第27話 当日という名の混乱
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は文化祭当日のトラブル回です。
分断と再合流、そして小さな独占欲を描いています。
俺は神谷恒一。
文化祭当日ほど、平常心が試される日はない。
校門をくぐった瞬間、空気が違った。
屋台の匂い。
拡声器の声。
やけにテンションの高い生徒たち。
「神谷くん」
(……)
「本日はイベント補正が強くかかる」
(だから言い方)
「感情の振れ幅が、
通常の一・五倍になると想定される」
(厄日じゃねえか)
教室に入ると、すでに喫茶店仕様になっていた。
黒板はメニュー表。
机にはクロス。
即席とは思えない完成度だ。
「神谷、桜庭!」
クラス委員が叫ぶ。
「開店前チェック頼む!」
「了解」
美咲と目を合わせ、頷く。
「……今日、忙しくなりそうだね」
「ああ」
言葉は短い。
でも、隣にいるだけで落ち着く。
開店。
予想以上に客が入った。
「いらっしゃいませ!」
「こちらへどうぞー!」
美咲はホール担当。
俺は裏方寄り。
それが――問題だった。
「ねえ、神谷」
知らない女子が声をかけてくる。
「注文いい?」
「……どうぞ」
そのやり取りを、別の誰かが見ている。
「神谷くん」
(……)
「視線、四方向」
(頼むから実況するな)
さらに悪いことに。
「神谷くん、手伝って!」
美咲の声が、少し焦っている。
ホールに出ると、トラブルの元凶が分かった。
「……コーヒー、切れてる?」
「マジ?」
「え、今から?」
材料不足。
「神谷くん」
(……)
「想定外トラブル発生」
(見れば分かる)
「最適解は?」
(買い出しだろ)
「同意」
俺と美咲が、同時に動こうとした瞬間。
「え、桜庭は残って!」
委員が言う。
「神谷、一人で行ける?」
一瞬の沈黙。
「……行ける」
そう答えた瞬間、
美咲の指が、俺の袖を軽く掴んだ。
「……ごめん」
小さな声。
「すぐ戻る」
それだけ伝えて、教室を出た。
「神谷くん」
(……)
「この分断は、
心理的負荷を生む」
(分かってる)
校外のスーパー。
急いで必要なものをカゴに入れる。
その間も、頭の中は教室のことばかりだ。
「……大丈夫かな」
「神谷くん」
(……)
「信頼しているのなら、
任せるべきだ」
(……ああ)
学校に戻ると、予想以上の事態になっていた。
「……なに、この列」
喫茶店前に、人だかり。
「大繁盛だよ!」
クラスメイトが笑う。
教室に戻ると、美咲が走ってきた。
「……遅い!」
でも、声は怒っていない。
「ごめん」
「……無事でよかった」
その一言で、胸が軽くなる。
「神谷くん」
(……)
「再合流完了」
(その言い方)
しかし、トラブルは終わっていなかった。
「桜庭さん!」
別クラスの男子が声をかける。
「写真、いい?」
美咲が困った顔をする。
周囲の視線が、一気に集まる。
「神谷くん」
(……)
「独占欲イベント、発生」
(今ここで!?)
美咲は、ちらりとこちらを見る。
迷っている。
俺は、一歩前に出た。
「……ごめん」
男子に向かって言う。
「今、忙しいから」
空気が、止まる。
「……あ、そっか」
男子は引き下がった。
美咲が、目を見開く。
「……ありがとう」
「……当然だろ」
言ってから、少し照れた。
「神谷くん」
(……)
「今のは、
“自重しない正解”だ」
(評価やめろ)
夕方。
忙しさが一段落する。
「……疲れた」
美咲が、椅子に座る。
「……ああ」
隣に座る。
「でも」
美咲が言う。
「楽しかった」
同意だった。
文化祭当日。
想定外の連続。
トラブルも、視線も、嫉妬も。
それでも。
俺たちは、ちゃんと一緒に立っていた。
第27話を読んでいただき、ありがとうございました。
文化祭はまだ終わっていません。
次回は「幼馴染の独占欲がはっきり表に出る回」か、
「文化祭のクライマックス」に進めます。
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次回もよろしくお願いします。




