広告研究会
アキラから聞いてたがさっそくだ!
動画のコメ欄で広告研究会が誘ってきた。
本当にボンボンで世間知らずのおこちゃま達みたいだ。
「う〜ん、1本動画出しとくか!」
まず学長に連絡を入れ、部活や同好会とのコラボは
大学事務所経由でお願いしたい。
学内で問題ないと大学事務が了承したサークルのみ
学長監視の下で撮影させてもらう。
クリップも作り動画にして配信した。
固くならないように学長コスをして配信しといた。
「さてと。
本当に学校生活しんどくなってきたなあ〜
あんまりだったら5年くらい休学しょ」
目にホットマスクのせて休める。
パートの母の「ただいま」の声が、階下から聞こえる。
父が亡くなって3年。
母もパート先でやっと正社員になれるらしい。
妹とは1歳違いの年子だし、奨学金貰えても2人揃って火の車だ。
現実的に大学は無理だった。
家を売ったお金でやっと返済が出来ただけでもラッキーだった。
高校生時代から必死でショート動画からコツコツ始めて名を売り金を稼ぎ、頑張って大学入ったのに〜1年遅れだが。
部活も入れないし友達も出来ない。
思ってたキャンパスライフは程遠い…
「ハア〜ッ、人生厳しいなぁ〜」ため息をついた。
妹は…まだ帰ってない。
大学生だしそんなもんだろ。
この頃家族でご飯食べるのも妹だけいない事が増えた。
入学して半年以上経ったし、サークル活動もしてるし
そんなもんだろ。
テニス同好会らしい。
部活は大会やらあって皆真っ黒だが、同好会は楽しく遊んでいるみたいだ。
正直羨ましいが!
それはそれで周りの子と話合わせる自信もない。
妹はうまくやってるんだろうか?
「ただいま」とまた玄関が開く音がした。
妹だ!
今日は早いじゃん!と思ったが、動画の編集溜まってるから早く帰れと言っていたの思い出した。
案の定ブスッとしていた。
きっともっと遊んでいたかったのだろう。
が、こっちも仕事だ。
「悪いけど食べながらお願いね。
要らない用事で仕事が溜まりまくってるの。」
「…」
妹、市子は無視してる。
でも、サッサと準備しパソコンに向かい出した。
市子も分かってる。
私達は、普通の大学生じゃない。
働かないと大学行けないのだ。
「今日さ、別荘持ってる子から誘われたんだ。週末軽井沢来ないかって。」
「へ〜良いじゃん。行っといでよ!」
「でも、動画編集溜まってるし無理じゃん!」
「まだ3日あるし〜頑張ろうよ!今週平日頑張ってくれたら…」
「サークルある…だから、私は寝ないでやるよ。」
妹なりに色々考えてるみたいだ。
が、身体壊すのはダメだ。
「ゴメン、それはダメだよ。週末遊びに行きたいなら
平日授業終わったらすぐ帰ってきて。」
少し冷たく言う。
バンと市子が、机を叩いた。
ビクッとする、変なキーは叩いて無いようだ。
美鈴はホッとする。
「お姉ちゃんは、しがらみ無いから分からないだろうけど、バイトで抜けると話が飛んで分かんなくなるんだよ!」妹なりにやはり周りに完全には溶け込めてないようだ、仕方ない。
「大事な話なの?それで仲間外れなるように人間関係なら
初めから要らないわよ!」
「そんなだから、お姉ちゃんは大学で友達できないのよ!」
市子が机を叩いて立ち上がった。
姉妹でしばしにらみ合う。
気配を察知した母が居間横の仕事部屋に入ってきた。
「お腹空いてるからイライラするのよ、食べなさい。」
片手で食べやすいようにおにぎりを持ってきてくれた。
母だって、さっき仕事から帰ったばかりだ。
祖母と祖父が、掃除洗濯ご飯と面倒見てくれているから母娘3人で働いて、やっと大学通えているのだ。
ヒミコ・美鈴は前を向いてマウスで作業をまた続けた。
おにぎりを片手で頬張りながら、
「言い争ってる時間ないわよ。
アンタを週末遊び行かせたいからね!
私の分も大学生活エンジョイしてもらうから!」
「…お姉ちゃん、ゴメン…わたし…わたし…」
泣きながら市子もおにぎりを頬張りながら、またパソコンに取り付いた。
「中にオカズ入ってるからね。頑張って!
お母さんも食器洗ったら手伝うから。」母が出て行った。
カリスマ…
昼間のアキラの言葉を思い出す。
『な〜にがカリスマだよ!
鼻水と涙とおにぎりで私の人生は成り立ってんだよ!
バカタレがあ〜』
長い髪を引っ詰めて分厚いメガネでジャージーでマウスをカチカチとクニックし続けた。