異世界馬生〜精霊王の叡智とすゝむ異世界冒険譚〜
ファンタジーって設定考えるの楽しいですね!
ただ、タイトルセンスが無いのでタイトルは適当です。
気づけばそこは暗闇だった。
それも狭い。脚を伸ばせば何かに当たり、頭を動かしても何かに当たる。
体を動かし状況を確認してみると、どうやら円形または楕円形のものの中に入っているようだ。
何故にこんなところにいるんだ俺?
確か俺は・・・あれ?俺は誰だっけ?名前はフ・・・、ヴ・・・いや違うな。な・・・いやこれも違うような。でも違わないような。何だこれは。いかん名前も覚えていない!元は人間・・・あれ違う?いや人間だった。それは間違いない。だがそれ以上に別の存在だった感覚が拭えない。
と、とりあえず名前のことは置いといて、まずは現状の把握だ。ここは何処か。さっきも感じたように円形または楕円形の何かの中。出入口みたいなものはなく、スペースも狭い。身体もろくに動かせん。頭や脚を動かせるくらいか。
状況はわかった。ほとんど何もわからないことがわかった。次は現状の打開だ。このままこんな暗くて狭いところにずっといるわけにもいくまい。
この狭い空間内に扉は無い。ならば壁を破壊してみるか。少々バイオレンスな気がしないでもないが、閉暗所に閉じ込められているんだ。妥当なアイデアだろう。
となれば動かせる脚で壁を蹴ってみるか。前脚より後ろ脚のほうが力も強いしな。
ん?なんか言葉に違和感が・・・まぁいいか。
そんなわけで、でぇぇぇぇい!
バキィッ!
お!壁を突き破った。案外脆かったな。うおっ!?明るい!つか眩しい!暗闇に目が慣れていたからか、想像以上に光が目に染みる。
それも少し経てば慣れてきた。壁を一点を突き破れば他の部分も多少は脆くなる。そしてやっとの思いで脱出を果たした俺が見たのは
「キュウ?」(え?)
命溢れる森と俺が入っていたであろう卵、そして息絶えた巨大な馬だった。
「キュウ?」(は?)
同じ声をもう一度こぼす俺。なんだこれは?どうなっている?
眼の前の森、それはまぁいい。そして卵。俺はこの中に入っていたのか。そして俺の卵を守るように息絶えている巨大な馬。これが俺の親なのか?なにより自分自身。前脚は見慣れた蹄。卵を突き破った後ろ脚。茶色の肌、というか毛。尻尾。完全に馬である。
「ヒン?」(見慣れたって何だ?)
そうだ。見慣れたって何だ?俺は人間だった記憶はないが、確信はある。だがそれと同様に馬であった認識が強く俺の意識に残っている。
「プヒン」(・・・転生)
ふと脳裏によぎった単語を零す。何も覚えていないが何故か人間だった時の知識は出てくる。そうか。これ転生だ。
貴族の八男だったりスライムだったりドラゴンだったりじゃなかったけど、馬に転生したんだ俺。それも異世界!
何で異世界だってわかるって?俺が入っていた卵だよ!馬って哺乳類だから卵生じゃなくって胎生だってのは小学生で学ぶことだ。いや、中学生か?どっちでもいいか。
つまり、卵から生まれたってことは俺がいた世界とは違う異世界にいるってことだ。というか、俺は俺が知っている馬なのか?見える限りだと馬なんだが、親らしき馬がとにかくでかいんだわ。
確か俺が元いた世界では、一番でかい馬でも肩までの高さである体高が2m位だったと記憶している。それに対してこのペアレント(暫定)、3mはある。デカすぎだろう、そんな馬俺が生きていた世界じゃ存在しなかった。
今の俺は元の世界の大型犬と同じくらいか?生えてる木や葉っぱから換算したもんたがらそもそもの比較が間違っているかもしれんが。
そんなことを思いながら観察していたら、
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[ビッグホース]を取り込みますか?尚、[ビッグホース]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
毒耐性Lv.2:100%
踏みつけLv.2:100%
蹴りLv.2:90%
身体強化Lv.1:50%
HP自動回復Lv.1:10%》
「ピッ!?」(ほわっ!?)
突然のアナウンスに思わず声を上げる。え、何!?ユニーク?可能性の獣??獲得スキル!??
一気にファンタジー感が濃くなってきたな!いや、落ち着け。頼りになったはずの親はもう鬼籍に入っている。となれば、俺はこれから自力で生きていかねばならないんだ。転生ものの小説でよくある展開である。
そして、今出てきたスキル、これが俺の今後を左右する重要なファクターになるのは必定。まずはスキルについて調べねば。ついでにステータスとかが分かれば尚良し。
となれば、
「ヒヒーン!」(ステータス!)
唱えれば眼前にステータスがパッと・・・出ねぇ!
「ヒヒーン!」(ステータスオープン!)
「ヒヒン!」(鑑定!)
「ヒヒーン!」(アナライズ!)
なんだよ、ステータス無いのか!?それとも念じれば・・・出ねぇな!わかってたよ畜生!
