第40話 過去から来た不確定要素
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は転校生・朝霧凪の登場回です。
主人公の過去と、現在の覚悟を同時に揺さぶる存在として投入しました。
俺は神谷恒一。
腹を括った翌日ほど、世界は平然としている。
昨日の決断で、
空が変わるわけでも、
学校が揺れるわけでもない。
ただ、
心の向きだけが揃った。
「おはよ、恒一」
教室で、美咲が声をかけてくる。
「……おはよう」
それだけで、落ち着く。
「神谷くん」
(……)
「安定期だ」
(フラグ立てるな)
その瞬間。
教室のドアが、勢いよく開いた。
「はーい!
朝のホームルーム前に失礼しまーす!」
聞き慣れない、やけに通る声。
担任が、少し困った顔で言う。
「……えー、今日は転校生を紹介する」
ざわつく教室。
「入ってこい」
次の瞬間。
制服の着崩しも気にしない、
やたら堂々とした女子が入ってきた。
「どーも!」
手をひらひら振る。
「朝霧凪でーす!」
その名前を聞いた瞬間。
俺の中で、
何かが――確実に繋がった。
(……は?)
「神谷くん」
(……)
「過去データ、
一致」
(……嘘だろ)
凪は、教室をぐるっと見回してから、
一直線に――
俺を見た。
「……あ」
そして、
満面の笑み。
「やっっと見つけた!」
教室が、静まり返る。
「え?」
「知り合い?」
「なに?」
視線が、全部こっちに来る。
「神谷くん」
(……)
「最悪の初手だ」
(分かってる)
凪は、迷いなく俺の席まで来た。
「久しぶりだね、恒一!」
名前呼び。
即死級。
「……朝霧?」
「そ!
覚えててくれた!」
覚えているも何も。
忘れられるはずがない。
数年前、
短期間だけ過ごした、
あの時の――
「私さ」
凪は、悪びれもせず言った。
「ずっと恒一のこと、
好きだったんだよね」
教室、爆発。
「はぁ!?」
「ちょ、朝霧!」
担任が慌てる。
「転校初日で何言ってる!」
「えー?
本当のことだし」
凪は、俺を見て言う。
「再会したら、
ちゃんと伝えようって決めてた」
「神谷くん」
(……)
「破天荒型ヒロイン、
投入」
(勘弁してくれ)
横を見ると、
美咲が、完全に固まっていた。
「……恒一?」
低い声。
「説明、
あるよね?」
逃げ場、ゼロ。
「……ある」
放課後。
屋上。
空気が、重い。
「……で?」
美咲が腕を組む。
「どういう関係?」
「……昔、少しだけ会ってた」
「少し?」
凪が割り込む。
「一緒に夏、過ごした仲だよ」
「朝霧!」
「事実じゃん?」
悪気ゼロ。
「神谷くん」
(……)
「嵐だ」
(分かってる)
俺は、はっきり言った。
「……凪」
名前を呼ぶ。
「俺は」
一度、呼吸する。
「今は、
美咲と向き合うって決めてる」
凪は、一瞬だけ目を丸くした。
でも――笑う。
「そっか」
あっさり。
「でもさ」
一歩、近づく。
「好きって気持ちまで、
止める気はないよ?」
視線が、真っ直ぐだった。
「だから」
にっと笑う。
「正々堂々、
勝負しよ?」
美咲が、静かに言う。
「……簡単には、渡さない」
火花が散る。
「神谷くん」
(……)
「三角形、
形成完了」
(ああ)
腹を括った直後に来た、
過去からの好意。
逃げ道は、ない。
でも。
もう、逃げないと決めた。
これは――
覚悟を試される物語だ。
第40話を読んでいただき、ありがとうございました。
ここから明確な三角関係に入ります。
次回は
・美咲の内心を強く描く回
・凪が遠慮ゼロで攻め始める回
どちらにも進められます。
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次回もよろしくお願いします。




