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悪魔は主体性の二分化を語る

「ところで君は『主体性』というものについて、とう考えているだろうか」

 悪魔は灰色のスーツ姿で現れ、そう言った

 こちらは一人でバスに乗り込んでいたはずだが、いつの間にか悪魔は私のとなりに座っているのだ。



 主体性というのは自立した意識を持ち、自身の知識や力を基準として、独立した存在であることだ。──といったことを説明した。

「なんともまあ君は、ずいぶんと堅苦しく考えているようだな」

 悪魔はややあきれ気味に言うが、私の答えに多少は満足した様子だ。



「主体性というのは良くも悪くも、独自の、固有の意識を自覚的に持っていることに気づいている者であるべきだ。

 私がこんなことを言うのは、どうも人間の中には自分の理念や考えを持たず、他人との共存の中で答え合わせをし、まるで人界にはじめて降り立った熊のように怯えた様子で、人の顔色をうかがっているようなものなのだ」


 そのたとえはいまひとつわかりづらい。私が不平を言うと、悪魔は首を横に振った。


「いや、いまのは確かにいまひとつの喩だった。

 ──と、素直に誤りを認めることをできないような人間が、己のつまらぬ我を通し、感情に任せていわれのないことをわめき散らすのを何度見たか。

 主体性に必要なのは経験と知恵だけではない。謙虚さ、あるいは内省ないせいを介した精神的な成長なのだ」


 つまり悪魔は、世間の広い意見だけを吸収したような人間性を認めず、かといって自分の偏った考えに囚われたような精神性も認めないと言っているのだ。


 それは主体性罠のようなもので、他人に影響されない独自性とは、ある意味では他人の話を聞かないような態度に染まりがちで。

 かといって大勢の意見の集約のような思考では、独自の意識を持ち得ないのだ。



「中でも最悪なのは、自分にはなんでも自らの判断で決定できると思い込んでいる輩だ!

 こいつはいつだって内省をしないし、自分が他人からどう思われているかを、まるで理解しようとはせんのだ。

 自分からは何も生み出せないくせに、自分の価値観ですべてを批評できると思っている、憐れな評論家のようにな!」

小難しい話ですが主観性と客観性はどちらも哲学的な考えの一つの方向性で、要はそれに捕われすぎると過剰になってしまう、みたいなこと。多くの物事はバランスが大事。

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