第17話 待たない選択
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は幼馴染・美咲が「待つ以外の行動」を取る回です。
告白に近い本音を伝えつつ、選択は委ねる構成にしています。
俺は神谷恒一。
一週間計画、五日目。
朝の空気が、昨日までと違って感じられた。
理由ははっきりしている。
桜庭美咲が、俺を待っていた。
校門の前。
登校時間ぎりぎり。
普段なら絶対にしないことだ。
「……おはよう」
「おはよ」
声は、いつも通り。
でも、立ち位置が違う。
俺の隣。
半歩、近い。
「神谷くん」
(……)
「これは“変化”だ」
(分かってる)
並んで歩き出す。
会話は、ない。
それなのに、胸がざわつく。
「ねえ」
「なに?」
美咲は前を見たまま言った。
「今日、放課後、時間ある?」
心臓が一瞬、跳ねる。
「……ある」
「じゃあ」
ちらりとこちらを見る。
「私から、お願いがある」
お願い。
その言葉が、重い。
「神谷くん」
(……)
「彼女は、動く決意をした」
(……)
「受け止める準備を」
(……分かってる)
午前の授業は、ほとんど記憶に残らなかった。
頭の中では、放課後のことばかり考えている。
昼休み。
白石凛と目が合った。
「……今日は、忙しそうだね」
柔らかい声。
「……少し」
「そっか」
それ以上、踏み込んでこなかった。
それが、余計に胸に刺さる。
「神谷くん」
(……)
「この沈黙は、彼女なりの配慮だ」
(……分かってる)
放課後。
美咲に連れられて向かったのは、意外な場所だった。
「……ここ?」
学校の裏手にある、小さな公園。
ブランコとベンチだけの、静かな場所。
「覚えてる?」
美咲が言う。
「小学生の頃、よく来た」
「……ああ」
覚えている。
忘れるわけがない。
「ここでさ」
ベンチに腰を下ろす。
「初めて、喧嘩した」
「……些細なことだったな」
「うん」
小さく笑う。
「でも、ちゃんと仲直りした」
その“ちゃんと”が、胸に刺さる。
「恒一」
名前を呼ばれる。
「私ね」
深く息を吸う。
「待つって言ったけど」
「……」
「それだけじゃ、足りないって思った」
まっすぐ、こちらを見る。
「だから、今日は“選ばせに来た”」
言葉が、はっきりしていた。
「神谷くん」
(……)
「これは、最も危険な局面だ」
(分かってる)
「だが、避けては通れない」
美咲は、少しだけ拳を握る。
「今すぐ答えはいらない」
「……」
「でも」
一歩、距離を詰める。
「私がどんな気持ちで待ってるかは、知ってほしい」
胸が、締め付けられる。
「……好きだよ」
今度は、止まらなかった。
「ずっと」
空気が、止まる。
「神谷くん」
(……っ)
「これは――」
(分かってる……!)
だが、続けなかった。
それ以上、踏み込まない。
「だから」
美咲は、視線を逸らす。
「選ぶなら、ちゃんと選んで」
「……」
「私を、安心させるためじゃなく」
視線が戻る。
「自分のために」
その言葉は、優しかった。
帰り道。
二人で歩く。
距離は、少しだけ近いまま。
「神谷くん」
(……)
「彼女は“待たない”選択をした」
(ああ)
「だが、押し付けてはいない」
(……)
「非常に誠実だ」
(……分かってる)
一週間計画、五日目。
待つ人が動き、
動く人は待ち、
俺だけが、真ん中に立っている。
選ぶ時は、近い。
第17話を読んでいただき、ありがとうございました。
美咲は待つだけの立場をやめ、自分の気持ちを示しました。
残りの期限は、あとわずかです。
よろしければブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




