表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/44

第36話 見られている距離

【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】


今回は学校という場所で、

二人の“公然の距離感”が変わり始める回です。

 俺は神谷(かみや)恒一(こういち)

 二回目のデートが終わって、最初の登校日。


 家を出た瞬間から、なんとなく分かっていた。

 今日は――静かに試される日だ。


「おはよう」


 桜庭(さくらば)美咲(みさき)が、いつもの角で待っていた。


「……おはよう」


 立ち位置が、自然に決まる。

 半歩、近い。


「神谷くん」


(……)


「本日は“観測者”が多い」


(朝から嫌な情報だな)


「学校という閉鎖空間では、

 微細な変化が拡大解釈される」


(要するに、見られるってことだろ)


 昇降口。

 靴箱。


「おはよー」


「おはよ」


 挨拶は、普通。

 でも――


「……あれ?」


 誰かの声。


「神谷と桜庭、朝一緒に来てなかった?」


「前から?」


「いや、最近じゃない?」


 背中に、視線。


「神谷くん」


(……)


「第一段階、

 “認知”が進行中だ」


(実況すんな)


 教室に入る。

 席に着く。


 美咲とは、少し離れている。

 それでも、意識は向く。


 ふと顔を上げると、

 美咲もこちらを見ていた。


 目が合う。

 すぐ逸らす――はずだった。


 美咲は、逸らさなかった。


 小さく、笑う。


(……)


「神谷くん」


(……)


「今のは、

 “公然の肯定”だ」


(言い方)


 午前の授業。

 黒板の文字を書き写しながら、周囲の気配を感じる。


 視線が、増えている。


 昼休み。


「恒一」


 美咲が、自然に名前で呼んだ。


 教室が、一瞬だけ静かになる。


「……なに?」


「一緒に、食べよ」


 声は小さい。

 でも、逃げない。


「……うん」


 立ち上がると、

 何人かの視線が、確実に動いた。


「神谷くん」


(……)


「第二段階、

 “確認”に移行」


(やめろ)


 屋上。

 いつもの場所。


 座る距離が、さらに近い。


「……さっきの」


 俺が言う。


「名前で呼ぶの」


「……嫌だった?」


 少しだけ、不安そうな顔。


「……嫌じゃない」


 正直に言う。


「ただ、目立つ」


 美咲は、少し考えてから言った。


「……でも」


「……」


「隠すの、疲れた」


 その一言が、重かった。


「神谷くん」


(……)


「彼女は、

 “公認”への移行を検討している」


(……早くないか)


「段階的だ」


 放課後。


 廊下で、クラスメイトに声をかけられる。


「なあ、神谷」


「……なに?」


「桜庭と、付き合ってんの?」


 直球。

 逃げ場は、ない。


「神谷くん」


(……)


「否定は、

 信頼を損なう」


(……)


 俺は、少しだけ視線を逸らしてから言った。


「……仲は、いい」


 完全な肯定でも、否定でもない。


「ふーん」


 相手は、それ以上突っ込まなかった。


 でも、情報は流れる。


 帰り道。


「……ごめん」


 俺が言う。


「変に、濁した」


「いいよ」


 美咲は、首を振る。


「全部言わなくても」


「……でも」


「私」


 一歩、近づく。


「恒一と一緒にいるの、

 隠したいとは思ってない」


 胸が、きゅっとなる。


「神谷くん」


(……)


「公然の距離感が、

 書き換えられている」


(……ああ)


 手が、自然に触れる。


 今日は、離さなかった。


 学校では、まだ曖昧。

 でも、もう戻れない。


 視線が増えて、

 噂が生まれて、

 距離が定義される。


 それでも。


 俺たちは、

 “見られても、並んでいられる距離”を

 選び始めていた。

第36話を読んでいただき、ありがとうございました。

次回は、美咲の方がもう一歩踏み込む展開か、

周囲が明確に認識し始める回に進めます。

よろしければブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