古城という名の墓の守人
「結局・・・」
陽葵の目から涙が溢れていった。
炎の中、命懸けで助けてくれた陸鳳に恩を感じていた。
恩は、次第に愛情に。
陸鳳の穏やかさが好きだった。
時折、見せる子供っぽい所も。
でも。
それは誰にでもであって。
自分だけが、特別ではない。
そこにいる、
桂華が、
この六芒星のヒロインなら、
勝ち目は、ない。
創宇も全て、
桂華を見ている。
咲夜姫。
古代の彼女が、
この地の主人。
たかが、兎の獣神が、
敵う相手ではない。
創宇と陸鳳が、桂華に気を取られている内に、
陽葵は、気付かれないように、
そっとその場を離れた。
陸鳳が、気がついて追いかけてくれるかと思ったが、
ふと、
自分を横目で、追いかけただけだった。
誰も、自分を振り向く事なんてない。
「そだよね」
山神に届かなかった思い。
あの日の思い出は、遠い。
「何か、わかりましたか」
災厄の日は、近いのか。
古城の中に居る獣神やリファル達、異性界に閉じ込められた者達も、
身体に異常を感じていた。
特に、耳鳴り。
希空も、
空気が揺れるのを感じていた。
「ここが古城の中で、ある事に変わりはない」
「わかるんですか」
「今までは、わからなかったけど」
リファルは、耳をそっと澄ます。
エルタカーゼも、真似てみるが、さっぱり、わからない。
「空気の振動なんだけど」
目を閉じると、
この空間が、あの古城と変わらない事に気が付く。
「よく言うだろう・・」
エルタカーゼの背中を叩く。
「視覚からの情報に惑わされるなよ」
「だって・・・私達、術も使えない」
「そりゃ、そうだ」
希空は、逞しく、夕食の準備に取り掛かろうとしている。
「我らは、術に頼ろうとばかりしていたからな」
「???」
「使える訳がない。夢の中ではな」
「夢?ですか?」
「古城の管理をしている・・・そう。あいつだ」
「誰です?」
「創宇・・・この古城と言う名の墓の墓守だよ」
その瞬間、光が弾けた。