ガサガサッ
「グギャ」
と、ステータスについて探っていたら草むらからなんか出てきた。それは緑の体皮、人の子供ぐらいの身長、腰蓑を着けているだけの粗末なカッコウ。
そうだね、ゴブリンだね!この世界でもゴブリンと呼ぶかは知らんが、俺の嘶きに釣られてこっちまで来ちまったか。これまたお約束な展開だな。そうなると次に奴が起こす行動は
「グギャア!」
やっぱり襲ってくるかぁ!となればとりあえず逃げる!生まれたてとはいえそこは馬。更に言うなら異世界産駒。身体は十全に動かせる。2足歩行の生き物に速度で負ける道理はない!
脱兎のごとく逃げ出す俺だが、ゴブリンは逃げ出した俺より俺の親の死体に近寄り、その身にかぶりつき始めた。
別に情があるわけではないが、いい気持ちはしない。とはいえ、産まれたての自分が戦っても勝てるかは未知数。物語やゲームならあのゴブリンをチュートリアル的に倒して経験値を得るんだろうけど、そんな余裕はねぇ!
と思いながら親を貪るゴブリンを見ていると、ゴブリンは苦しみ始めた。泡を吹きながら転げ回りそしてついには動かなくなる。
・・・死んだ?え、毒がなにか?ビッグホースって毒持ちなの?
そう首を傾げていると
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[ゴブリン]を取り込みますか?尚、[ゴブリン]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
絶倫Lv.5:100%
異種交配Lv.10:100%
悪食Lv.4:50%
狂化Lv.1:1%》
ほわぁ?
また出たよ可能性の獣。最初は俺の親。次はゴブリン。えっと、これが俺のユニークスキル?
確か対象を取り込んでスキルを獲得するって言ってたよな。獲得スキルが随分違うが、それはまぁそうだろうな。ビッグホースとゴブリンだもん。にしてもゴブリンの獲得スキル一覧が酷すぎる。絶倫に異種交配、悪食に狂化って。
生き残り繁殖することに特化した生き物なんだな。ファンタジーものにある特徴そのままだ。
ちなみにゴブリンに食われた親の方に目を向けると
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[ビッグホース]を取り込みますか?尚、[ビッグホース]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
毒耐性Lv.2:90%
踏みつけLv.2:90%
蹴りLv.2:80%
身体強化Lv.1:40%》
あれ?獲得スキルのパーセンテージが減ってる?HP自動回復スキルに至っては消えているし。このパーセンテージが獲得確率と仮定すると、身体の破損具合で獲得できる確率が変わるのか。
うーん、これはちょっと損しちゃったかな?HP自動回復とか必需品じゃん。大抵の強キャラが持っているやつ。後はMP自動回復があれば完璧だね。MPという概念あるか知らんけど。
でも獲得確率10%だったからなぁ。獲得出来なかった可能性の方が大きいか。
とりあえず、ここらを探索してみるか。食べられるものを探さないと。つか、食べられる物なんてあるんか?俺ってば初乳を貰いそこねている訳だし、実はヤバいんじゃね?でも卵生だったからなぁ。親の乳で育つ生態してるかもわからん。一縷の望みをかけて探してみるか。
つっても、何を探せばいいんだろう?感覚的にはそこら辺に生えている草を食んでいれば生きていけそうな気はしてる。
そして少し探索すれば他の生き物がチラホラと。鳥にネズミ、ヘビに鹿。そしてスライム。そう、スライム。ゴブリンと並んでファンタジー世界を象徴する雑魚敵の一角。勿論例外もあるが。
姿は当たりのドラ○エ型。アメーバ系じゃなくて良かった。
そんなスライムを見ていたが、『可能性の獣』は発動しなかった。相手が生きていると発動しないのかと思ったが、別の所で発見した死にかけスライムを見ていたところ、またもあの表示が出た。
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[スライム]を取り込みますか?尚、[スライム]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
消化Lv.2:100%
粘液Lv.2:100%
環境適応Lv.1:20%
物理無効Lv.-:1%》
ははぁ〜ん。なるほどね。死体か死にかけ、つまり生命力を著しく欠いている場合取り込むことができるのね。これは発見だ。しかし一度きりのスキルってのが惜しい。相手を倒すたびに取り込んで無眼ループで強くなり無双かますなんて事は出来ないわけか。
しかし、探索を始めて結構経つけど全然疲れないなこの身体。なんかのスキルが働いてるのかな?
そうしてどのくらい経っただろう?探索中に見つけた小川で喉を潤し、川の上流へ足を伸ばし続けていたら石の上に何かがいた。
そう、何かだ。何でこんな抽象的な表現をするかと言えば、それがなんだかわからないから。例えるならそう、光の粒?いや玉か。多分野球ボールくらいの大きさだ。それを注視していると
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[エレメントナイト]を取り込みますか?尚、[エレメントナイト]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
精霊術(雷)Lv.4:80%
MP自動回復Lv.2:70%
念話Lv.2:40%
身体強化Lv.1:20%
精霊の門Lv.-:1%》
「プヒン?」(精霊?)
石の上にいた光の玉は精霊でした。いや、妖精かもしれん。エレメントナイトってことは精霊か妖精の騎士ってことだよな?何でこんなとこにいるんだ?というか『可能性の獣』が反応したということは、この騎士様は死んだか死にかけてるってことか。
《・・・誰だ?そこにいるのは?》
「ブルル!?」(なんだ!?)
