第2話 幼馴染は距離が近い
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は幼馴染側から見た違和感を少し混ぜた回です。
「自重」が必ずしも正解じゃない、という空気を出し始めています。
俺は神谷恒一。
昨日も今日も、変わらず幼馴染を好きなまま、自重を続けている。
……はずだった。
「おはよ、恒一」
登校中、後ろから当たり前のように声をかけられる。
振り返らなくても分かる。桜庭美咲だ。
「お、おはよう」
俺は必要以上に距離を取るように、半歩だけ前に出た。
「……なんでちょっと逃げた?」
「逃げてない。偶然だ」
そう言いながら、内心では必死だった。
近い。とにかく近い。
「冷静になりたまえ神谷くん。これはいわゆる“幼馴染距離”というやつだ」
(分かってる! だからこそ危ないんだろ!)
「彼女は無意識だ。だが君は意識している。この非対称性こそが恋愛の醍醐味――」
(語るな!)
美咲は俺の横に並ぶと、首をかしげてこちらを見てくる。
「ねえ恒一。最近さ、なんか変じゃない?」
「……そうか?」
「うん。前よりちょっと……よそよそしい」
心臓が嫌な音を立てた。
(バレてる……?)
「いや、気のせいだろ」
「ほんとに?」
じっと見つめられる。
無邪気で、疑うことを知らない目。
「今こそ真実を打ち明ける好機だ」
(黙れ!)
「“実は君が好きで、だが私の中の紳士が危険すぎるため――”」
(誰がそんな説明するか!)
俺は視線を逸らしながら、できるだけ平静を装った。
「最近、考え事が多いだけだ」
「ふーん……」
納得していない様子だったが、美咲はそれ以上踏み込んではこなかった。
その優しさが、逆に胸に刺さる。
教室に入っても、美咲は何度かこちらを気にしていた。
それを視界の端で感じるたび、俺は自分の判断が正しかったのか分からなくなる。
「神谷くん。君の自重は彼女に不安を与えている可能性が高い」
(だからってどうしろって言うんだよ)
「簡単だ。距離を縮めたまえ」
(無理だ)
「では、せめて自然体を装いたまえ」
(それが一番難しいんだよ……)
放課後、下校途中。
気づけばまた美咲と二人きりになっていた。
「ねえ恒一」
「なんだ?」
「……私、何かした?」
その一言で、胸がぎゅっと締め付けられた。
違う。
悪いのは俺だ。
「いや、何も」
「じゃあ、前みたいに話してよ」
その言葉に、変態紳士が静かに息を整えるのを感じた。
「神谷くん。君は今、選択を迫られている」
(選択肢なんてない)
俺は小さく笑って、ごまかすように言った。
「……明日な」
「え?」
「明日、ちゃんと話す」
それが精一杯だった。
好きだから、壊したくない。
でも、自重は万能じゃない。
そんな当たり前の事実を、俺はこのとき、まだ軽く考えていた。
第2話を読んでいただき、ありがとうございました。
恒一の自重は、少しずつ美咲との関係に影響を与え始めています。
この先どう転ぶのか、見守っていただけたら嬉しいです。
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