第39話 腹を括るということ
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は主人公・恒一が腹を括る回です。
告白未満ですが、関係性の軸が完全に定まりました。
俺は神谷恒一。
クラスで“前提”が完成してから、二日。
騒ぎは、落ち着いていた。
いや、正確には――日常に溶け込んでいた。
「おはよ、恒一」
朝の教室で、美咲が声をかける。
「……おはよう」
このやり取りに、誰も反応しなくなった。
それが、何よりの変化だった。
「神谷くん」
(……)
「外部環境は、安定期に入った」
(問題は、内側だな)
「正解だ」
俺の中は、静かにざわついていた。
昼休み。
屋上。
風が、少し強い。
「……最近さ」
美咲が言う。
「みんな、落ち着いたね」
「……そうだな」
「でも」
一拍置く。
「恒一は、どう?」
その質問は、
柔らかいけど、核心だった。
「神谷くん」
(……)
「回避は、
今後の不信に繋がる」
(分かってる)
俺は、箸を置いた。
「……正直に言うと」
視線を、空に向ける。
「少し、怖い」
美咲は、黙って聞いている。
「関係が、
ここまで来たのは嬉しい」
「……うん」
「でも」
言葉を選ぶ。
「ちゃんと、言葉にしてない」
美咲が、ゆっくり頷いた。
「……それ、分かる」
否定されなかった。
「神谷くん」
(……)
「彼女は、
“答え”より“覚悟”を見ている」
(……ああ)
午後の授業。
黒板の文字が、頭に入らない。
決めるなら、
先延ばしはしない方がいい。
放課後。
「恒一」
美咲が、自然に隣に来る。
「今日は、一緒に帰れる?」
「……ああ」
校門を出て、少し歩いたところで、
俺は足を止めた。
「……美咲」
名前を呼ぶ。
「なに?」
振り返る。
「少し、話したい」
住宅街の公園。
人は、少ない。
ベンチに腰を下ろす。
沈黙。
「神谷くん」
(……)
「今だ」
(……ああ)
俺は、深呼吸した。
「……俺さ」
言葉が、少し震える。
「ずっと、
自分から動くのが怖かった」
美咲は、何も言わない。
「失うのが、
一番嫌だったから」
それは、本音だった。
「でも」
顔を上げる。
「今は」
視線を、合わせる。
「曖昧なままなのが、
一番怖い」
美咲の目が、揺れた。
「神谷くん」
(……)
「覚悟、
形成完了」
(……)
「だから」
一度、言葉を区切る。
「俺は」
逃げない。
「美咲と、
ちゃんと向き合いたい」
告白の形ではない。
でも、退路はない。
美咲は、少しだけ間を置いてから言った。
「……それ」
「……」
「答えとして、受け取っていい?」
俺は、頷いた。
「……うん」
その瞬間、
美咲の表情が、安心に変わる。
「よかった」
小さく、笑う。
「私ね」
立ち上がって、
一歩近づく。
「恒一が、
そう言ってくれるの、待ってた」
手が、触れる。
握られる。
今回は、俺からだった。
「神谷くん」
(……)
「主導権は、
共有された」
(ああ)
帰り道。
二人の歩幅は、完全に揃っていた。
言葉は、少ない。
でも、足りている。
正式な言葉は、まだだ。
でも。
腹を括るとは、
大げさな宣言じゃない。
逃げないと決めて、
同じ方向を見ることだ。
今日、俺はそれを選んだ。
第39話を読んでいただき、ありがとうございました。
次回はいよいよ
・正式な言葉に踏み込む回
・もしくは変態紳士が盛大にやらかす回
に進めます。
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次回もよろしくお願いします。




