表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マッチングサイトのご利用方法について  作者: 神田哲也(鉄骨)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/22

第二十二話

「アルム、もう終わっちゃうじゃない!」

「えっ!?」


 夢中で食べ続けて、いつの間にか容器の中に残っている実は残り数個になっていた。


「本当だ……」


 いつの間に無くなったんだろう?


「ちょっと、残りの実は私に譲りなさい! この果実、魔法力回復に丁度いいのよ!」

「えっ? 本当に? じゃあ私も魔法力回復してるのかな?」

「貴方の場合、そんなに魔法力を使うこともないでしょう? 最近は身体強化魔法ぐらいしか使ってなかったじゃない」

「それは、ジョリーだって理由はわかってるでしょ? 今はあまり大きな魔法を使うべきじゃないって」

「わかってるわ。私だって節約してたもの。でも、私とは消費量が違うじゃない」

「それはそうだね」

「だったら――」


 ジョリーが容器に手を伸ばそうとしたから、それを手で制した。


「待ってジョリー! 大丈夫だから!」

「……何よ?」


 怪訝な顔をするジョリーを見て、私は笑みを浮かべる。

 ふふふ、大丈夫だよジョリー。そんな顔をしなくても、取らないから。

 私は箱を開けてその中から目当てのものを見つけると、両手にひとつずつ持ってジョリーの目の前に掲げた。


「じゃーん!」

「なっ!? それは!?」


 それを見てジョリーの目が見開かれてまん丸になった。

 私が両手に持っているのはそう、カンヅメ! 今まで私たちが食べていたものとまったく同じ絵が描かれているものだ。

 これこそが私が大丈夫といった理由――ジョリーが驚いた理由。

 何故ならば、カンヅメはまだまだあるんだから!


「多分同じもののはずだよ!」

「……そう、そうなのね!」

「うん、うん!」


 頷きあう私たち。


「じゃあ、食べよう!」

「ええ!」


 私たちは一人ひとつずつ容器を持って、そう宣言した。


 ――それから少しの時間が経って。


 私たちは揃って汗をかいていた。


「……ねえ」

「……うん」


 そこにさっきまでの勢いは、もうない。


「ジョリー、どうしよう……?」

「あ、貴方が考えなさいよ……」

「そ、そんなあ」


 ジョリーにそう言われて、我ながら情けない声を出してしまう。

 私たちの前に転がっているのは、空になったカンヅメの容器。

 一個や二個じゃない。数は十個。

 それは、あの箱の中にあったカンヅメの総数に他ならなかった。


「これは、何かの間違いよ」

「え?」

「そうよ、いくら美味しかったからって、私たちだけでこんなに食べられるはずがないもの」

「え? 何を言ってるの、ジョリー?」


 ジョリーが何か言い出した……!?


「そうよね、アルム!」

「ちょっと、落ち着いてよ、ジョリー!?」

「そうでしょ!? そうだと言いなさい!」


 両肩に手を置かれて、前後に揺さぶられた。

 ジョリーの目がグルグルしてる。

 これはまずい。混乱の魔法をかけられたときのジョリーだ!?


 こういうときは……!


「目を覚まして! ジョリー!」


 そんな声とともに、ジョリーの頭をひっぱたく。

 もちろん本気じゃない。けど、目が覚めるように、結構痛いように。


「い、痛あーーー!?」


 ごろごろと地面を転がるジョリー。

 ……あれ? そんなに強くたたいたかな? でも確かに、体がすごく軽いような気がする。

 そのまま動かなくなるジョリーに心配して近寄る。


「……良かった、死んだりしてないよね」


 ちゃんと呼吸しているのがわかったから、ホッと胸をなでおろす。


「良かった、じゃ、ないわよー!?」


 突然起きたジョリーは、元気いっぱいだった。


「あ、起きた。ねえねえ、ジョリー」


 私は今気づいたことをジョリーに聞いてほしくて、話しかける。


「ちょっと!? 私を叩いたことをそのまま無視するつもり!? 本当に痛かったわよ!?」

「それはゴメンってば。でさ、ジョリー」

「話聞いてる!?」


 喚くジョリーだったけど、でもどんなときでもジョリーが話を聞いてないなんてことはなかったから、大丈夫。


「なんだか、体が軽いような気がするんだけど、どう思う? 今のだって、なんだか体が軽くて、つい力が入っちゃっただけなんだよ。それに、ジョリーもすぐ起き上がってきたし」