《おぉ、知性あるベビーホースとは珍しい。我の言葉を解するものが死の間際に現れるとはなんという幸運》
「プヒーン?」(もしかして聞こえてくるこの声は光の騎士様?)
《光の騎士?あぁ。お主にはそう見えるか。左様。今我の念話スキルで話し掛けているのは、目の前にいる光の玉よ。お主の前で光る我こそ雷の精霊王様に仕える騎士、精霊王様に賜った名をアルザオと申す。それにしても何故、我が騎士だとわかった?》
「ヒヒヒンヒン」(それは俺のユニークスキルによるもので・・・って騎士様はそれどころではないのでは?少なくとも重傷ですよね?)
普通に話しているから忘れかけていたが、この騎士様死にかけのはずだ。手遅れなのかまだ間に合うかの判断はつかないが、のんびりしていられる程余裕もないはず。
《そうであった。が、心配はいらん。確かに深手を負ってはいるが、今すぐどうこうなるほどでもない。が、満足に動けんのも事実。そこで、恥を忍んでお主に頼みがある。我を精霊王様の下まで運んではくれぬか?》
「ヒヒン?」(精霊王様?)
精霊王様っていうと多分ファンタジー世界全体で見ても超大物だ。その王様に仕える騎士が精霊王様と逸れたか何かで追いつきたいってことかな。
《頼む。エレメントイーターに襲われ、護衛の騎士も後どれだけ精霊王様についているかわからん。やつの狙いは精霊王様だ。精霊王様が精霊界に戻れるよう、力を貸してくれんか》
おっと。いきなりヘビーな上、分からない単語が多数出てきたぞ。まぁ概ね予想は付くが。
エレメントイーターってことはまんま精霊の天敵なんだろう。精霊がどのくらいの強さかは知らんが、エレメントイーターはそれ以上に強いか、精霊特攻みたいなものがあるんだろう。
多分後者だな。でなければこの騎士様も俺に助力なんて求めない。さっき俺のことをベビーホースって呼んでいたことから、それが今の俺の種族なんだろう。どう考えても馬系の最弱種族だよな。生後0日なわけだし当然か。
そして恐らくエレメントイーターってのはより力の強い個体を狙う習性があって、それで精霊王様が狙われているんだ。
理由はわからんが、本来は精霊界とやらにいる騎士様たち精霊王様御一行は何らかの理由で今俺達がいる世界に来たが、エレメントイーターに襲われて護衛であるこの騎士様が足止めを試みたが失敗。今も精霊王様は追われていると。
精霊界に帰るにも何かしらの条件がいるんだろう。場所か時間かエネルギーか。あるいはその全部か。追われていたら条件を満たすのも容易じゃないだろう。
そういや、騎士様を取り込んだ際の獲得スキルに精霊の門ってのがあったな。あれを使って行き来すんのかな?聞かたいけど、そういう空気じゃないから自重するが。
にしても、自身も死にかけているってのにこの忠誠心。騎士の鏡だね。そんな騎士様に手を貸すってのは。
「ヒヒンヒンヒヒンヒン」(話はわかりました。産まれたばかりのこの身でどこまで役立つかはわかりませんが、微力を尽くしましょう)
アリだね。アリよりのアリだ。ここは協力する一択だろう。義を見てせざるは勇無きなり。いや、情けは人の為ならずか。精霊とのコネクションとかの打算もあるし。
《おぉ、協力感謝する。では早速精霊王様のもとに向かおうぞ》
そう言い騎士様は石から浮き上がるとフワフワ移動し俺の背に乗った。で、どっちに向かえばいいか聞こうとしたら頭の中に向かうべき方向が示されたような感覚を覚える。
《我が指示する。お主は我の指示通りに駆けてくれぬか》
「ヒヒーン!」(了解!)
そうして俺は騎士様の指示に従い、駆け出した。
走る。走る。走る。
今俺はエレメントナイトの騎士様を背中に乗せ、森の中を疾走していた。途中、ゴブリンらの魔物と遭遇したが、俺の速度に追いつけなかったのか簡単に振り切れた。他の4足歩行の魔物に出会わなかったのが幸いだ。
森と言っても平坦な土地ではなく、かなり急勾配な実質山のような場所だ。大きな岩も多く、朽ちた木が進む方向に横たわり走りにくい・・・こともなく、俺は難なく踏破していく。あれぇ?
《おぉ、お主は悪路走破スキルの持ち主だったか。お主に出会えただけでも幸運と思っていたが、これは更に僥倖であった》
悪路走破。そんなスキルがあるのか。そして俺にはそんなスキルが。やっぱりステータスが見れないのツライわ。自分が何が出来るか全くわかんねぇもん。特に特技がスキルとして明文化される世界では。
《ところでお主、身体は大丈夫か?一刻を争う事態ではあるが、産まれたてのベビーホースがこの悪路を四半刻(約30分)も走り続けるとなれば負担は大きかろう。更に、黙っていてすまないが、お主の生命エネルギーを失敬して我の回復にも充てておる。そろそろ限界が近いのではないか?》
「ヒン!?ヒヒィィィィン!??」(は!?エネルギーを吸われてただとう!?)
