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不気味な噂と消える人間

作者: 神名代洸

身の回りでおかしなことが起きた事ないか?


そんなことを友達から突然告げられ?となった僕は特にないと答えた。

友人は何かあったようだ。

でも何があったのかまでは話してはくれなかった。

よっぽどのことがあったか、たいしたことないかどちらかだろうが、僕はさほど気にもとめずその場でその話は終わった。ハズだった…。


それから3日後、その友人が忽然と姿を消した。

誰に聞かれても僕は知らない。

そんな…冷たい奴だなぁ〜。友達だろ?

う〜ん、確かにそうだけど、ぶっちゃけ上っ面の付き合いしかない。僕はそう思っていた。


話はすぐに別の話題に変わり、僕は頭の隅にも追いやってしまったのか忘れてしまった。

そりゃないよね。

多分僕をよく知る友達ならそう言ったかもしれない。でも友達と思えない友達?だっているだろう。



まぁいいや。

そんな事は。

問題は消えたって事。

まぁ、いい大人が消えるって…ねぇ〜?

子供じゃないんだから放っておけばいいじゃないか?しまったぁ…って顔してひょっこり出てくるかもしれないし…。


でもさ、噂はあったんだよ?

よくないの。

何でも失踪する人が最近増えたって。

その消え方も色々あって、初めのうちは何人かでつるんで歩いてた時、ふと振り返ったらいるはずの仲間がいなかったって話から、喋ってたのに振り返ったらその場にはいなかったって言う不気味なものまで。体験した奴らは皆ビビってしまって真っ青な顔をしてたらしい。


そんな話が徐々に広がっていって神隠しかはたまた霊に連れ去られたとかしまいにはUFOに連れ去られたってものとか…。

参ったよ。

人ごとじゃなくなった。

だってさ、僕のダチも僕のすぐ目の前で消えたから。マジ。

と言うことは、僕もやばくない?

わからんけど。


喋る時には何かにつかまって喋るようになった。

消えない為だ。気休めだとは思うが。

手を組んで話す奴もいる。よほどのビビリだと思う。普通そこまではやらないだろう。恋人同士でもあるまいし。同性同士では気持ち悪くてヤダ。


後は紐を体に縛って、何かに引っ張られたりしないようにする者もいた。これは案外いけるかもと期待した。

だけどさ、その紐で縛られていたはずの仲間が消えた時には皆真っ青になった。どうやって?

パニックになり、皆騒いだ。

消えた者達は一体どうなってしまったのかとても気になった。まさか皆んな異次元とかに飛ばされたりして助からないとか?


消えたものが姿を現した時には皆驚いた。

でもね、その姿は見れたものではなかった。

ミイラ化して干からびていたのだ。

その顔は恐怖で固まっていた。きっと死んだ時のままの顔なんだろう…。

女子はそれを見て倒れるもの泣き叫ぶ者、固まるものなど。男子は腰を抜かしてる者、泣くもの、おかしくなるものなどさまざまだった。

半数以上はおかしくなっていた。

それが一体ではなく、数体一気に見つかるから恐怖も凄かった。

死んだものは一体どうしてこうなったのか?

何故?

死んだ彼らは今まで何処へいってしまっていたのか?

ふとそう思った。

そしたらさ、もしかしたらいるんじゃないかって思ったんだ。ここに…。

幸いにも霊をじかに見えるものはいなかった為さほど恐怖は起きなかったが、いつ誰が同じ目に合うのかを考えただけで皆ゾッとした。

戻ってくるものは皆死体だった為何処に飛ばされたかまでは誰にもわからなかった。

だけど1人だけ記録していたものが見つかった時には皆んなはしゃいだっけ…。

ボイスレコーダーで録音していたのだった。

そんなの普段は持ち歩いたりしないから、その事件が噂になってから持ち歩くようになったに違いない。

皆緊張していた。

ボタンを押そうとした時にどさっと音がして皆がビックリして音がした方を見ると、また人であったものの何かが床に転がっていた。

ドキドキする思いはあるが、だからと言って放っておくのも何だろな…。


そっとそおっと声をかけたが、何の反応も示さない。何で?嫌な予感しかなかったから仲間を引っ張ってきて数人でそいつの顔を覗き込んだ。

やはり死んでいるのか固まっている。

連れ去られたわけでもないのに何でここで死んでるの?

