第26話 準備という名の試練
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は恋人になって初めてのイベント、文化祭準備回です。
共同作業による距離感と、周囲の視線を描いています。
俺は神谷恒一。
恋人編に入って、最初の公式イベントがやってきた。
文化祭準備。
――逃げ場が、ない。
「神谷くん」
(……)
「このイベントは、
“共同作業による関係性の可視化”が発生する」
(また難しいこと言ってる)
「つまり」
(……)
「付き合っているかどうかが、
非常にバレやすい」
(最悪じゃねえか)
教室はすでに騒がしかった。
机が端に寄せられ、模造紙と段ボールが散乱している。
「じゃあ、出し物決めよー!」
クラス委員の声。
「定番だけど、喫茶店じゃね?」
「いいじゃん!」
「装飾どうする?」
話はどんどん進む。
「神谷、桜庭」
委員がこちらを見る。
「二人、一緒に装飾係でいい?」
一瞬、空気が止まる。
「神谷くん」
(……)
「これは偶然を装った必然だ」
(言い方)
「……いいよ」
美咲が先に答えた。
「……俺も」
断る理由は、ない。
放課後。
教室に残ったのは、数人。
俺と美咲は、窓際で折り紙を切っていた。
「……細かいね、これ」
「星、だからな」
「文化祭に星ってどうなの」
「雰囲気」
他愛もない会話。
でも、視線が気になる。
「ねえ」
美咲が、小声で言う。
「周り、見てる」
「……ああ」
「でも」
少し笑う。
「一緒に作業するの、嫌じゃない」
胸が、少し熱くなる。
「神谷くん」
(……)
「ここで照れるのは自然だ」
(助言いらない)
段ボールを切っていると、手元が狂った。
「……っ」
指を少し切る。
「大丈夫!?」
美咲が、すぐに手を取る。
「ちょ、ちょっと切っただけだ」
「動かないで」
カバンから絆創膏を取り出す。
手当てされる距離。
近すぎる。
「神谷くん」
(……)
「この距離は危険――」
(今それ言うな!)
「……はい」
絆創膏が貼られる。
「無理、しないで」
「……ああ」
その一連の流れを、誰かが見ていた。
「……ねえ」
後ろから声。
「やっぱ、付き合ってる?」
直球、第二弾。
「神谷くん」
(……)
「回避は困難」
(……)
美咲が、一歩前に出た。
「……内緒」
にこっと笑う。
「文化祭、終わるまでは」
一瞬の沈黙。
それから。
「えー!?」
「なにそれ!」
「マジで!?」
騒ぎが起きる。
「神谷くん」
(……)
「半分、認めたな」
(……ああ)
でも、不思議と後悔はなかった。
準備が終わり、帰り道。
「……ごめん」
俺が言う。
「勝手に、前出させた」
「いいよ」
美咲は、首を振る。
「隠すって決めたのも、二人だし」
「……でも」
「それに」
少し照れたように言う。
「一緒にやってるって、
隠しきれないでしょ」
確かに。
「神谷くん」
(……)
「文化祭は、
“恋人であること”を試す場だ」
(……覚悟しとく)
空が、夕焼けに染まる。
手を繋ぐ。
今度は、誰も見ていない。
「ねえ」
「なに?」
「本番、楽しみ?」
「……少し」
「私も」
文化祭準備は、ただの作業じゃなかった。
協力して、
距離を測って、
隠して、
それでも滲み出る。
――恋人だという事実を。
第26話を読んでいただき、ありがとうございました。
次回はいよいよ文化祭当日、
もしくは幼馴染の独占欲が少し顔を出す回に進めます。
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次回もよろしくお願いします。