この騎士様、忠誠心バリ高の紳士かと思えば中々好き勝手やってくれてるな!なりふり構ってられないのもわかるけど!
《自覚がなかったのか。HPやMPとも違う生命エネルギーは半分も減れば、倦怠感が襲ってくるものだが。その様子では未だに余裕があるとみえる。高レベルのHP、MP自動回復スキル持ちなのか?いや、それらの自動回復スキルと生命エネルギーに関係性はない。スタミナに関しても同様。我に鑑定スキルがあればわかったのかもしれんが、お主のこのタフさは何なのだ?》
何なのだ?と聞かれても知らねぇよ。こちとら転生したばっかの赤ちゃんだもの。こっちが聞きたいわ。そんでやっぱりあるのね鑑定スキル。
「ヒヒン」(それよりも精霊王様とは後どのくらい距離があるんです?)
《うむ。精霊王様まで半里といったところか。半里というのは古い昔、精霊王様と契約した男が使っていた単位でな。それが我ら雷精霊の氏族に根付いておる。お主の脚ならもう少しの距離だ。すまぬがもう一踏ん張り頼む》
半里。一里が約4kmだから2km弱か。平地ならともかくこの悪路。思うような速度も出せず、1km/5分くらいのペースで進んできたが、ここらでスパートをかけた方がいいか。俺の役目は騎士様を精霊王様のもとに送り届けること。2km弱ならばギリギリ持つはず。
そしてその契約者、日本人だな。転生か転移かは知らんが。やっぱりいるのね。
「ブヒヒーン」(騎士様、ここからは全力で走ります。振り落とされないよう注意してください)
《あいわかった。頼むぞベビーホース殿。それと、我のことはアルザオでよい。こちらが助けてもらっているのだ。敬称は不要である》
「ヒヒン!」(わかりました騎士様!ではいきます!)
《アルザオでよいと言っておろうに》
敬称は不要って言ったって、流石に精霊王様の護衛騎士に対して呼び捨ては恐れ多いわー。そう内心思いながら俺は速度を上げる。
にしても、元人間であるはずの俺がなんで4足歩行を当然のように受け入れてここまで軽快に走ることが出来るんだろう?それと同時に出来て当然とも思っちゃうんだよな。支障ないからいいんだけど。
等と考えていたら前方に光る半球体。その中には騎士様と同じような精霊と、他の精霊より背が高い精霊。それに覆い被さる黒い蠢くものが見えてきた。うっわ、何だあれ気持ち悪!
《あそこだ!精霊王様自らが結界を張り、エレメントイーターを防いでおる!ベビーホース殿、誠に大儀であった!精霊王様!今参りますぞ!くらえ!ランスチャージ!》
そう言うと騎士様はどこからか取り出した槍を構え、黒い蠢くもの、エレメントイーターへと吶喊していく。はえーな騎士様!その速度があれば俺いらなかったんじゃね!?
騎士様渾身の一撃はエレメントイーターを貫通。大穴のあいたエレメントイーターはそのまま倒れる。と、思ったが
《ぐぬぅ!?》
騎士様の攻撃などまるで効いていないといわんばかりに、エレメントイーターはその不定形な体を触手のように変え騎士様を絡め取る。
「アルザオ!」
《せ、精霊王様!今のうちに、今のうちに精霊の門を!》
「し、しかし!」
《貴方にもしものことがあれば精霊界のバランスが崩れることになります!次代が産まれるまで何十、いや何百年かかるやもしれません!故に貴方は生き残らねばなりません!お早ぐぉあああああああ!》
絡め取られた騎士様が触手によって絶叫をあげる。
「ヒヒィィィィィン!」(ゴラァこのアホタレが!騎士様を離せぇ!)
気づけば俺は駆けてきた勢いそのままにエレメントイーターに体当たりをかましていた。いくら勢いをつけたとはいえ、こちらは産まれたばかりのベビーホース。相手は精霊すら手玉に取る格上。やっちまったかなぁ。
と思ったらエレメントイーターは騎士様を手放し、少し離れた木まで吹っ飛んでいった。
あれぇ?
「プヒン?」(あいつ、弱い?)
吹っ飛ばされて蠢いているエレメントイーターを見ながら、俺は警戒しながらも内心首を傾げていた。精霊王様に防戦一方を強い、騎士様の一撃を受けてもものともしなかったエレメントイーターが俺のタックルぐらいで吹き飛ぶことが不思議でならなかった。
《べ、ベビーホース殿。これは一体?》
騎士様が疑問を投げかけてくるが、その疑問には答えられない。わからないってのもあるし、エレメントイーターがまだ諦めてないからだ。
《く、おのれ!》
俺のことを無視して騎士様に向かって飛びかかろうとするエレメントイーターに身構える騎士様。
んなことさせるかボケェ!
身体の向きを変え、騎士様に飛びかかるエレメントイーターの横っ腹に後ろ蹴りを叩き込む。カウンター気味に入った為か先程のタックルとは比にならない速度で吹っ飛ぶエレメントイーター。
再度木に叩きつけられ地面に落ちる。そして地面に沈み込むかのように姿を消してしまった。これは、倒したのか?
「モーイ?」(死んだ?)
