冥府の呼び人
創宇は、桂華に触れたかった。
長い月日が二人を変えていた。
自分が、覚えているあの人は、
もう別の人かもしれない。
自分が、思っていたのは、
「咲夜姫」
目の前にいるのは、全く、別の人かもしれない。
「話は、だいたい、わかったが」
陸鳳は、咳払いをした。
と言うのは、
「全く、酷い目にあった」
ぶつぶつ、文句を言いながら、陸羽が、現れたからだ。
「なんだぁ?」
異様な雰囲気に声をあげる。
それもそうだ。
陸鳳、創宇が、桂華を挟んで立っている。
自分の知らない間に、何が起きたのか。
「お前!変な仕掛けしやがって」
創宇に向かって掴み掛かる所だ。
「待て!」
陸鳳が、陸羽を制する間もなく、空間が光った。
「嘘?」
陸羽が、掴み掛かろうとした瞬間、現れたのは、リファルだった。
「えぇ?」
中に現れたリファルと目が合った瞬間、更に上から、エルタカーゼが現れた。
「なんで?」
陸鳳と陸羽が、顔を合わせる間もなく、更に中から一人の女性が飛び出してきた。
「希空?」
桂華が声を上げた。
「桂華?」
飛びつくように、地に降り立つ。
「どうして?一体?」
「こっちが聞きたいよ」
エルタカーゼに押し潰されながら、リファルが叫んだ。
「とんでもない、仕掛けを作ったな」
イライラして飛び上がる。
「試したろ!」
「試すなんて、そんな」
創宇は、笑った。
「気付いたんですねぇ・・・夢だって」
「音だよ!」
リファルは叫んだ。
「古城の中の音がする。別の世界に行ったなら、音は聞こえない。体は、この中にあるって、気付いた」
「さすがです。獣神みたいですな」
「一緒にするなよ。さっさと、彼女を連れて、故郷に帰る」
「帰らなくても、大丈夫です。向こうから来てくれますよ」
「向こうから?バカ言うなよ」
「知らないんですか?やがて、あなたの故郷が元の位置に戻るって」
「元の位置に戻るって」
希空が、桂華に耳打ちした。
「なんか、どう言う事になっているの?」
「災厄が訪れるというの。六芒星を元に戻さないと大きな被害があるって」
「その災厄が、あのおぼっちゃまと関係あるの?」
聞こえたのか、創宇が振り向いた。
「あるさ・・・元は、同じ国だからな」
「待て待て、我らの故郷と災厄とは、なんだ?」
「知らないとは言わせない」
創宇は、リファルを睨んだ。
「お前は、咲夜姫を知っているだろう」
「え?」
リファルは、目を丸くした。
確かに、見た記憶があるのだ。
「知らない訳がない」
創宇は、リファルの眼前に剣先を向けた。
「お前が災厄の根源だから」