第1話 自重という名の理性
【俺は幼馴染が好きだ!!~だが変態紳士という二重人格のせいで自重します~】
幼馴染ラブコメです。
ただし、主人公にはちょっと……いや、かなり厄介な欠陥があります。
重すぎないテンポで進めていく予定なので、気楽に読んでもらえたら嬉しいです。
俺は神谷恒一。
ごく普通の高校二年生……と言いたいところだが、残念ながら一つだけ致命的な欠陥を抱えている。
それは、俺の中に変態紳士と名乗る二重人格が存在していることだ。
――いや、正確には存在している「らしい」。
「冷静になりたまえ、神谷くん。今の君の視線は平均より〇・七秒長い。これは立派な好意の兆候だ」
(うるさい。黙れ。俺はただ前を見ていただけだ)
脳内で即座に反論するが、当然ながら返事は返ってくる。
「否定は不要だ。君が桜庭美咲嬢を想っていることは、統計的にも感情的にも明白だ」
そう。
問題の核心はそこにある。
俺は幼馴染の美咲が好きだ。
小さい頃から一緒で、家も近くて、クラスも同じ。
気づけば隣にいるのが当たり前で、笑う顔を見ると自然と肩の力が抜ける。
そんな存在を、好きにならない方が無理だろう。
だが――。
「今だ。今こそ告白の好機だ神谷くん。朝の挨拶に一言添えるだけでいい。“君の前髪は今日も尊い”と」
(言うか! そんなこと言ったら即通報だろ!)
「安心したまえ。紳士とは常に誠実だ。欲望に忠実なだけで」
(それを変態って言うんだよ!)
俺は小さくため息をついた。
この変態紳士は、俺の恋を本気で応援している“つもり”なのが余計に厄介だった。
もし万が一、告白なんてしてしまって、
その瞬間に人格が入れ替わったら?
もし付き合えたとして、
大事な場面でこいつが表に出てきたら?
考えるだけで背筋が凍る。
「つまりだ、神谷くん。結論としては――」
(分かってる。言うな)
「自重、だな」
その通りだ。
好きだからこそ、付き合わない。
大切だからこそ、距離を保つ。
それが俺なりに出した答えだった。
「実に非効率的だが、君らしい判断だ。評価しよう」
(評価はいらない)
教室の前方で、美咲がこちらを振り返って手を振る。
その笑顔に胸が締め付けられるのを感じながら、俺は今日も平然を装う。
――これは、俺が恋を封印する物語だ。
第1話を読んでいただき、ありがとうございます。
恒一と変態紳士、そして幼馴染・美咲の関係はここから少しずつ動いていきます。
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次回もよろしくお願いします。




