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ステガノグラフィ

「えっ、なんですか?それ?」ヒミコは気になって有間に聞き返す。

「動画の背景の看板とか広告類の人物の顔が替えられてたり、後は動画に1枚違う画像が差し込まれたり、

1番気になったのは動画再生中に画面の加工処理されてる部分にマウスを合わすと物騒なメッセージが出るんだよね。

気にならなかった?」有間が心配そうに聞く。

市子が編集した動画の最終チェックはしてるが、とにかく膨大だし

自分も編集作業や撮影したりで忙しい。

流れ作業で3つのモニターの1つで再生しながら確認するくらいだ。

「それって分かる人には分かるように暗号化されて動画とは関係ない情報が隠されてるって事?」見波が有間に聞く。

「そうだね。コメント欄見たけど指摘してる人もいるんだが、即座に消されてる…つまり、ホスト側ヒミコ君のパソコンからコメント消してるんだよ。

「ちょっと見せて貰って良いですか?」胸騒ぎがして

有間のパソコンを見せて貰う。

もうこの頃流れ作業になってて自分がUPした動画を

わざわざ外から確認なんかしてない。

申し訳ないがコメント欄もあまり読んでない。

閲覧数や年齢層が分かるページがホスト側にだけ分かるから

そこばかり見てた!

有間のパソコンから自分の動画を見せて貰う。

背景の広告看板や街ゆく人の顔が加工されてる!

よく拡大すると広告研究会メンバーに!

『ヒミコを(けが)した者たちに天罰を』とか『粛清を』とか物騒な文字が至る所に!

動画を止めて背景を良く見ないと分からない。

「こういうのをステガノグラフィって言うんだよ。

昔、テレビのCMなんかにもサブリミナルメッセージとして挿し込まれていたらしい。」有間が、説明してくれた。

いつも動画の確認は忙しいので3台のモニターの1台で

市子から送られた画面を流し見してた。

それじゃあ見逃すほど小さく加工されているのだ。

美鈴は血の気が引いていくのを感じた。

こんなのがどれだけあるんだろう?

一体いつから…

人に楽しんで貰ったり元気になって欲しくて作ってた動画。

確かに金儲けが1番だったが、こんなメッセージ送るためじゃない!

「大丈夫か?」美鈴の肩にアキラが手を置いた。

いつもはキツい物言いしかしないアキラなのに

心配になるほど美鈴の顔面は蒼白だったのだろう。

そして、その手を握り返す美鈴。

「市子が!市子が!!どうして!」

裏切られた!だまされた!

いや、全く別物にされてた!

身体の中に何か禍々しい物が込み上げる。

ドス黒く冷えた心が、心を支配する。

「ダメだ!それに捕まるな!押し戻せ!」

アキラが美鈴を抱きしめた。


「ど、どうしたの?!」見波と有間が2人の様子に驚く。

「この動画には怨念が込められてるんだ。気付いた者でメンタルが不安定な人間は捕まってしまうんだ。」

アキラが説明する。

美鈴はアキラにしがみついて泣きじゃくりだした。

父が亡くなってから一度だって泣かなかったのに。

母のため、市子のため、がむしゃらに動画配信してきたのだ。

なのに、まさかその大事な家族が!

美鈴を利用していたなんて!

美鈴の心の土台のような部分がガタガタと音を立てて

崩れていくような…

「それは、市子の心の闇なんだよ。市子はずっとそこに居るんだよ。

そこから抜け出したくて、

もがいてる。

水に溺れるものは、助けに来た人の身体にしがみついて

水に引きこむんだよ。助かろうとして。

そうやって闇が拡大していくんだ。

闇に捕まった人間は、助かる為に動く。

消すんだ。溺れる原因を。

彼らを消さないと…って」


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