第11話 選択の時間
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
今回は、主人公が「選ばない」という選択を言葉にし、
期限を突きつけられる回です。物語が明確に次の段階へ進みます。
俺は神谷恒一。
放課後のチャイムが鳴った瞬間、時間が一気に重くなった。
約束は、校舎裏。
逃げ道のない場所を、無意識に選んでしまった自分を恨む。
「神谷くん」
(……)
「心拍数、上昇。判断力、低下」
(黙れ。今日は俺が話す)
教室を出ると、桜庭美咲が既に待っていた。
腕を組んでいるわけでも、怒っているわけでもない。
ただ、真剣な顔で、俺を見ている。
「来てくれて、ありがと」
「……ああ」
校舎裏は静かだった。
遠くで部活の掛け声が聞こえるだけ。
「恒一」
名前を呼ばれるだけで、胸が締め付けられる。
「昨日言ったこと、覚えてる?」
「……逃げないで、だろ」
「うん」
美咲は一歩、距離を詰めた。
「今日はね」
息を吸う。
「はっきりさせたい」
視線が、逸れない。
「神谷くん」
(……)
「ここで曖昧な言葉を使えば、彼女は納得しない」
(分かってる)
「だが、正直に語れば――」
(それも分かってる)
俺は拳を握りしめた。
「……美咲」
「なに?」
「俺は」
喉が渇く。
「誰とも、付き合うつもりはない」
美咲の目が、わずかに見開かれた。
「それは……」
「逃げじゃない」
そう言い切るのに、勇気が要った。
「今は、選べない」
「どうして?」
即座に返ってくる。
「理由は……」
言えない。
二重人格のことは、まだ。
「言えない理由なら、いらない」
美咲は、少しだけ声を荒らげた。
「恒一、それってさ」
唇を噛む。
「私も、白石さんも、同じ場所に置いてるってことだよ?」
「……」
「どっちも大事、どっちも選ばない」
その言葉は、鋭い。
「それ、優しさじゃない」
昨日と同じ言葉。
胸が痛む。
「分かってる」
それでも、今はこれしか言えなかった。
「でも、今の俺は――」
視界が、揺れた。
「神谷くん」
(……やめろ)
「君の理性は限界だ」
(まだ……!)
「このままでは、彼女をより深く傷つける」
(……)
美咲が、不安そうに俺を見る。
「……恒一?」
息を整える。
「……俺は」
言葉を選ぶ。
「今は、答えを出せない」
「……そっか」
美咲は、少しだけ笑った。
それは、どこか諦めたような笑顔だった。
「じゃあ」
小さく息を吐く。
「期限、決めよ」
「……期限?」
「うん」
はっきりと、こちらを見る。
「いつまでに、答え出すか」
逃げ道が、完全に消えた。
「神谷くん」
(……)
「これは、悪くない提案だ」
(お前は黙ってろ)
俺は、しばらく黙ったあと、言った。
「……一週間」
短すぎる。
でも、これ以上は引き延ばせない。
「一週間後」
美咲は、ゆっくり頷いた。
「分かった」
そして、付け加える。
「その時まで、逃げないで」
「……約束する」
嘘はつかなかった。
「じゃあ」
美咲は一歩、下がる。
「それまでは、普通にしよ」
「……できるか?」
「できるよ」
そう言って、背を向けた。
夕暮れの中、その背中は少しだけ小さく見えた。
「神谷くん」
(……)
「期限が生まれた」
(ああ)
「次は、白石嬢の番だ」
(……分かってる)
一週間。
選択の猶予。
そして、その間に――
“俺ではない俺”が、再び前に出てこない保証はない。
自重は、もはや盾にならない。
これは、決断の物語だ。
第11話を読んでいただき、ありがとうございました。
恒一に一週間という猶予が生まれました。
その間に、白石凛との関係、そして変態紳士の存在がどう動くのか。
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次回もよろしくお願いします。




