有間
市子をレイプした男達は、皆死んでしまった。
だが、市子が治る兆しは無い。
部屋に篭もりきりのままだ。
扉越しに母が3人が亡くなったことを伝えたが
もう分かっているのかどうかも分からない。
とにかく病院に連れて行きたいが、どうしたものか?
ヒミコは悩んだままだ。
動画もしばらく休止すると配信した。
どうせストックも尽きた所だ。
撮影する気にもならないし。
途端に市子から大量のメールが送られてきたが、
『もう、ヒミコを辞めようかと思っている。動画制作を
ヤメるつもりだ』と返信しといた。
大学卒業までのお金は稼いだ。
母も正社員になったし、配信を続けるモチベーションが市子の事件ですっかり萎えた。
市子を普通の女子大生にするのが、ヒミコのモチベだったのだ。
今さらながら、分かった。
だが、もうそれも叶わない。
全く企画も何も浮かばないのだ。
ため息ばかり付いてるヒミコを心配して、アキラと見波は
有間に相談しヒミコを東山の幽霊屋敷へ連れてきた。
「まさか入鹿さんにこんな大きな娘さんが居たなんてね〜知らなかったよ。」
有間が懐かしそうにヒミコの顔を見る。
「父をご存知なんですね?」全然父から聞いたことが無かった。
「かなりグロい殺人事件だったからね。
秋津島の生駒山の麓の庄屋屋敷知らない?」
「知ってます!ニュータウンの駅はさんで反対側の!
本当は、あの一帯の田園にニュータウンが出来るはずだったと。」
ニュータウンの学校でそんな噂話を聞いたことがある。
「そうだったんだよ。
入鹿さんが、向かいの山を半分切って整地してニュータウンにしょうと言ってくれなかったらね〜
殺人事件も解決しなかったんだよ。」
有間が懐かしそうに話す。
「父がそんな事をしたんですか?
知らなかった…」ヒミコは始めて聞く話に驚く。
「お父さんはアイデアマンだったからね〜スゴいよ。」
有間がニコニコ話す。
会社を興す前の父の事は、何も知らなかった。
だから、ニュータウンの功労者と言われていたのか。
「お父さんは自殺したけど、決して人生に絶望したからじゃないんだよ。
リセットしただけ。どこかで生まれ変わって君ら家族を見守ってると思うよ。」
有間と言う人は、不思議な人だ。
ウソをついてるように思えない。奇抜な話をしているのに。
とても綺麗だし、どこか昔会ったような気がする。
すごく小さな時。
「君の動画も観たよ。さすが入鹿さんの娘さんだと思ったよ。
人気になるはずだよ!
でも…変な加工してるよね…ちょっと気になったけど…」有間の顔がくもる。
「変ですか?」ヒミコが首をひねる。
「いや、なんか君らしくないのがチョコチョコとね。
分からないんなら良いんだ。」