「いや、逃げたのでしょう。貴方がいては我々を仕留められないと理解したのだと思います。そもそも、イーター系の魔物は不死です」
答えは後ろから聞こえてきた。答えたのは勿論
《精霊王様!》
「アルザオ、我が騎士。貴方のお陰で助かりました」
《いえ、いえ。我は何も出来ませなんだ。ベビーホース殿の助力を得られなければどうなっていたか》
「精霊族が他種族へ助力を乞う行為。氏族によっては恥ずべきものと見做される行為ですが、私は貴方を誇りに思います。よくぞ助力を得て私のもとに駆けつけてくれました。その忠義と勇気が我々を救ったのです」
精霊王様の言葉に感涙する騎士様。そっかぁ、精霊って排他的なんだな。割とイメージに合うっちゃあ合う。自分達は上位種族であり他は皆、下等種族みたいな。どうりで騎士様以外の精霊王様の護衛。精霊王様の結界に守られていた他の精霊さんが俺に敵意が籠もった視線を送ってくるわけだ。馬は敵意に敏感なんですよ?
精霊界っていう閉じた環境にいるからそういった思想が広まるんだろうか?そもそも精霊界が閉じた環境なのかは憶測だけど。
「ベビーホースさん。貴方のお陰で助かりました。雷の精霊王として感謝申し上げます」
精霊王様はそう言うと、膝をついて頭を垂れてきた。そして、精霊王様の後ろでザワつく護衛達。奴等はもう知らん。
それにしてもあまりちゃんとその姿を見ていなかったが、改めて見てみると騎士様より大きい。騎士様が野球ボールならバスケットボールぐらいだろうか?金髪に柔和な顔立ちのイケメンだ。雷の精霊王っていうからもっと荒々しい感じかと思ったけど。
「プヒン」(身に余る光栄です。ところであれがエレメントイーターですか?)
「えぇ。あれは我々精神生命体の天敵です。我々に対し絶対的な優位性を持つ代わりに、他の種族に対してはスライムにすら負けるとても極端な特性を持っています。エレメントイーターに限らずイーター系の魔物は皆同じですね。先程言ったように奴等は不死ですが繁殖はせず数も多くありません。また、致死レベルのダメージを受けると一定期間休眠状態に入ります。貴方もビーストイーターには気をつけてください」
ほー、流石精霊王様。知識量が半端ねぇ。
「それにしても、ふむ・・・転生者とは。その知性から察するに元は人間?にしては精神と肉体の齟齬が見られない。更には随分不思議なスキルをお持ちですね」
「ブヒン?」(え?)
「【可能性の獣】、ですか。ユニークスキルは特異な物が多いですが、一度きりのスキルというのも珍しい」
「プヒヒン」(精霊王様は俺のステータスが見えるので?)
「えぇ。私は高位の鑑定スキル持ちですから。折角です、貴方のステータスを表示しましょう。ついでにアルザオ、貴方のステータスも表示して良いですか?」
《は。構いません》
精霊王様が手を振ると俺の目の前に騎士様と俺、2人のステータスが表示された。
――――――――――――――――――――――――――――
種族:エレメントナイト
名前:アルザオ
状態異常:無し
Lv :34/55
HP :49/169
MP :54/211
攻撃力:178
防御力:158
魔法力:199
素早さ:110
ランク:C+
スキル
【精霊術(雷)Lv.6】 【槍術Lv.6】 【剣術Lv.3】 【盾術Lv.2】
【ランスチャージLv.5】 【連撃Lv.3】 【騎馬術Lv.1】
【HP自動回復Lv.2】 【MP自動回復Lv.3】 【念話Lv.3】
【身体強化Lv.2】 【精霊術強化Lv.1】 【礼儀作法Lv.2】
耐性スキル
【雷無効Lv.-】 【痛覚耐性Lv.2】 【幻惑耐性Lv.1】
レアスキル
エクストラスキル
【精霊の門Lv.1】
ユニークスキル
称号
【精霊王(雷)の加護】 【忠義の士】
種族:ベビーホース
名前:無し
状態異常:無し
Lv :1/10
HP :20/20
MP :15/15
攻撃力:10
防御力:8
魔法力:3
素早さ:11
ランク:G
スキル
【蹴り:Lv.2】 【体当たり:Lv.2】
耐性スキル
【毒耐性Lv.1】
レアスキル
【悪路走破Lv.2】
エクストラスキル
【無尽蔵Lv.2】
ユニークスキル
【可能性の獣Lv.-】
称号
【転生者】
――――――――――――――――――――――――――――
騎士様やっぱり強っ!そして俺のステータスの貧弱さよ。色々書かれているけど謎が1つ解けた。騎士様も不思議がっていた俺の底なしのスタミナと生命エネルギー。それはエクストラスキルの【無尽蔵】によるものだろう。
「ブヒヒヒン」(精霊王様、スキルの詳細とかわかりますか?)
