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プロローグ(悪魔の独白)
本作中の「私」は作者のことではありません。
あくまで登場人物の一人です。
悪魔の二人称がころころ変わったり、ある場面では肯定していたのに、別の場面では否定したり……
そこにはある意味が隠れている──そんな内容。
大人の方だけ読んでほしい。
あらゆる不条理を理解できる大人でないと受け入れられないでしょう。
おまえは犬にボールを投げ与えている。
おまえは犬がボールを追い駆けているのを満足げに見ている。
おまえはやがてボールを手放し、ボールはおまえ自身となってしまう。
おまえは犬にボールを与えた気になっているが。
おまえは投げ放ったボールになったことに気づかない。
犬はおまえを支配して、おまえを玩具に仕立てあげる。
気づけばおまえはただの物。
ぼろが出れば、棄てられる。
野良犬すらもおまえの存在に気づかずに、
おまえの横を過ぎ去って行く。
乾いた地面に打ち棄てられ、
祈ることも、望むものも無く。
死すらもおまえを無視してしまう。
淀みに浮かぶ泡のように。