謎しかなかった。


ところで問題のボイスレコーダー…見てみると動いていた。と言う事は消えた時にも回ってたって事?

ドキドキと恐怖が同時に襲ってきたが、聞くしかないと皆で集まってボイスレコーダーを巻き戻して再生をかけた。


初めは「え?ここ…何処?」で始まり、何かを見たらしく叫び出した。

よほど怖かったのだろう。

泣き叫ぶ声が…大声で聞こえた。

その声に混じって何やらもそもそと何かを喋っている声らしきものも聞こえてきた。

それは言葉になっておらず、奇声のようなものだった。

聞いていても怖いと思えるものだった。

それから泣き叫んでいた男性らしき声が、徐々に声の力を無くしていきやがて聞こえなくなった。


聞こえなくなっている間も何かの声らしきものは拾えるので聞いていたがとても人間とは思えなかった。まさか化け物…とか?

「やだ!ちょっと怖いこと言わんといて!1人暮らしだから怖いじゃん。」

「お、おれもそう。マジ勘弁。」そう言いながら周りを見て落ち着こうとしている。

かく言う僕も一人暮らし。

怖くないと言えば嘘になる。

多分と言うか絶対あかりをつけて寝るだろうな〜。

怖くて部屋の電気は消せそうにない。


そして今、僕の手の中にはボイスレコーダーがあった。

そう、僕も買ったから。

何かあった時誰かにヒントが渡ればいいなと思っていたから…。でもそんな事態起こってほしくはないけど、いつ何があるかわからないから、保険としてかけておこうと思ったのだ。

怖いよ?正直言って。

帰る時にはみな同じところで寝ようと言う話が出たが、女子が嫌がった。化粧がどうのこうのって…そんなの緊急事態だからどうでもいいじゃんと思ったが、女子の間では結構な問題らしい。

すっぴんが見せられないってどんな顔してるんだ?厚化粧で誤魔化してるってか?


あ〜ヤダヤダ。

でもコレいつから起きたんだ?正直わからない。

だからいつまでこんな思いをしなきゃなんだ?

亡くなった人間が持っていたボイスレコーダー…借りてきたから何度も聞いてみたが、謎の奇声が気になる。なんなんだ?一体。

コレがわかればどうにかなるかもしれないと思う気持ちがあって、繰り返し聞いていた。

コレは普通の機材では何ともならないのか?雑音が邪魔をする。

だから、僕はダチと一緒に音楽スタジオを借りてそこで音を聞くことにした。

機材には詳しくないけれど、何とかしたいと言う思いはみな一緒。


あれこれいじっていたら何とかできた。僕達ってすごい?

雑音を消して音を流すとボソボソ声が聞こえた。

はっきりと聞く為音を大きくする。

そしたら聞こえたんだ。

間違いじゃない。


【私を捨てたこいつら全てを消す】


なんて事だ。

過去に何かあったらしい。

だがそんなのいまの僕らには何の関係もない。

勘弁してくれよ。

などと話していたらダチが…ダチが…目の前で消えた。

僕らは3人しかいなかった。なのにだ。

残ったのは僕ともう一人だけ。

その1人はガクガクと震えている。

それはそうだ。だからって逃げたくても…次消えるのが誰かもわからない。僕かもしれないし、そいつかもしれない。

恐怖しかない。

誰か…。

誰でもいい。ほんと。

この現状から助けてくれ!

