第22話 余計な助言
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は恋人編に入ってからの“余計な助言回”です。
変態紳士は引っ込んだわけではなく、形を変えて関わってきます。
俺は神谷恒一。
恋人編に突入して三日目。
結論から言うと――
静かに難易度が上がっている。
「神谷くん」
(……)
「恋人関係における最重要課題は“距離感”だ」
(また始まった)
朝の通学路。
美咲とは、少し離れて歩いている。
昨日の“バレかけ”を踏まえた結果だ。
自然を装う。
でも、意識しすぎて不自然。
「……ぎこちないね」
美咲が小声で言う。
「……ああ」
それでも、笑ってしまう。
「神谷くん」
(……)
「ここで手を繋げば、関係性の安定が――」
(繋ぐな!)
「――いや、訂正する」
(?)
「校門前での接触はリスクが高い」
(珍しく冷静だな)
教室に入ると、いつもの日常。
席に着く。
ノートを出す。
――何も変わっていない。
はずなのに。
「ねえ、桜庭」
女子が声をかける。
「昨日の神谷との件さ」
「……なに?」
「やっぱ、付き合ってる?」
直球すぎる。
「神谷くん」
(……)
「ここでの最適解は――」
(黙れ)
美咲は、一瞬だけ迷ってから言った。
「……仲良し」
それだけ。
「へー」
納得したのか、していないのか分からない反応。
「神谷くん」
(……)
「彼女は“曖昧さ”を選択した」
(助かった)
「評価すべきだ」
(評価やめろ)
昼休み。
屋上。
人はいない。
風が心地いい。
「……疲れるね」
美咲が、フェンスにもたれる。
「学校だと、余計に」
「……ああ」
言葉を探していると、あの声が割り込んでくる。
「神谷くん」
(……)
「助言を許可してほしい」
(嫌な予感しかしない)
「君は、優しすぎる」
(……)
「恋人編では、多少の主張が必要だ」
(具体的には?)
「例えば――」
(やめろ)
「彼女に“好きだ”と伝える頻度」
(……)
「現在、著しく不足している」
心臓が跳ねる。
(……言ってないか?)
「言っていない」
(……)
「“選んだ”と“伝え続ける”は別物だ」
痛いところを突かれた。
「ねえ、恒一」
「……なに?」
美咲が、こちらを見る。
「考え事?」
「……少し」
正直だった。
「無理、しなくていいよ」
その優しさが、逆に刺さる。
「神谷くん」
(……)
「今だ」
(今じゃない!)
でも――
逃げないと決めた。
「……美咲」
「なに?」
「その……」
言葉が、詰まる。
「……一緒にいられて、嬉しい」
美咲は、目を見開いてから、ゆっくり笑った。
「……うん」
「それだけで、十分」
胸が、少し軽くなる。
「神谷くん」
(……)
「今のは、良い」
(評価すんな)
「ただし」
(まだあるのか)
「頻度を――」
(もういい!)
放課後。
二人で帰る道。
「ねえ」
「なに?」
「さっきの、嬉しかった」
「……そっか」
「うん」
それだけの会話なのに、満たされる。
「神谷くん」
(……)
「助言は、的確だっただろう?」
(……少しはな)
「ふふ」
(笑うな)
恋人編。
正解はない。
でも、間違いも少しずつ分かってくる。
自重は、完全には消えない。
変態紳士も、相変わらずだ。
それでも。
俺は一歩ずつ、
“選んだ後の関係”を、学び始めていた。
第22話を読んでいただき、ありがとうございました。
恋人になってからの関係は、静かに難しくなっていきます。
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次回もよろしくお願いします。




