六芒星を奪い取れ
何とも、不穏な地震が続いていた。
元々、その地には、遠い伝説があった。
日本書紀にも残る最初の地。
地面には、楔と言うよりは、鉾が、突き刺さり、
紅い霧に覆われた地。
遠い昔に幻の大陸があったとの伝説の地に、
人知れず、打ち込まれた鉾があった。
その鉾を中心に、
不穏な音が、響き渡っている。
地震なのか。
どーん。どーん。
と言う音が響きわたり、
太古からの獣神達を震え上がらせていた。
「あれは・・・」
「あの音は・・」
海から、あの生き物が上がってくる。
空から、星が落ちてくる。
様々な噂が流れ、知恵あるものは、南の地から逃げていった。
「鉾が抜けかかっている」
この南の地を守る鉾。
災厄が降ってくるとの噂は、もちろん、菱王の耳にも入っていた。
六芒星が、街を守る陣だとしたら、
鉾も同じ役目を果たしていた。
北と南の陣。
それぞれが、来るべき災厄の日に備えていた。
が。
両者とも、役目を果たす事なく、壊れかかっていた。
どちらを取るのか。
鉾を守る為、六芒星の陣を移したい。
そう考えた。
だが、その六芒星を守っていた獣神が、逃げ出している。
それが、崩壊に向かっている原因の一つだ。
探すべく、菱王は、仙台に向かったが、
そこで、見たのは、二人の女性だった。
桂華と希空。
どちらかが、
古城の主だと気付いた。
「山神の兄弟が守っている桂華が、そうかも知れません」
菱王は、そう報告していた。
桂華を囮に、山神に逃げ出した獣神を捕まえさせればいい。
菱王は、陸鳳を利用しようとしたが、
思わぬ創宇が現れ、思うようにいかなかった。
「二人のうち、どちらだ」
山神兄弟が、守る桂華も、気になるが、冥府の皇子、リファルが、一目、置いている希空の存在も気になっていた。
どちらか。
桂華に再度、逢って、確かめたいと思った時、
逃げ出した陽葵と出くわした。
「どうしたんですか」
頬を濡らして飛び出した陽葵は、突然、声をかけられて当惑した。
菱王は、創宇に負けずと劣らず、女性のような美しい男の姿をしていた。