第13話 待つという選択
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は幼馴染・美咲視点で描く「待つ側」の回です。
動かない選択にも、ちゃんと覚悟があることを描いています。
私は桜庭美咲。
恒一が「一週間」と言った日から、時間の進み方が変になった。
朝、目が覚める。
スマホを確認する。
メッセージは、来ていない。
「……当たり前だよね」
自分で決めた期限だ。
急かすつもりは、ない。
……ない、はずだった。
教室に入ると、神谷|恒一はもう席に着いていた。
目が合いそうで、逸らされる。
(逃げないって言ったのに)
でも、完全に距離を取られているわけじゃない。
挨拶はする。
話しかければ、ちゃんと返ってくる。
――それが、余計につらい。
「美咲」
友達に呼ばれて返事をする。
笑っている自分が、どこか他人みたいだった。
(私、なにやってるんだろ)
昼休み。
恒一は、図書室の方へ行った。
分かっている。
あの人のところだ。
(……見に行くのは、違う)
分かっているのに、胸がざわつく。
――取られる。
その言葉が、頭から離れない。
「桜庭さん」
声をかけられて振り向くと、白石凛が立っていた。
「……なに?」
「ちょっとだけ」
私は一瞬、迷ってから頷いた。
「……一週間、だってね」
直球だった。
「恒一が、そう言った」
「うん」
白石さんは、穏やかな顔をしている。
「待つの、得意?」
「……分かんない」
正直な答えだった。
「私も」
意外な返事。
「でもね」
白石さんは、視線を逸らさず言う。
「私は動く」
胸が、きゅっとなる。
「邪魔するって意味じゃないよ」
「……じゃあ、なに?」
「恒一が“普通でいられる時間”を、増やす」
それは、私ができていないことだった。
「桜庭さんはさ」
白石さんは、少しだけ柔らかく言う。
「一緒にいるだけで、彼を緊張させてる」
反論したかった。
でも、できなかった。
「……昔は、そんなことなかった」
「うん」
「でも、今は違う」
白石さんは、静かに続ける。
「彼は、あなたを失うのが怖い」
胸の奥が、熱くなる。
「それって……」
「大事にされてる、ってこと」
分かっている。
でも、それだけじゃ足りない。
「白石さん」
「なに?」
「……私は、待つ」
自分でも驚くほど、はっきり言えた。
「動かない、って意味じゃない」
「……?」
「恒一が戻ってきたい場所で、いる」
それが、私の選択だった。
白石さんは、少しだけ笑った。
「そっか」
「そっちも、逃げないんでしょ」
「うん」
短い沈黙。
「……やりづらいね」
「ほんと」
二人で、小さく笑った。
放課後。
帰り道で、恒一と並ぶ。
「……今日さ」
「なに?」
「変なこと、なかった?」
「……なかった」
嘘は、ついてない。
「そっか」
それだけで、少し安心した自分がいた。
家に帰って、ベッドに倒れ込む。
一週間。
待つだけじゃ、足りない。
でも、壊したくもない。
(……好きだよ、恒一)
口に出さない。
約束だから。
私は待つ。
逃げずに、ここで。
それが、私の戦い方だ。
第13話を読んでいただき、ありがとうございました。
待つ美咲、動く白石、そして追い詰められる恒一。
一週間は、静かに、しかし確実に進んでいきます。
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次回もよろしくお願いします。




