第24話 選ばれなかった場所
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は白石凛の後日談です。
誰かの勝利の裏にある、静かな決着を描きました。
私は白石凛。
この話の、主役じゃなかった方。
朝の教室は、いつもと同じ。
窓から入る光も、チャイムの音も、何も変わらない。
――変わったのは、私の立ち位置だけ。
「おはよう」
「おはよ」
神谷くんと桜庭さん。
二人の声は、以前より少しだけ柔らかい。
それを見て、分かった。
ああ、終わったんだなって。
胸が痛まないわけじゃない。
でも、崩れるほどでもない。
私は、自分が思っていたより、ちゃんと大人だった。
「白石」
神谷くんが、声をかけてくる。
「……なに?」
「ありがとう」
それだけ。
「……急だね」
「いや」
言葉を選んでいるのが分かる。
「色々」
私は、少し笑った。
「それ、便利な言葉だよね」
「……ごめん」
「謝らなくていい」
本音だった。
「選んだんでしょ」
「ああ」
「なら、それでいい」
嘘じゃない。
強がりでもない。
「白石さん」
今度は、桜庭さん。
「……なに?」
「その」
一瞬、迷ってから。
「ありがとう」
同じ言葉。
でも、重さが違う。
「……どういたしまして」
私は、肩をすくめた。
「私、応援役じゃないから」
二人が、少し驚いた顔をする。
「でも」
続ける。
「邪魔もしない」
それが、私の選んだ距離。
「神谷くん」
(……)
――あの声は、もう聞こえない。
変態紳士の解説も、今日はない。
これは、私だけの話だから。
昼休み。
屋上。
風が強い。
フェンスに手を置いて、空を見る。
「……負けたな」
口に出してみる。
悔しい。
少しだけ、羨ましい。
でも、不思議と後悔はない。
私は、ちゃんと好きだった。
ちゃんと向き合った。
ちゃんと、身を引いた。
それでいい。
放課後。
帰り道。
スマホが震える。
『今日は、ありがとう』
神谷くんからだった。
短い文。
余計な言葉は、ない。
『どういたしまして』
同じだけ、短く返す。
空が、少し赤い。
この街で、
私はまた別の恋をするかもしれないし、
しないかもしれない。
それでも。
選ばれなかった場所に、
私は、ちゃんと立っていた。
それが、誇らしかった。
第24話を読んでいただき、ありがとうございました。
三角関係の一角として、白石凛は自分なりの答えを出しました。
ここから物語は、恋人編の次の段階へ進みます。
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次回もよろしくお願いします。




