第14話 一週間計画
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は変態紳士が“本気で理性的な計画”を提示する回です。
暴走ではなく、向き合うための準備期間に入ります。
俺は神谷恒一。
期限が共有された翌朝、世界は何も変わっていないように見えた。
――見えただけ、だ。
「神谷くん」
(……)
「本日より“計画期間”に突入した」
(嫌な言い方するな)
登校中、頭の中は静かだった。
静かすぎて、逆に嫌な予感がする。
「安心したまえ」
(その前置き、信用ならない)
「今回は、極めて紳士的に、理性的に、そして――」
(そして?)
「勝ち筋を描く」
(やめろ)
教室に着くと、桜庭美咲がいた。
目が合う。
彼女は、いつも通りに微笑んだ。
――戻ってきたい場所でいる。
彼女の言葉が、胸に残る。
「神谷くん」
(……)
「一週間計画、概要を説明しよう」
(説明するな)
授業中、変態紳士は容赦がなかった。
「第一段階。君は“自然体”を取り戻す」
(それができないから困ってる)
「第二段階。二人の前で態度を変えない」
(難易度高すぎだろ)
「第三段階――」
(もうやめろ)
「選ばないという選択肢を、最終的に破棄する」
心臓が跳ねた。
(それは……)
「期限がある以上、選択は不可避だ」
(……分かってる)
昼休み。
俺は屋上に逃げ込んだ。
風が強い。
頭を冷やすには、ちょうどいい。
「神谷くん」
(……)
「君は誤解している」
(何を)
「私は、暴走したいわけではない」
(じゃあ何だ)
「君を“守りたい”」
その言葉に、思わず笑ってしまった。
(それ、俺のセリフだろ)
「同義だ」
(違うだろ)
「だが、君の守り方は間違っている」
変態紳士は、淡々と続ける。
「自重は、君を安全にした」
(……)
「しかし同時に、彼女たちを不安にした」
(……)
「よって、計画は修正される」
(修正って何だよ)
「“自重しながら向き合う”」
(無理ゲーだろ)
「可能だ」
(根拠は)
「私がいる」
(それが一番不安なんだよ!)
屋上の扉が開いた。
「……恒一?」
振り向くと、美咲が立っていた。
「ここ、いたんだ」
「……ああ」
距離は、いつも通り。
でも、空気は違う。
「大丈夫?」
それだけの一言が、胸に刺さる。
「……大丈夫」
嘘じゃない。
今は、まだ。
「神谷くん」
(……)
「良い対応だ。過不足ない」
(評価するな)
美咲はフェンスにもたれ、空を見上げる。
「ねえ」
「ん?」
「一週間って、長いね」
「……短いよ」
「そっか」
少しだけ、寂しそうに笑う。
「でも、待つ」
その言葉に、変態紳士が静かに反応した。
「神谷くん」
(……)
「第一段階、成功だ」
(成功って何だ)
「彼女は“待つ”と宣言した」
(……)
「これは、君にとって最大の信頼だ」
(分かってる)
「だからこそ」
(……)
「裏切るな」
その声は、いつもより低く、真剣だった。
放課後。
今度は、白石凛に声をかけられた。
「神谷くん」
「……なに?」
「今日、少し元気?」
見抜かれている。
「……まあ」
「そっか」
白石は微笑む。
「無理してないなら、いい」
その言葉が、優しすぎて痛い。
「神谷くん」
(……)
「第二段階も、概ね良好だ」
(お前、全部チェックしてるだろ)
「当然だ」
帰り道、一人になる。
一週間計画。
理性を保ち、逃げず、選ぶ準備をする。
「神谷くん」
(……)
「最後に忠告しよう」
(なんだよ)
「この計画が破綻する唯一の要因は――」
(……)
「君が、自分を嫌いになることだ」
足が止まった。
(……)
「選ぶという行為は、誰かを失うことではない」
(……)
「君自身を、肯定することだ」
変態紳士の声が、静かに消える。
一週間。
まだ、六日ある。
だが、もう引き返せない。
第14話を読んでいただき、ありがとうございました。
一週間計画が動き出し、恒一の心境にも変化が見え始めました。
次回は、この計画が早くも揺さぶられます。
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次回もよろしくお願いします。