1分1秒が長く感じて仕方がない。


とにかく今いる場所からは走って逃げた。

怖い。怖い。怖い。

ダチの顔を見ると真っ青になっている。

「な、何だよ?何か言いたいのか?」

「あっ、いや、ちが、う。怖くてさ。ボクも消えちゃうのかなって。」

「それをなんとかする為にここまできたんだろ?頑張ろう。」と言いながらも声は震えている僕だった。僕だって怖くてたまらないんだ。けどそれを今言っちゃったらコイツが壊れないか心配だったんだ。


走って逃げた先にあるものは派出所だった。何でこんなところに?と思うかもしれない。

でも僕らに残されたのはここしかなかったのだ。

警察官は拳銃を携帯している。もしもの為にだ。

それに縋ろうとした。

果たしておまわりは信じてくれるのか?それとも頭がイかれたやつと思われるのか?

今はそんなことを考えてる場合でもなかったので『助けてください!』とだけ言った。

その言葉を聞くだけで警官は優しそうな顔からキリッとした顔になるまでポケーっと見ているだけだった。

ハッとして頭をふり、大変なことを聞いてしまったと言う顔をしてじっとこちらを見つめている。


「どうしましたか?」

言われて何とか今まで起こったことを事細かく喋った。警官はその間黙って聞いていた。どうなんだ?やっぱり信じてないのか?

僕らは警官の顔を見てたがどうやら信じてなさそうな顔をしている。

マジか…。

諦めて肩を下ろしてその場から立ち去ろうとした時肩を掴まれた。掴まれた方を見ると警官が真剣な顔をして僕らを見ている。

そして、無線で本部に連絡を入れてくれた。

やったぁ〜!コレでもう安心だ。そう思ったのでダチの顔を見てニコリとしてみたら、ダチの顔は真っ青。

なんで?まさか…まさか……やだよ。もう……。


ダチが見る方は視線を向けると、そこにいたはずの警官の姿はなかった。

そして知らない人が立っていた。

髪はボサボサ。

髭もぼうぼうかな。

見た感じ浮浪者と間違えてもおかしくない。

でもなんでここに?

さっきまで応対してくれていた警官は?


僕の足は後退していた。

だって怖いじゃん。

口元からは何やら赤いものが見えたから…。

まさか何か食べていた?動物?

咀嚼音が頭に響く。

クチャくちゃくちゃ。

手を口元に持っていき口の中に指を突っ込んで引っ張ると何やら塊が見えた。

そう、それは人の塊のようだった。

え?

マジ?



もうその場から逃げるしか頭になかった。

ダチのことも頭からすっぽり抜け落ちていた。

後方で誰か叫んでいた気がしたが、恐怖がそれをまさった。


怖い、怖い、怖い。

誰か助けて!

現実ではあり得ないことが起こっていることが信じられない。もしかして僕も変なとこに来ちゃった?

だとしたら、死なないと抜け出せない?

そんなぁ〜。

やだ!やだ!やだ!

その時になってようやくダチの姿が見えない事に気が付いた。

大声で叫んでも返事がない。

まさか、もう…?