「えぇ、大丈夫ですよ。貴方が知りたいのはこの3つですかね」
【無尽蔵】:一部を除いた消費ステータスを自動回復する。また消費量を軽減する。スキルレベルにより効果は変動する。この効果は他の回復系スキルと重複する。
やはりこのスキルだったか。恐らく消費ステータスの中に表示されていないスタミナや生命エネルギーみたいな裏ステータス的なものも含まれているんだろう。
【転生者】:異界の魂がこの世界に招かれた者。
こっちもまぁ想定どおり。いや、この称号自体にはなんの効果もないようだからそこは想定を下回った感じかな。
【可能性の獣】:死体か身体の一部、HP1/5以下の魔物を取り込みスキルを獲得する。なお、獲得スキルやその獲得数は対象との相性によって変わり、死体の際は死体の損傷具合によって獲得スキルは変動する。取り込む対象によって進化先が固定もしくは補正がかかる。このスキルは一度使用すると消滅する。
【可能性の獣】に関しては大体推測通りか。だけど1つだけ新情報があるな。
“取り込む対象によって進化先が固定もしくは補正がかかる”
これだな。むしろこれこそが【可能性の獣】の真の効果なんだろう。やっぱりするんだね、進化!しかし固定もしくは補正とは随分落差があるな。
「ブルヒヒヒン」(精霊王様。私はこのままなら最終的に何に進化するのでしょう?)
「そうですね。ホース系の魔物の中で最も多い進化先としてはビッグホースでしょうか。目立った能力こそ無いものの、その巨体にそぐわぬフィジカルを持つCランクの魔物ですね」
「モーイ」(なるほど、ありがとうございます)
やはり俺の親はビッグホースだったか。あれ?でも
「プボボ」(ビッグホースって毒持ちじゃないんですか?)
「毒に関するスキルを持つビッグホースは寡聞にして知りませんね。精々毒耐性を獲得するくらいでしょうか。このデュガの森には毒を持つ植物や魔物が生息していますので」
なるほどぉ。親は毒草か何かを食って死んで、その親を食ったゴブリンもその毒で死んだってことか。
「さて、そろそろ精霊界に帰らねばなりませんが、なんのお礼もなく貴方と別れるワケにもいきません。何か良いお礼があればいいのですが」
《せ、精霊王様!そんな下等種族に礼など不要!一刻も早く精霊界に帰還し、〈再生の儀〉を執り行いましょう!儀に必要なこの世界のマナも既に回収済みです!》
騎士様以外の精霊が精霊王様を止めようとする。が、
「黙りなさい。ベビーホース殿のようにエレメントイーターを追い払うでもなく、アルザオのように自らを囮にするでもない。ただ私の後ろに隠れていた臆病者の言葉を聞き届けると思うてか。次の私も今回のことは記録として覚えていよう。
己の身の振り方、今から考えておくがいい」
丁寧ながら有無を言わさない言い様に口を噤ぐ精霊たち。というか、
「キューン」(騎士様、精霊王様の言う次の私ってなんです?)
《アルザオでいいと言っておろうに・・・次の私とは再生の儀の後の精霊王様の事だ。精霊種の中でも特に力を持つ一部の精霊は、その力を新しく生まれる精霊に宿す。
あくまでも受け継がせるのはその力。生まれてきた精霊の精神に直接作用するものではない。が、精霊王様曰く、歴代精霊王様の経験や知識を記録として受け継ぎ、力も受け継ぐため、その精神もある程度は引っ張られるらしい。
今回我々が精霊界からこちらに来たのも再生の儀に使用するこの世界のマナを集めるためだったのだ。精霊界のマナでも賄えるが、精霊界のマナを一度に大量に使うと他の氏族から顰蹙を買うのでな。ほぼ集め終わり、精霊界へ帰る算段をつけていたところでエレメントイーターに遭遇し、我は自らを囮に精霊王様を逃がそうとしたのだ。まぁ、その試みは失敗に終わったがな。後はお主の知っているとおりだ》
騎士様に説明してもらっていたら他の精霊への説得が終わったのか精霊王様がこちらを見ていた。
「すみません、話を途中で止めてしまって。お礼の件ですが、私とアルザオからお送りしようと思います」
《わ、我も?よろしいのですか?》
「当然ではないですか。彼は我々の恩人なのですから。その様子では既に決めているようですね」
《は、許されるならばベビーホース殿と名を分けたいと存じます》
名?
《名だと!?アルザオ貴様!気でも狂ったか!》
《精霊王様から賜った名を分ける意味、知らぬわけでもあるまい!》
《名付けならまだしも名を分けるなど!恥を知れ!》
騎士様の発言に精霊's大ブーイングである。やっぱり名付けってのは大きい意味があるのか?あれ?でも名付けじゃなくて名を分けるって言ってたな。
「騎士アルザオ、雷の精霊王として名分けを許します」
《精霊王様!》
「黙りなさい。貴様達の発言は許していません」
精霊王様の一言で黙る精霊’s。学ばないね君たちも。
《ベビーホース殿。精霊にとって名を賜る、名をつけるとは親子、主従の契りのことであり、賜った名を分けるとは兄弟の契りにも等しい行為なのだ。そして兄弟になるということは名を与えた親に護られる。が、名を分けた相手は親から直接名を賜ったわけではない為、主従関係はないのだ》
んん?つまり、こちらが一方的に精霊王様の恩恵を受けられるってこと?え!?いいのそれ!?
「ブルルヒヒヒンヒン」(そんな有利過ぎる条件、いいんですか!?)