 私の言葉に、ジョリーはハッと気が付いたみたいな表情を浮かべた。

 それで、何かを考えこむように、あごに手をあてる。


「……確かに、すごい衝撃でびっくりしたけど、痛みはそんなに……? 確かに、体内に満ちる魔力は回復してる。……いえ、増幅してる? まさか……?」


 その独り言に、私も自分の魔力に集中してみる。

 すると、確かに魔力が満ちていて元気がいっぱいだった。


「アルム、これはもしかするかもしれないわよ!」

「ほんと!?」

「ええ! 今ならどんな上級魔法だって、連発できると思うくらい!」


 こうなったきっかけなんて、もうマサから貰った食べ物――カンヅメしかない。

 これがもっとあれば、きっと魔王にだって――。


「もっと送ってもらえるように、頼んでみなきゃ!」

「そうね、それがいいわ! お金については追加で送っておけばいいかしら?」

「そうだね! じゃあ十万ゴルダ送っておけばいいかな?」

「いいわね! これだけのものが手に入るなら、異存はないわ」

「わかった、早速送っちゃうね」

「ええ、お願いね」


 私は手早くマサに送金してから、早速頼もうと魔法版を手にした。


「あ、そういえば、マサと電話が繋がったままだった?」

「そうなの? じゃあ、もう聞こえてるのかしら?」

「でもおかしいな? 木の板みたいなのしか見えないや」

「ほんとね? どういうことかしら?」

「とりあえず、呼びかけてみるね。マサー! 聞こえてるー!?」


 魔法版に向かってマサを呼んでみるけど、反応はなかった。


「何も返事がないわね……」

「……うん」


 そのあと何度呼んでも、マサが反応してくれることはなかった。

 次第に私たちの顔は曇っていく。

 呼びかけの声も、小さくなっていった。


「……あの、マサ? ……マサさん? ……マサさーん……?」

「……えーと、反応してくれない? もしかして、無視されてるの、私たち?」

「…………マサさん? あの、聞こえてないですか?」

「…………あの、ごめんなさい。私たち、調子に乗っていたかもしれなくて、その、せめて反応してくれると、その……」


 勝手に盛り上がって、調子に乗って、呆れられた。

 あんなに親切にしてくれたのに、恩を仇で返してしまった。

 後悔の念が押し寄せて、泣きそうになる。


「……ううぅ。どうしよう、呆れられちゃったのかな……」

「……ご、ごめんなさい。謝るわ。だから、反応して頂戴。……お願いよ」


 呼びかけというより、もう謝罪の言葉を投げかけるしかできなくて。

 そんなときだった、。


「…………うん? あれ? 二人とも、どうした?」


 マサの声が聞こえてきた!

 暗闇に、突然光が差しこんできたと思った。


「あっ! マサ!」

「あああ! 良かった、助かったわ!」

「お、おう。どうした!?」


 反応がなかった理由を聞くと、どうやらマサは本を読んでいて集中してしまっていたとのこと。

 何事もなくて良かったけど、本を読ませるような行動をしたのは私たちのほうだから、やっぱりそこはちゃんと謝った。

 優しいマサは笑って許してくれたけど、本当に気を付けないといけない。


「実は――」


 私たちが必死だった理由を聞かれたから、ちゃんと全部正直に話した。


 マサは呆れたのかな? ごはんのときもそうだったけど、食いしん坊だって思われたらどうしよう……!?

 


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ひとまず書き溜め分はこれで終了です。

今後は不定期更新になりますのでご了承くださいませ。


『悠久の放浪者』というタイトルで連載(第一章終了までは定期更新)していく予定です。

もし興味がありましたらそちらもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