震えながら何とかもといた場所を探しながら恐る恐る周りを見る。けれどもダチの姿はどこにも無かった。


大声を出し続けていたら喉が渇きだし、飲み物を探すもどこにも自販機がない。

今時どこにでもあるはずのそれがない事に不安が募る。

ならばと民家を探す。




あるにはあったが、どこからどう見ても廃墟としか見えない。

こんな場所に何もあるはずがない、そう思い、とにかく家を探した。人が住んでいそうな家を。

何軒目かにようやくまだ新しそうな家を発見したが、人がいそうには見えなかった。もしいたとしても、良い人とは限らない。

この不思議な場所にいるならば、それなりに変な人が多いに決まっている。武器を持って追いかけられたりしたら最悪だ。

木陰に隠れながら家の様子を見続けた。

どれだけ時間が経ったのか、喉の渇きが耐えられないところまで来て初めてこの家には人がいないのかもという結論になった。

今自身が持っているのは携帯だけ。

あかりは小さく心許ないが、全くないよりはマシである。

ゆっくりとドアを開けたら楽に開いた。簡単に開いたことによって、不安が大きくなる。

どこに何があるのか全くわからないので、周りの気配を気にしながら急いで目当てのものを探す。でもなかなか見つからない。

諦めかけたその時になってようやく見つかった冷蔵庫。

開けてみたら缶詰の缶が一つだけ入っていた。

缶切りは…ないが、蓋がついていた。コレならなんとかなる。蓋を開けようとしたその時に横から何かが飛び出してきた。それはいなくなったはずのダチだった。「なんでここに?」とは言わないでいても、「お前無事だったんだな?」と涙を流しそうになりながらも再開を喜んだ。


ダチ曰く、不思議な世界で物を食べたり飲んだりすると、帰れなくなると誰かから聞いたことがあると言う。

それが誰かなのかは言わなかったが、多少は知っているのだろう。

僕はダチの言う通りに食べるのをやめた。

ダチももちろん食べない。


ここにいたって何もできないだろうから、コッソリと抜け出した。

入れ替わりでドアが開いた音がしたからきっと誰かが帰ってきたのだろう。良かった。助かったよ。

ダチと2人で喜んだ。


離れ離れになっていた時のことはお互いに話して聞かせあった。

この世界には僕らしか知り合いはいなさそうだった。探しても見つからない。と言う事は自力で戻る方法を探すしかないって事。

どうしたらいい?

どうしたら帰れる?

分からない。


今までの情報からすると死なないと戻らないらしいって事。でも僕らは死にたくない。戻りたい。

ならどうしたら…。


一か八かで初めにいた場所に戻ると言う手があった。そこから元の世界に戻れないか?

何かいたらどうしよう。

でも帰りたい。

怖い。

どれくらい歩いたのかどうやら元いた場所まで戻ってきたようだ。

ただ、そこは何もない場所だった。見渡す限り何も無い場所。

草木一本も生えてない。

歩いてみるが、何も無い。

こんな場所から戻れるのか?



そのとき遠くから何か音が聞こえた。

汽笛のようなやつだ。

僕らは怖くてサッと物陰に隠れて様子を見た。

するとどこからか電車が現れて止まっていた。

あの電車はどこに行くんだろう?

まさか現世に帰れるのかも…。

さっと電車に近づいたが、ドアが開かない。

しばらく頑張ったが、開きそうもなかったので諦めて戻ろうとしたら、ドアが開いた。

音を消して飛び乗るなんて忍者か?って思ったけど、なんとか戻りたかったので何も考えずに動いた。

ドアが閉まった直後、ドアガラスにあの浮浪者の顔が張りついていた。口からはやっぱり血を垂らしながら…。

だから怖いって。

でも動き出したからもう安心と椅子に座ってようやくホッとした。


2度とこんな場所にはきたくないし、怖い目に会うのもゴメンだった。

ほっとしたダチと話そうと振り向いたらそこにはダチの姿はなかった。

まさか…乗らなかった…とか?

乗れなかったのか?

僕は後部車両へと急いで走った。

するとホームに崩れて座っていたダチの姿が。そこに近づくは浮浪者の男。何やら何か大きな何かを持っていた。あゝ、まさか、そ、そんなぁ…。そう、浮浪者が持っていたのは巨大な鎌だった。


「やめろ!やめろ!やめてくれ!!!!!」


見えなくなるまで大声で叫んだが、最後はどうなったのかはわからなかった。

まさか…死んだ?

だとしても今の僕には何もできなかった。

電車に乗っていたから。

暫くすると眠くなり僕はそのまま寝てしまった。


「……さん、…ですよ?、お客さん、終点ですよ?」言われて初めて僕は目が覚めた。

周りの景色はいつもみる景色。


「た、助かった…のか?」


ダチがどうなったのかわからないまま僕は戻って来れたようだ。


あの場所での体験は誰にも話せない。

信じてもらえるわけがないから。

ダチがどうなったかなんて事も……。




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