《いいわけなかろう!この下等種族め!自惚れr》
一番年上っぽい精霊が声を上げるが、言い終わる前に光る何かが精霊を貫通し倒れ込んだ。精霊王様を見れば笑顔でその精霊に指を向けていた。笑顔なのにメッチャ怖い。
《無論、勝手に名を分ける行為は禁じられておるが、今見た通り精霊王様から許しは得た。後はお主が受け入れるかどうかだ》
「プボヒヒンヒン」(ちなみに兄弟の契りはどういう意味があるんです?)
《我とお主との関係か。兄と弟の関係に近いため、完全に対等と言うわけではないがお互いの危機には駆けつけようと約束を交わすくらいか。ただ強制力はない。これは我からお主に送る親愛の証と思ってくれれば良い》
ますます俺にとって都合が良い内容だな。詐欺か何かかな?
「詐欺等ではありませんよ。アルザオの言う通りこれは我々からの親愛であり感謝の印です」
即座に口を挟んでくる精霊王様。心を読まんでください。でもまぁ、幸運の女神には前髪しかないとも言うしな。
「ヒヒンヒンヒーン」(それじゃあお言葉に甘えまして、名をいたたきます)
《うむ、では。雷の精霊王が騎士、アルザオが汝と名を分ける。汝の名はアルバート》
騎士様。いやアルザオが唱えると、俺の身体が軽く光った。
「プイ?」(何か変わった?)
《名を分ける事によるステータス変動は無い。だが、称号は増えているはずだ。精霊王様、お願いできますか?》
騎士様がそう言うと精霊王様が無言で頷き手を動かすと
種族:ベビーホース
名前:アルバート
状態異常:無し
Lv :1/10
HP :20/20
MP :15/15
攻撃力:10
防御力:8
魔法力:3
素早さ:11
ランク:G
スキル
【蹴り:Lv.2】 【体当たり:Lv.2】
耐性スキル
【毒耐性Lv.1】
レアスキル
【悪路走破Lv.2】
エクストラスキル
【無尽蔵Lv.2】
ユニークスキル
【可能性の獣Lv.-】
称号
【転生者】 【精霊の友】 【精霊王(雷)の加護】
――――――――――――――――――――――――――――
おぉ〜、名前がアルバートになってるし、称号に精霊王(雷)の加護が付いてる!で、この加護ってどういう効果があるの?
「私の加護が得られたようですね。では鑑定スキルを使って説明しましょう」
【精霊王(雷)の加護】:雷の精霊王エクリプスの加護。雷属性に対する親和性補正(中)
またも心を読まれた。流石精霊王様。
《いや、お主がわかりやすいのだ》
騎士様、いやアルザオの兄貴にも看破された!?そんなわかりやすく顔に出てるのか?俺馬なのに。
《いや、我の場合は名を分けた影響なのだろう。スキルとして顕現しているわけではないが、お主の考えがうっすら分かる。名を分ければ必ず分かるようになるという話は聞いたことがない。恐らく、我とお主だけの効果なのだろう》
そうか。まぁ、意思疎通が出来るからいっか。馬の身でプライバシーがどうとか騒ぐ気もないし。
「では、次は私ですね」
精霊王様がそう言った瞬間、黙っている精霊’sの雰囲気が変わったが、特に何も言い出さなかった。さっきの例があるからね。しょうがないね。
「褒賞として一般的なのは名付けを行うことですが、それはアルザオに譲ってしまいました。なので、私は貴方のユニークスキルを活かす物を与えることで褒賞としましょう」
そう言い精霊王様は手を掲げると掌に光が集まり、琥珀のような結晶が現れた。
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[精霊王(雷)の精霊魔結晶(極)]を取り込みますか?尚、[精霊王(雷)の精霊魔結晶(極)]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
精霊王の叡智Lv.-:100%
精霊王(雷)の精霊魔結晶!?それも極ってすっげぇレアアイテムっぽいもんが出てきたんだけど、何ぞこれ!?
《これは・・・!?喜べアルバート。精霊王様はお主にそのお力をお分けくださるそうだ》
興奮した様子で説明してくれるアルザオ兄貴。いや、その説明ではわからんのだが。
「これは精霊魔結晶と呼ばれる精霊種が作り出すことの出来る魔力の塊です。魔力の純度が高ければ高い程、鮮やかな色合いの結晶になります。
この世界には
屑→劣→低→中→高→純→極
の順で品質のランクがあります。極ランクとなると、私のような精霊王が精製するか、長い年月によって昇華された物品、あとは・・・いえ、そのくらいでしょうか」
アルザオ兄貴の代わりに精霊王様が精霊魔結晶と品質について説明をしてくれた。極がとんでもねぇ代物なのは理解できたが、なんか精霊王様口を濁したようだけどなんだったんだ?
それはそれとしてどうやら問題なく取り込めるようだけど、死体でもない精霊魔結晶を何で取り込めるんだ?
