咲夜姫の生まれ代わりを探せ
菱王が留守にする九州。
不穏な音を立てて、いるのは、鉾。
標高の高い九州の山々が、
不穏な音を響かせ、
小動物が、あちこち逃げ惑っていた。
「時間が、ないかも知れない」
誰もが、菱王の帰りを待っていた。
六芒星の陣を持ち帰らなくては、
鉾の力だけでは、負けてしまう。
災厄の星々が、降り注ぎ、地上は、焼け尽くされる。
「六芒星が無くなったら、仙台は?」
仙台は。
そう聞かれて、菱王は、言葉がなかった。
古代から、守られた仙台。
天から降り立った咲夜姫は、何故、仙台だけを守ろうとしたのか。
何故、災厄が降り注ぐと予知できたのか。
「獣神達と、一番親しい女性が咲夜姫であろう」
菱王達の見解だった。
疑わしき女性が2人いる。
山神と親しい女性。
六芒星の陣は、崩壊が始まっている。
何かが、起きている。
陣を守護している獣神が、逃げ出したのか。
九州に移す事はできるのか。
菱王が、思いあぐねていたいた矢先に、現れたのは、陽葵だった。
「何か、あったの?」
優しく話しかけられて、陽葵は、戸惑った。
「あなたは・・・」
山神と同じ獣神である事は、匂いでわかる。
だけど、
この地の神ではない匂いがした。
「六芒星の結界が緩んでいると聞いて、何か、力になれないかと」
「結界が緩んで・・・。やっぱり、本当なんですか?」
「君は、彼らと仲がいいと思っていたけど」
菱王の笑顔に戸惑う。
「そうなんですけど・・・違うんです」
思い出すと涙が出そうになる。
「やっぱり、私じゃないんだって」
菱王の顔を見ると、言葉が次から、次へと出てきてしまう。
「結局、私は、敵わないんだって」
「誰に?2人いたけど」
「知っているんですか?」
「もちろん。獣神と親しくしている女性は、そんなに、いないからね」
「そうですか。みんな、知っているんですね」
「普通の女性を近寄せないからね」
獣神達は、気まぐれに人間の女性に近づかない。
「六芒星に関係する女性?それとも、君と同じ獣神?」
「いいえ・・私は、獣神ではないわ。ただ・・・長く生きているだけ」
「小動物の妖か?」
「そうなんです」
ますます、小さくなりそうだった。
「2人の事を教えてくれないか?」
「そんなに、何も知らないです。陸鳳と陸羽が桂華を気に入っている以外は」
「気に入っている?」
「桂華・・・」
陽葵の口元が緩んだ。
「あの女が、怪しいです。古城の主。咲夜姫の生まれ変わりかと」
「そうか」
あの時、会っていた女性が咲夜姫だったとは。
菱王は、陽葵の手を取った。
「いろいろ聞かせて」