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悪魔はポリティカルコレクトネスを聞いて、呆れ果てる

「なあ君。ポリティカルコレクトネスとはなんのことなんだい?」

 悪魔は珍しく黒いタキシード姿で現れた。まるでこれからどこか外国の茶会サロンにでもおもむくようだ。

「なぁに、ちょっと知人の祝賀会を冷やかしにね」

 悪魔はそう言ってにやりと笑ったが、その笑みに邪悪さはなく、どちらかというとユーモアにあふれていた。



 悪魔は最初の質問について聞きたがったので、私はだいたいのところを説明した。──要するに、差別を助長するような作品を作ってはいけない、みたいなことを。



「それはなんともばからしい」

 悪魔は完全にあきれていた。開いた口がふさがらない、とでも言うみたいに。


「誰かが不快になるような作品づくりはいけないって? 何をばかなことを言うんだい? 君ら人間はいつだって他人を不快にさせることしかしてこなかったじゃないか」

 悪魔はそう言うとにやりと笑う。

「だいたい君。そんな誰かを不快にならないようにと整えられた作品が、誰にとって好ましい作品になり得るんだい? むしろ本当に良質の作品とは、目を背けていた世間に対して事実を突きつけ、心苦しいと感じさせるものであったり、時代を超えた普遍的な価値があると思わせるものであったり。あるいは創造性にあふれ、独創的かつユーモアのある作品ではないかしら?」

 もっともらしい答えを口にする悪魔。


 そうした作品の中に、見る者に対する配慮を付け足すのがポリティカルコレクトネス(政治的妥当性)というものらしい、と私もなぜかポリティカルコレクトネス推奨派のような返答をしてしまった。


「まったく君という奴は。風見鶏のように世間の風向きに合わせて右を向き、左を向くような連中に辟易しているくせに」

 悪魔はそう言ってまたにやりと──やや邪悪な笑みを浮かべた。


「おれにはわかっていることが一つある。それは、そんなやり方(妥協的な協調主義)で得た『平等』や『秩序』など、うわべだけの取りつくろいにすぎないってことさ。本当の普遍的な価値を獲得したいなら、人は進んで険しい道を歩まなければならない。

 そんな一部の自称『平和主義者』の語る妥協点を探りながらの、あるいは処罰を強制するような、表面上は『みんなで仲良く』なんていう詭弁がまかり通るはずがない」

 ふん、と悪魔は鼻で笑い、次のように毒を吐いた。



「だいたいだね。人の差別的感情を生み出すものの代表作といったら、宗教的教理以上のものがあると言うのかね。──あれこそプロパガンダの最たるものじゃないか!」

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