に出した女子だった。
同じクラスだが、あまり話したことはない。
名前は――。
「白石凛さん、だよな」
声をかけると、彼女はゆっくり顔を上げた。
「……神谷くん?」
「資料、探してて」
「そっか」
それだけの会話。
本当に、それだけのつもりだった。
「神谷くん」
(……なんだ)
「この距離、この静寂。この構図――」
(黙れ)
「極めて“誤解を招く”」
(今それ言うな)
白石さんは本を閉じ、俺の方をじっと見る。
「最近さ」
「?」
「桜庭さんと、ちょっと雰囲気違わない?」
――来た。
「別に、そんなことは」
「ふーん」
この“ふーん”もまた、別の意味を含んでいる気がした。
「私はね」
白石さんは小さく息を吸ってから言った。
「神谷くんが、ちょっと気になってる」
心臓が、はっきりと音を立てた。
(来たぞ……)
「率直でよろしい。非常に好ましい」
(褒めるな!)
「えっと……」
俺は言葉に詰まった。
違う。
俺は誰とも付き合うつもりはない。
自重すると決めたんだ。
「今すぐ返事はいらないよ」
白石さんは、意外なほど落ち着いた声で続ける。
「でも、避けられるのは嫌かな」
「……」
「普通に話してくれるだけでいい」
それだけ言って、彼女は席を立った。
――その瞬間だった。
図書室の入口で、見慣れた姿が止まった。
「……恒一?」
桜庭|美咲だった。
視線が交差する。
俺と白石さん。
そして、状況を理解しきれないまま立ち尽くす美咲。
「神谷くん」
(今はやめろ)
「これは、ついに――」
(言うな!)
美咲は一歩近づいてきて、白石さんを見た。
「……お話、終わった?」
「うん」
白石さんは、微笑んだ。
「神谷くんと、ちょっとだけ」
その“ちょっとだけ”が、やけに重く響く。
「そう」
美咲は俺の方を見ない。
だが、拳がきゅっと握られているのが見えた。
――三角形が、完成した。
誰も悪くない。
俺が自重した結果だ。
「神谷くん」
(……)
「君は今、二つの感情に挟まれている」
(分かってる)
「そして、どちらも君にとって“大切”だ」
(……)
俺は、何も言えなかった。
好きだから守りたい幼馴染。
正直な好意を向けてくるクラスメイト。
そして、その間で動けない俺自身。
自重は、もう“守るための選択”じゃない。
ただの先延ばしに、変わり始めていた。
第5話を読んでいただき、ありがとうございます。
幼馴染・美咲と、白石凛。
二人の立場が明確になり、恒一の自重は限界を迎えます。
ここから物語は大きく動きますので、
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次回もよろしくお願いします。