「我々精霊は精神生命体であり、魔力は精霊を構成する重要な要素となります。精霊魔結晶は精霊の分け身とも言えるものですが、その用途は極めて限定的な為普段精製したりはしないんですが。それでも私の一部と定義する事も出来ます。
貴方のユニークスキル、【可能性の獣】に取り込ませればと思いましたが、その様子では取り込めそうですね。
我が騎士アルザオの友にして同胞たるアルバート。雷の精霊王エクリプスより最大級の感謝を」
そう言うと精霊王様は俺に精霊魔結晶を差し出すように掲げた。
《ユニークスキル【可能性の獣】が発動しました。対象[精霊王(雷)の精霊魔結晶(極)]を取り込みますか?尚、[精霊王(雷)の精霊魔結晶(極)]を取り込んだ場合このスキルは消滅します。
獲得スキル
精霊王の叡智Lv.-:100%
「ヒヒーン(精霊王様、有り難くいただきます)」
掲げられた精霊魔結晶に触れると光ったりすることもなく、フッと消えた。
《[精霊王(雷)の精霊魔結晶(極)]を取り込みました。
ユニークスキル:精霊王の叡智Lv.-を獲得しました。
雷属性への親和性(極大)、進化先に補正(極大)。
ユニークスキル【可能性の獣】が消滅しました》
「どうやら取り込めたようですね。ではステータスを見てみましょう」
――――――――――――――――――――――――――――
種族:ベビーホース
名前:アルバート
状態異常:無し
Lv :1/10
HP :20/20
MP :150/150
攻撃力:10
防御力:8
魔法力:30
素早さ:11
ランク:G
スキル
【蹴り:Lv.2】 【体当たり:Lv.2】
耐性スキル
【毒耐性Lv.1】
レアスキル
【悪路走破Lv.2】
エクストラスキル
【無尽蔵Lv.2】
ユニークスキル
【精霊王の叡智Lv.-】
称号
【転生者】 【精霊の友】 【精霊王(雷)の加護】
――――――――――――――――――――――――――――
【精霊王の叡智Lv.-】:雷の精霊王の叡智。スキル取得補正(大) MP、魔法力補正(極大)
おぉ〜、精霊王の叡智を無事獲得できたようだ。つか、MPと魔法力の補正やばいな。最弱ステータスだった2つが一躍メインステータスになりやがった。
「ユニークスキル精霊王の叡智。私も初めて見るスキルですね」
《精霊王様、これは・・・》
「えぇ、アルザオ。一見してみれば補正スキルです。スキル取得補正にMPと魔法力補正10倍は破格と言っていいでしょう。しかし・・・」
なんか精霊王と兄貴が深刻そうに話してるけど、俺なんかやっちゃいました?
《精霊王様、ベビーホース、アルバートへの褒賞も済みました。早々に精霊界へ帰還せねば、如何に精霊王様による精霊の門とはいえ時空のズレで「道」が途絶えてしまいます》
と、精霊'sの中でこれまで一度も口を開かなかった精霊が声をかけてきた。そういやこの精霊からは敵意を感じないな。謝意は感じるが、基本は中立みたいな感じ。謝意があるならあのカール髭達止めてよ。
「おや、もうそんな時間・・・いや、エレメントイーターに追われてた時間を考えればその通りですね。ありがとうタッチストン。しかし、貴方は本当に必要な時にしか発言しませんね。出来ればアンテノル達を止めて欲しかったのですが」
《それを小生に求めるのは酷というものです。それより精霊王様、お早く》
「そうですね。ではアルバート、唐突ですみませんがここでお別れになります。
アルザオ、門を開くまでの短い時間ですが、最後の挨拶を」
そういうと精霊王様は出を前に出し聞き取れない言葉を紡ぎ始めた。
《アルバートよ、お主には本当に世話になった。精霊界に戻ってもお主のことは忘れぬ》
「ヒヒン(こちらこそ、多くのものをいただきました。また、お会いしましょう)」
《いや、それは難しい。我々精霊が住むのは精霊界であり、この世界とは違う時空にある。元々こちらに来たのは精霊王のは再生の儀の為。再生の議の後は精霊王様が目覚める迄寝所の警護に当たらねばならない。恐らくこれが今生の別れになるだろう》
そう語るアルザオ兄貴は本当に残念そうに別れを告げた。
そうか、そういえば精霊は精霊界から来ているんだったな。時空を越える術を手に入れない限り、俺が精霊界に行くことは出来ないんだろう。
「ブルルル(そうですか・・・
では、お元気で。何かあればまたこちらにいらしてください。エレメントイーターなら文字通り蹴散らしてみせますとも)」
《ふはは!あぁ。その時は頼らしてもらおう》
「アルザオ、「門」が開きました。先に行きます」
そう言い精霊門に入っていく精霊王様と精霊's。そして精霊王様に声をかけられ、精霊門へと進んでいくアルザオ兄貴。
《アルバート、我が同胞よ!達者でな!お主の未来に幸あれ!》
そう言い残しアルザオ兄貴が門を通ったと同時、門は姿を消し俺は一人となった。
「キューン!(兄貴ー!)」
別に長年の友との別れな訳では無い。会って僅か数時間の仲だ。だが、転生してから初めて出会った相手との今生の別れというのはやはりくるものがあるな。
そんなノスタルジーに浸っていたら
《精霊王の叡智が本格稼働しました。はじめましてアルバート。私は精霊王の叡智、これより貴方の補佐を務めます》
ほわぁ?
前作はいきなり連載ものを書いたので、今回は短編で。
でも全然続き書けるように書いたので、ちょっとでも続きが見てみたい人はコメント欄に
「書け」
と残してもらえれば幸いです。